プロメガ製品 Q & A 【 in vitro転写/翻訳 】

[ メニュー ]

In vitro 翻訳(Rabbit Reticulocyte Lysate, Wheat Germ Extract)

Q. 真核生物の無細胞翻訳システムとして、Rabbit Reticulocyte Lysate(RRL)とWheat Germ Extract(WGE)があるようですが、どちらを選択すればよいですか?

Q. 鋳型のRNAはどのように調製すればよいでしょうか?

Q. RRLやWGEの鋳型として使用するRNAには、キャップ構造は必要ですか?

Q. WGE用にプロモーターを介した転写反応によりRNAを調製するvectorはありますか?

Q. Luciferase Control RNAの配列または分子量を教えてください。

Q. Non-RIで翻訳反応し、タンパク質を標識するためにはどのようにすればよいですか?

FluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System

Q. FluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System (以下、FluoroTect™) とは、どのような製品ですか?

Q. FluoroTect™では、なぜアミノ酸のリジンのtRNAに蛍光標識をしているのですか?

Q. FluoroTect™を用いて翻訳反応を行った場合、どのようにして翻訳後のタンパク質を検出することができますか?

Q. FluoroTect™で検出できる蛍光ゲルスキャナーにはどのような装置がありますか?

Q. FluoroTect™を蛍光ゲルスキャナーで検出したときに、バックグランドは認められますか?

Q. FluoroTect™は、どれくらいの割合で翻訳後のタンパク質に取り込まれますか?

Q. FluoroTect™を用いて標識化したタンパク質をウエスタンブロットや免疫沈降などに使用できますか?

Q. 大腸菌の無細胞タンパク質発現系(E. Coli S30 Extract)にFluoroTect™を用いることはできますか?

Transcend™ Non-Radioactive Translation Detection Systems

Q. Transcend™ Non-Radioactive Translation Detection Systems (以下、Transcend™) とは、どのような製品ですか?

Q. Transcend™は、どれくらいの割合で翻訳後のタンパク質に取り込まれますか?

Q. 大腸菌の無細胞タンパク質発現系(E. Coli S30 Extract)にTranscend™を用いることはできますか?

In vitro翻訳後修飾(Canine Pancreatic Microsomal Membranes)

Q. どのような場合にCanine Pancreatic Microsomal Membranesを使用しますか?

[ 解 答 ]

In vitro 翻訳(Rabbit Reticulocyte Lysate, Wheat Germ Extract)

Q. 真核生物の無細胞翻訳システムとして、Rabbit Reticulocyte Lysate(RRL)とWheat Germ Extract(WGE)があるようですが、どちらを選択すればよいですか?

A. RRLとWGEのどちらを選択するかは、実験の用途、合成したいタンパク質の由来、期待するタンパク質収量、特徴などから決定してください(表1~表3)。

表1 in vitro 翻訳システムの鋳型の由来による選択ガイド

表2 アプリケーションによるin vitro タンパク質翻訳システム選択ガイド

表3 RRLとWGEの特徴

製品名 ライ
セート
カタログ
番号
1反応あたりの
タンパク質量*)
ヌクレ
アーゼ
処理
備考
Rabbit Reticulocyte Lysate Systems, Nuclease Treated RRL L4960 50~200ng 翻訳反応に必要な塩濃度がすでに最適化されています。
Flexi Rabbit Reticulocyte Lysate System RRL L4540 50~200ng マグネシウム濃度を変えることにより、サンプルごとの翻訳反応を最適化できます。
Wheat Germ Extract WGE L4380 30~150ng ヌクレアーゼで処理しているため、内在性mRNAのバックグランドが低くなります。

*:1回の反応量を50µLとして算出しています。

<参考>
RRLは、ニュージーランド白ウサギの網状赤血球を溶解したあとに不必要な細胞成分を除去することで、最終抽出液が翻訳特性を持つようなっています。RRLには、ヌクレアーゼ処理とヌクレアーゼ未処理の2種類があります。ヌクレアーゼで処理したRRLは、内在性mRNAをmicrococcal nucleaseで処理しているため、非特異的な翻訳反応(バックグランド)少なくなります。

