第46回分子生物学会バイオテクノロジセミナー
NanoBiTの応用で明らかとなった「筋肉が骨になる難病FOP」の発症機序
演者:片桐岳信 先生 (埼玉医科大学 医学部 ゲノム基礎医学)
- 日 時:
- 12月6日(水)12:25-13:15
- 場 所:
- 第15会場(神戸国際展示場 2号館 2階 2A会議室)
アブストラクト:
私達の身体は、硬い骨が支えています。一方で、我々が自由に身体を動かすことができるのは、骨同士が関節で連結されているためです。
ヒトの遺伝性疾患で「筋肉が骨になる」と表現される難病として、進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva; FOP)と呼ばれる疾患が知られています。FOPの患者さんは、出生時から徐々に筋肉に余分な骨が形成され、関節も癒合してしまうために、成長に伴い身体を動かすことが困難になる病気です。
2006年、難病FOPの責任分子としてALK2と呼ばれるタンパク質が同定されました。ALK2は、骨誘導因子BMPを含むTGF-βファミリーの成長因子をリガンドとする膜貫通型キナーゼ受容体です。2015年に、FOP症例の変異したALK2受容体は、骨形成誘導活性のないActivin Aをリガンドとして結合して病的な骨形成を起こすことが報告されました。
最近我々は、Promega社のNanoBiTを応用することで、難病FOPを始めとするALK2の遺伝的変異が関与する疾患の発症機序を明らかにすることができました。本セミナーでは、我々の試行錯誤の過程を交えて、NanoBiTの利用例をお話しさせていただきます。