プロメガ製品 Q & A 【 逆転写酵素 】

cDNA合成において、逆転写酵素が持つRNase H活性はテンプレートとなるRNAからの完全長cDNA合成を妨げる場合があります。RNase H活性(-)の逆転写酵素(例えばM-MLVの組換え体など)の使用は、合成される完全長cDNAの比率を上げるため、完全長のcDNAライブラリーの作製に推奨されています。

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Q.逆転写酵素は一般的にどのようなアプリケーションに用いられますか。
Q.もっとも一般的に使われるRTは何ですか。
Q.逆転写酵素はどのような酵素活性を持つのですか。
Q.RNase H活性とはどのようなものですか。
Q.どのようにしたら逆転写酵素からRNase H活性を除去できるのですか。
Q.プロメガからはどのようなタイプのRNase H (-) RTs が入手できますか。
Q.M-MLV RT, RNase H (-)欠失変異型(deletion mutant)と点変異型(point mutant)の機能的な違いは何ですか。
Q.SuperScriptTMシリーズの酵素を現在使っている場合はどうですか。
Q.RNase H(-) の逆転写酵素を使うことは、どのアプリケーションでもっとも有効ですか。
Q.
RNase H ( - )の逆転写酵素を使うとどんな利点がありますか?

 逆転写酵素

 M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minu

Q.逆転写酵素は一般的にどのようなアプリケーションに用いられますか。

逆転写酵素(RT)は、RNAテンプレートから相補的なDNA(cDNA)合成を触媒するDNAポリメラーゼの一種です(1-3)。RNAからcDNAコピーを作製する逆転写酵素の活性は、cDNAライブラリーの構築、RT-PCR(a)、プライマー・エクステンション、RNAシークエンシングなど様々な分子生物学のアプリケーションで利用されています。(PN75-Q&A)

参照文献:

  1. Eun, H.-M. (1996) Enzymology Primer for Recombinant DNA Technology, Academic Press, San Diego, CA, 427,

  2. Gerard, G.F. and D'Alessio, J. (1993) In: Methods in Molecular Biology, Vol. 16: Enzymes of Molecular Biology, Burrell, M.M., ed., Humana Press, Totowa, NJ, 73. 

  3. Enzyme Resource Guide, Vol. I : Polymerases BR075A, Promega Corporation.

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Q.もっとも一般的に使われるRTは何ですか。

もっとも一般的に使われる逆転写酵素は、Avian Myeloblastosis Virusから精製されたレトロウイルス酵素AMV RT (カタログ番号 M5101)(1,2)と、Moloney Murine Leukemia Virus RT の組換え体クローンを発現する大腸菌から精製されたM-MLV RT(3,4)です。(PN75-Q&A)

参照文献:

  1. Kacian, D,L. (1977) Meth. Virol. 6, 143.

  2. Houts, G.E. et al. (1979) J. Virol. 29, 517.

  3. Roth, M.J., Tanese, N. and Goff, S.P. (1985) J. Biol, Chem. 260, 9326.

  4. Verma, I.M. (1974) In: The Enzymes, Boyer, P.D., ed., Academic Press, NY, 87.

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Q.逆転写酵素はどのような酵素活性を持つのですか。

AMV RTとM-MLV RTは、両方とも2つの主要な活性を持ちます。ひとつはRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、もうひとつはRNase H活性です。DNAポリメラーゼ活性は、cDNA合成を必要とする全てのアプリケーションで必要です。それに対し、RNase H活性は完全長cDNAを合成するこの酵素の活性として望ましくなく、むしろ妨げとなります。逆転写酵素は、DNAテンプレートとRNA:DNAハイブリッドにおいてDNA依存性DNAポリメラーゼ活性も持つことに注意してください。しかし、この活性は大きくなく、一般的に分子生物学のアプリケーションで活用されることはありません。(PN75-Q&A)

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Q.RNase H活性とはどのようなものですか。

RNase H活性は、cDNA合成にもっとも適した逆転写酵素を選ぶ際に重要な問題となります。大腸菌のRNase H活性のように逆転写酵素のRNase活性はRNA:DNAハイブリッドのRNA鎖を分解します。cDNAが合成されると、逆転写酵素のRNase H活性の基質となるRNA:DNAハイブリッドが形成されます。cDNA合成におけるRNase H活性の影響は2つあります。転写産物の全収量と完全長cDNAのパーセントが低下するということです。逆転写反応は、RNAテンプレート中の特異的な配列にハイブリダイズしたDNAプライマー、多くの場合poly(A)+ tailから開始されます。プライマーとRNAのハイブリッドは重合のプライムサイト(開始点)として働くのみならず、逆転写酵素のRNase H活性の基質にもなります。合成されるcDNAの収量は、逆転写酵素が重合を開始する前にRNA:DNAハイブリッドを分解するRNase H活性がどのくらいあるかにも影響されます。アプリケーションによってはcDNA合成を検出するためにRNAの最少量を増加させる必要が生じます。さらに、この酵素のRNase H活性により、DNA重合が起こっているサイトの近くのRNA鎖が切断されることもあります。切断が起こるとRNA分子のコピーされていない部位が逆転写複合体から解離し、cDNA合成は停止します。RNA分子が長ければ長いほどこのような現象は起こりやすくなります。その結果、お使いになる逆転写酵素にRNase H活性がある場合、長鎖RNA分子(>5kb)は完全にはcDNAにコピーされにくくなります。(PN75-Q&A)