ヌクレアーゼ未処理のRabbit Reticulocyte Lysate System, Nuclease Untreated(L4151)は、micrococcal nucleaseで処理していないため、内在性のグロビンmRNAなどが豊富に含まれています。したがって、この内在性mRNAが競合的に働くため、タンパク質の翻訳量からmRNAを定量する用途には使用できません。また、エネルギー生成システムを加えていないため、翻訳反応に適しません。タンパク質合成に必要な細胞性成分の単離に用います。

WGEは小麦胚芽を粉砕し、遠心後の細胞残渣を除去した上清液をbufferで懸濁させています。WGEも内在性mRNAをmicrococcal nucleaseで処理しています。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. 鋳型のRNAはどのように調製すればよいでしょうか?

A. 鋳型のRNAは、RiboMax™ System(P1280、 P1300)などのin vitro転写反応により調製してください。転写後の反応溶液はDNase Iで処理後、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールで抽出し、転写反応で取り込まれなかったヌクレオチドをMicrospin G-25 column(Amaesham Bioscience)などを使って除去してください。詳細なプロトコルはRiboMax™ System(TB298、TB166)をご参照ください。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. RRLやWGEの鋳型として使用するRNAには、キャップ構造は必要ですか?

A. RRLやWGEで翻訳反応を行う場合、効率的な翻訳のためにほとんどの転写産物でキャップ構造を必要としません(1-3)。キャップしていないRNAでも翻訳反応に加える量を増やすことでタンパク質合成量はキャップしたRNAと同等になります(4)。

RRLとWGEの翻訳キットでは、キャップが付加された転写産物の翻訳効率が上がることがあります(2,3,5)。例えば、dihydrofolate reductaseのmRNAの翻訳をRRLで行った場合、キャップしたRNAがキャップしていないRNAの4~8倍のタンパク質を発現することをRestoらは報告しています(6)。

参考文献:

  1. Dasso, M.C. and Jackson, J. J. (1989) Nucl. Acids Res. 17, 3129.
  2. Rabbit Reticulocyte Lysate Systems Technical Manual #TM232, Promega Corporation.
  3. Wheat Germ Extract Technical Manual #TM230, Promega Corporation.
  4. Gurevich, V.V. et. al. (1991) Anal. Biochem, 195, 207.
  5. RiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems - SP6, T3, T7 Technical Bulletin #TB166, Promega Corporation
  6. Resto, E. et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20, 5979

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. WGE用にプロモーターを介した転写反応によりRNAを調製するvectorはありますか?

A. T7プロモーターまたはSP6プロモーターを介して転写反応によりRNAを調製することができます。Flexi® Vector シリーズのうち、pF3A WG(BYDV) Flexi® VectorとpF3K WG(BYDV) Flexi® Vectorが使用できます。これらのFlexi® Vectorは、オオムギ縞萎縮ウイルス(Barley Yellow Dwarf Virus: BYDV) の配列が存在し、WGEで翻訳反応を行うときに5’および3’の翻訳を増強させる働きがあります。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. Luciferase Control RNAの配列または分子量を教えてください。

A. プロメガでは、Luciferase Control RNAの配列情報は社外秘となっております。また、分子量の計測は実施しておりません。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. Non-RIで翻訳反応し、タンパク質を標識するためにはどのようにすればよいですか?

A. プロメガでは、FluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System (L5001)またはTranscend™ Non-Radioactive Translation Detection Systems(L5070など)を用いて蛍光標識またはビオチン標識することができます。Non-RIで翻訳反応を行うときは、翻訳反応系にコンプリートのアミノ酸ミックスを添加してください。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

FluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System

Q. FluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System (以下、FluoroTect™) とは、どのような製品ですか?

A. FluoroTect™ は、タンパク質の蛍光標識システムです。FluoroTect™は、リジンのtRNAに蛍光標識(BODIPY-FL)を修飾しています (図1)。翻訳反応のときにアミノ酸のリジンの代わりに、FluoroTect™がとりこまれると、翻訳反応後のタンパク質に蛍光物質が標識されます。そのため、タンパク質発現は、SDS-PAGE後のゲルを蛍光イメージャーで解析できます。FluoroTect™は、TNT® Systemの RRLとWGEのいずれにも使用することができます。

図1 FluoroTect™の模式図 (左)およびライセートサンプルを使ってLuciferaseの翻訳反応を実施したあとのSDS-PAGEのゲルイメージ画像、反応溶液5uLに対し、RNase ONE™ Ribonucleaseで37℃、5分間処理したあと、10倍希釈したサンプルをアプライした。ゲルはHitachi FMBIO® IIにセットし、505nmで測定した。(右)

 

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™では、なぜアミノ酸のリジンのtRNAに蛍光標識をしているのですか?