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Q.どのようにしたら逆転写酵素からRNase H活性を除去できるのですか。

逆転写酵素のDNAポリメラーゼ活性は、付随するRNase H活性には依存しません。すなわち、cDNA合成におけるRNase H活性の悪影響はRNase H活性を持たない逆転写酵素を作製するすることで除去できます。これは、そのタンパク質のRNase H活性領域に変異を導入することによって達成されます。これらの逆転写酵素はRNase H (-)と呼ばれます。RNase H活性の除去により、プライマーとRNAのハイブリッドが分解されないため、逆転写反応がより効率的に開始されるようになります。また、前述のように合成の早期終結が起こりにくいため、完全長cDNAの合成もより効率が上がります。(PN75-Q&A)

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Q.プロメガからはどのようなタイプのRNase H (-) RTs が入手できますか。

プロメガでは2種類のRNase H(-)の逆転写酵素を提供しております。M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Deletion Mutant(カタログ番号M5301)とM-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Point Mutant(カタログ番号 M3682)です。点変異型は、この酵素のRNase H活性領域に点変異を導入することでRNase H(-)にされました。この酵素は機能的にSuperScriptェ II と同等です。欠失変異型は点変異型と機能的に類似していますが、RNase H活性は欠失変異によって除去されています。M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minusは、機能的にSuperScriptェと同等です。(PN75-Q&A)

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Q.M-MLV RT, RNase H (-)欠失変異型(deletion mutant)と点変異型(point mutant)の機能的な違いは何ですか。

ほとんどのアプリケーションでは、M-MLV RTのどちらのRNase H(-)型もお使いいただけます。プロメガでは、点変異型のほうが欠失変異型よりも高温での安定性があることを確認しました。また、1.2kbの鋳型を用いたcDNA合成反応において、M-MLV RT, RNase H Minus, Point Mutantを使った場合55℃まで完全長のcDNAが合成されるのを観察しました。同じ鋳型でM-MLV RT, RNase H Minus, Deletion Mutantを使った場合、50℃まで完全長cDNAが合成されました。これらの酵素を高温で使う場合の詳しい情報については、プロメガテクニカルサービスにお問い合わせください(prometec@jp.promega.com)。(PN75-Q&A)

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Q.SuperScriptシリーズの酵素を現在使っている場合はどうですか。

SuperScriptェ IIには、M-MLV RT, RNase H Minus, Point Mutant (カタログ番号 M3682)を代替使用することをお薦めします。SuperScriptェには、M-MLV RT, RNase H Minus (カタログ番号 M5301)を代替品としてお使いください。これらの酵素は、お客様のアプリケーションでSuperScriptェまたはSuperScriptェ IIに替えてそれぞれ同ユニットでお使いいただくことができます。(PN75-Q&A)

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Q.RNase H(-) の逆転写酵素を使うことは、どのアプリケーションでもっとも有効ですか。

RNase H(-)の逆転写酵素は、cDNAライブラリー作製において選択すべき酵素です。この酵素により長いテンプレートから完全長のcDNAを合成できるということは、より正確なRNAの相対的な存在量(転写産物の長・短によらず)をライブラリーに反映できるということです。しかしながら、RNase H(-)の逆転写酵素を使用する一番の利点が長鎖cDNAを合成することであるため、通常では短いDNAが必要とされるRT-PCRや、プライマー・エクステンションの結果改善には結びつかないかもしれません。長鎖cDNA (>5kb)が必要とされるアプリケーションには、RNase H(-)の逆転写酵素をお使いいただくことを推奨します。逆転写酵素の完全長cDNAを合成する能力は, RNAの長さのほかに、テンプレート中で複雑な二次構造をとる領域も影響します。反応温度を上げてcDNA合成反応を実施することで、問題となる二次構造を持つ領域をリラックスさせ、合成反応を向上させることができます。RNAテンプレート中の二次構造が完全長cDNAの合成を阻んでいる可能性がある場合や、cDNA合成反応を温度を上げて行ないたい場合、M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Point Mutantを使用することをお薦めします。いずれの酵素も高温でご使用になれます。(PN75-Q&A)

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Q.RNase H ( - )の逆転写酵素を使うとどんな利点がありますか?