A. リジンは翻訳反応に用いられる最も頻度の高いアミノ酸です。FluoroTect™には、翻訳反応時に蛍光標識を取り込ませるため、頻度の高いリジンのtRNAに標識をしています。頻度は、メチオニンが全アミノ酸の1.7%に対して、リジンは6.6%です(7)。

参考文献:

  1. Dayhoff, M.O. (1978) Atlas of Protein Sequence and Structure, Suppl. 2, National Biomedical Research Foundation, Washington.

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™を用いて翻訳反応を行った場合、どのようにして翻訳後のタンパク質を検出することができますか?

A. 翻訳反応後の溶液をSDS-PAGEにアプライし、ゲルを蛍光ゲルスキャナーで確認してください。必ず、バックグランドとして鋳型RNAを含まないサンプルも同じゲルの別レーンにアプライしてください。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™で検出できる蛍光ゲルスキャナーにはどのような装置がありますか?

A. 励起波長502nm、検出波長510nmで測定できる蛍光測定装置をご使用ください。FluoroTect™で検出できる蛍光ゲルスキャナーの例を表4にまとめました。

表4  FluoroTect™が検出できる蛍光ゲルスキャナー(例)

製品名 会社名 励起波長
(nm)
検出波長
(nm)
備考
FluorImager® SI Amersham Bioscience 488 520 または
no filter
製造
中止
FluorImager®  595 Amersham Bioscience 488 520 または
no filter
製造
中止
Typhoon™ 8600 Amersham Bioscience 532 526SP または
no filter
 
FMBIO® II Hitachi 532 505  
Molecular Imager FX BIO-RAD 488 515  
LAS 1000 plus FUJIFILM 470 515 filter  
LAS 3000 FUJIFILM 460 515  
FLA 5100 FUJIFILM 473, 532 LPB(510)  
FLA 3000G FUJIFILM 473, 532 520  
FLA 8000 FUJIFILM 532 570  

 

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™を蛍光ゲルスキャナーで検出したときに、バックグランドは認められますか?

A. ライセートとしてRRLを選択した場合に30kDa付近に内在性の蛍光タンパク質が認められます。また、18kDaにFluoroTect™ リジンtRNA由来のバックグランドが認められます。これらのバックグランドは、翻訳反応後の溶液をRNase ONE™Ribonuclease (M4261)で処理することにより除去できます。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™は、どれくらいの割合で翻訳後のタンパク質に取り込まれますか?

A. FluoroTect™でのデータはありませんが、同じ原理のTranscend™での比較試験データがありますので、ご参照ください。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. FluoroTect™を用いて標識化したタンパク質をウエスタンブロットや免疫沈降などに使用できますか?

A. 使用できます。Anti-BODOPY-FL抗体はInvitrogen社(Molecular Probes社製:A-5770)から販売されています。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. 大腸菌の無細胞タンパク質発現系(E. Coli S30 Extract)にFluoroTect™を用いることはできますか?

A. E. coli S30 Extract SystemでTranscend™を用いた使用例はあります。同じ原理のFluoroTect™ でも応用できると考えられます。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Transcend™ Non-Radioactive Translation Detection Systems

Q. Transcend™ Non-Radioactive Translation Detection Systems (以下、Transcend™) とは、どのような製品ですか?

A. Transcend™は、リジンのtRNAにスペーサーを介してビオチンを修飾しています (図2) 。翻訳反応のときにアミノ酸のリジンの代わりに、Transcend™がとりこまれると、翻訳反応後のタンパク質にビオチンが標識されます。タンパク質発現は、SDS-PAGE後のゲルにStreptavidin-Alkaline Phosphatase(SA-AP) を結合させることにより発色で確認することができます。あるいはStreptavidin-Horseradish Peroxidase(SA-HRP)を結合させることにより、化学発光により確認することもできます。SDS-PAGE後のゲルを用いて3~4時間以内にタンパク質の発現を検出することができます。

図2 Transcend™の模式図

 

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. Transcend™は、どれくらいの割合で翻訳後のタンパク質に取り込まれますか?