 M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minusは完全長cDNAライブラリーの構築に最適の酵素です。

 プロメガではRNase H Minus逆転写酵素として、欠失変異型(カタログ番号M5301)と点変異型(カタログ番号M3682)の二種類を用意しています。

 逆転写酵素[Reverse Transcriptase(RT)]は、RNAを鋳型にして相補的なDNA[complementary DNA(cDNA)]の合成を触媒するDNAポリメラーゼの一つです(1-3)RNAに相補的なcDNAを合成する逆転写酵素の能力は、cDNAライブラリーの構築をはじめ、RT-PCR(a)やプライマー伸長法、RNAシークエンシング等、幅広いアプリケーションで使われています。

 最も一般的に使われている逆転写酵素には、鳥類の骨髄腫瘍ウイルスから精製されるAMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素(4,5)と、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来の組替え酵素を生産する、大腸菌株から精製される逆転写酵素(6,7)2種類があります。両酵素は2つの主要な活性、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性とRNase H活性を有しています。DNAポリメラーゼ活性はcDNA合成が必要な全てのアプリケーションにおいて必須の活性です。しかしながらRNase H活性は、完全長のcDNAの生成に干渉し、望ましい活性とは言えません。

 RNase H活性は、cDNA合成に最も適した逆転写酵素を選択する際に、重要な考慮事項となります。逆転写酵素のRNase H活性は大腸菌が有するRNase Hと同様に、RNA:DNAハイブリッド鎖のRNA鎖を分解します。いったんcDNAが合成されると、そのRNA:DNAハイブリッド鎖は逆転写酵素のRNase H活性の基質となります。cDNA合成におけるRNase H活性は、cDNA全体の合成量と完全長cDNAの割合を低下させるといった、二重の影響を与えます。逆転写は鋳型RNAの特異的な配列(poly(A)テール等)にハイブリダイズした、DNAプライマーから開始されます。プライマー:RNA ハイブリッドは重合反応の開始点としてだけでなく、RNase H活性の基質としても働きます。合成されたcDNAの収量はRNA:DNAハイブリッドがRNase H活性によってどれだけ分解されるかということに反比例します。いくつかのアプリケーションでは、cDNA合成を検出するのに必要なRNAの最小量が割増してしまいます。さらに、RNase H活性はDNAの重合が起こっている付近のRNA鎖を分解します。これにより、RNAのコピーされていない部分が転写複合体から乖離し、cDNA合成はそこで終結してしまいます。RNA分子が長くなればなるほど、こうした現象が生じやすくなります。RNase H活性の存在下において、長いRNA分子(5kb以上)は完全長のcDNAを生じにくくなります。
 逆転写酵素の
DNAポリメラーゼ活性は付随するRNase H活性に依存しません。このようにRNase H活性はcDNA合成にとって有害ですが、RNase H活性を除去した逆転写酵素を用いることによって問題を解消することができます。活性の除去はタンパク質のRNase H領域に変異を導入することで達成されます。このような逆転写酵素はRNase H Minusと呼ばれます。RNase活性の除去により、primer:RNAハイブリッドが分解されにくくなるので、逆転写の開始反応が効率良く行われるようになります。さらに、重合反応が起きている付近で鋳型が分解され、反応が終結してしまう傾向もなくなり、完全長cDNAの合成がより効率的になります。高い割合で完全長のcDNAが必要なcDNAライブラリー合成などのアプリケーションでは、RNase H Minus逆転写酵素を推奨します。

 2種類のRNase H Minus逆転写酵素がプロメガから入手可能です。両酵素はM-MLV逆転写酵素の組み換え体です。M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Point Mutant(カタログ番号M3682)は、RNase H領域に点変異を導入することでRNase H Minusにしました。本製品は、RNase H minus reverse transcriptase, SuperScript? IIとして良く知られている酵素と機能的に同等の製品です。さらに、プロメガではM-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus(カタログ番号M5301)という製品も提供しています。本製品はRNase H領域を欠失させて酵素活性を除いていて、機能的にM-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Point Mutantと類似する製品です。M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minusは一般的に知られるRNase H minus reverse transcriptase, SuperScript? IIと機能的に同等です。

 

参照文献

  1. Eun, H.-M. (1996) Enzymology Primer for Recombinant DNA Technology, Academic Press, San Diego, California, 427.

  2. Gerard, G.F. and D’Alessio, J. (1993) In: Methods in Molecular Biology, Vol. 16: Enzymes of Molecular Biology, Burrell, M.M., ed., Humana Press, Totowa, New Jersey, 73.

  3. Enzyme Resource Guide, Vol. 1: Polymerases BR075A, Promega Corporation.

  4. Kacian, D.L. (1977) Meth. Virol. 6, 143.

  5. Houts, G.E. et al. (1979) Reverse transcriptase from avian myeloblastosis virus. J. Virol. 29, 517.

  6. Roth, M.J., Tanese, N. and Goff, S.P. (1985) Purification and characterization of murine retroviral reverse transcriptase expressed in Escherichia coli. J. Biol. Chem. 260, 9326.

  7. Verma, I.M. (1974) In: The Enzymes, Boyer, P.D., ed., Academic Press, New York, 87.

 

(a)The PCR process is covered by patents issued and applicable in certain countries. Promega does not encourage or support the unauthorized or unlicensed use of the PCR process.

 

SuperScript is a trademark of Life Technologies, Inc.

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