A. プロメガではルシフェラーゼ、クロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼのタンパク質を合成し、コントロール反応と比較したデータがあります(Transcend™の製品プロトコル)。

Transcend™(またはFluoroTect™)は、リジンのtRNAに修飾しているため、立体障害などにより途中で翻訳反応が停止する場合もあります。しかし、複数あるうちのリジンが1つでも取り込まれると、翻訳反応後のタンパク質にビオチンが標識化されたことになります。

<参考>
プロメガでは、Transcend™の翻訳反応に関し以下のことがわかっています。

  • 大部分のタンパク質は翻訳反応のときに、1つめのリジンはTranscend™によりビオチン化されます。
  • TNT Reactionあたり、翻訳開始が2~5回ほど生じます。
  • 標識化タンパク質の割合を多くするためには、反応時間を短くし、リジンマイナスのアミノ酸ミックスを少なくしてください。ただし、合成されるタンパク質量は少なくなります。
  • 極めて限定された系を用いた場合、TNTの反応系で25~33%のビオチオン化タンパク質が合成されます。任意のサンプルに対しては、リジンの存在する数だけ0.66~0.75で乗じると標識タンパク質の割合を求めることができます。あるタンパク質に存在するリジンの数が6つの場合、理論上8%~17%((0.66)6~(0.75)6)の未標識タンパク質が含まれることになります。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

Q. 大腸菌の無細胞タンパク質発現系(E. Coli S30 Extract)にTranscend™を用いることはできますか?

A. E. Coli S30 ExtractとTranscend™を組み合わせて使用することは可能です。S30 SystemとTranscend™を使った合成した反応溶液5µLにアセトン20µLを添加し15分間遠心して沈殿させています。そのあとで、20µLのLoading Bufferに懸濁しSDS-PAGEを実施しています。反応溶液を直接添加する場合は、反応5~8µLを使用してください(SDS-PAGEにアプライする量は10µLです)。

Transcend™の製品プロトコルpg.7脚注(NOTE)に記載がありますが、大腸菌の翻訳系を用いる場合は、アミノ酸のリジンマイナスを使用すると効果的です。

また、以下のことに注意してください。

  1. PVDFメンブレンに転写後のBlockingは、0.5%Tween/TBSで1~2時間実施してください。
  2. SDS-PAGEゲルにアプライする際は、1µLの反応溶液を使用してください。(これ以上添加しても高い効果は得られません。)
  3. 50µLのE. Coli S30反応溶液に対し、最大で2~3µLのTranscend™を使用してください。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム

In vitro翻訳後修飾(Canine Pancreatic Microsomal Membranes)

Q. どのような場合にCanine Pancreatic Microsomal Membranesを使用しますか?

A. イヌのミクロソームメンブレン(Canine Pancreatic Microsomal Membranes、以下CMM)は、翻訳時あるいはタンパク質翻訳後修飾の初期過程として、シグナルペプチドの切断反応やN結合型糖鎖付加などを調べるときに用いることができます(表5)。詳細は、In Vitro Protein Expression Guide Chapter 8を参照してください。

表5 CMMとRRLおよびWGEを組み合わせて実施した翻訳後修飾の報告例

翻訳後修飾 RRL RRL+CMM WGE WGE+CMM
シグナルペプチド切断反応
糖鎖付加
(O-link)

(O-link, N-link)

(O-link, N-link)
アセチル化
リン酸化
イソプレニル化
ミリストイル化

○:論文報告あり

―:論文報告例なし

1) シグナルペプチド切断反応

シグナルペプチド切断反応は、CMMの存在下でRRLと適切な量の鋳型があるときに生じます。このときのタンパク質は、CMMの内側に存在します。また、シグナルペプチドを切断した酵素はCMMから抽出することができます。
シグナルペプチド切断反応は、CMMとWGEの併用でも検出することができます。しかし、WGEだけではシグナルペプチド切断反応が検出できないことがわかっています。

プロメガでは翻訳効率を最適化するために、WGEの製造過程でシグナル認識粒子(Signal Recognition Particle、以下SRP)を除去しています。このことから、WGEは、シグナルペプチド切断反応にはCMMがないと機能しないことになります。分泌タンパク質または膜タンパク質によっては、WGEの翻訳反応にCMMが添加されると、翻訳反応が阻害されることもあります。しかし、細胞質タンパク質の合成では、CMMによる翻訳反応阻害は確認されていません。

RRLにはSRPが存在することが報告されています。

2)糖鎖付加

糖鎖付加は、アスパラギンのアミノ基にオリゴ糖が付加される(N結合型糖鎖付加)とスレオニン、ヒドロキシレジンの水酸基にオリゴ糖が付加される(O結合型糖鎖付加)により生じます。N結合型糖鎖付加は、CMM存在下でRRL、WGEいずれでも確認されています。

O結合型糖鎖付加は、CMMの非存在下のRRLで確認されています。同じ鋳型を使用してWGEで実施したときには、O結合型糖鎖付加を確認することはできませんでした。O結合型糖鎖付加は翻訳後に生じるのに対し、翻訳時にN結合型糖鎖付加が起こっていると考えられています。

3)アセチル化、リン酸化

RRLで合成されるタンパク質のN末端にあるメチオニン残基は、時々、N末端アセチル化により除去されます。N末端アセチル化は、新生鎖がまだリボソームと結合している段階の翻訳初期に生じているようですが、この作用機序はほとんど知られていません。N末端アセチル化はN末端にあるメチオニン残基が除かれたときに起きています。

細胞タンパク質のセリン、スレオニン、チロシン残基に対するリン酸化は、一般的な翻訳後修飾であり、多くのタンパク質にとって、この修飾により変化することで生物学的活性や機能を持つようになります。リン酸化は細胞内に存在するさまざまなプロテインキナーゼによりリン酸化が作用します。

リン酸化の論文報告例としては、RRLとWGEを用いてニワトリ由来のMyoD1タンパク質を発現させています。反応溶液に3mMのEDTAを添加するとMyoD1のリン酸化反応が阻害されました。

4)イソプレニル化、ミリストイル化

システイン残基に対する翻訳後修飾であるイソプレノニル化は、真核細胞での翻訳後修飾で重要な形式であり、膜タンパク質局在としての役割をしています。RRLで翻訳後のタンパク質では、イソプレニル化がおきていることを確認しています。メチル化、エンドペプダーゼによる切断反応も同様にCMM存在下のRRLで確認しています。

RRLの翻訳反応系を用いたタンパク質のミリストイル化修飾も起きていると考えられています。タンパク質へのミリストイル基の結合はイソプレニル化と同様にとても重要であると考えられています。ミリストイル化はWGEの翻訳反応系で認められています。

5)タンパク質のフォールディングとシャペロン

タンパク質のフォールディングと復元は、細胞内の細胞質と小胞体の両方に存在する細胞性シャペロンにより介在されています。シャペロンは凝集や不要な相互作用を防ぐために、新たに合成された疎水性領域や変性タンパク質と相互作用します。シャペロン分子やシャペロン活性は、CMMの存在下のRRL翻訳反応系で認められています。

6)タンパク質分解過程とユビキチン化

In vitroのタンパク質発現においては、翻訳または翻訳後修飾の間に、タンパク質分解過程が進んでいます。RRLによる翻訳反応においては、26Sと20Sのプロテオソーム系に活性を持ったユビキチンとタンパク質分解経路を持っていることが示されています。

一般的にはRRLの翻訳系で合成される15kDa以下のタンパク質は、特にユビキチン化によるタンパク質分解の影響を受けやすくなります。WGEは、RRLよりも小さいタンパク質合成を発現する系として好ましいと考えられています。

メニューQ&Aもくじ日本語ホーム