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オートファジー活性を発光プレートリーダーで高速測定!

オートファジーとは オートファジーは細胞質成分をリソソームにて分解する現象であり、酵 母から高等動物・植物まで保存されている機構です。オートファジーには、 シャペロン介在性オートファジー、ミクロオートファジー、マクロオート ファジーの 3 つの形式が知られていますが、ここでのオートファジーは マクロオートファジーを指すものとしてご紹介します。オートファジーが 誘導されると隔離膜が出現・伸長し、タンパク質やオルガネラなどを包 み込みます。完全に包み込んだ状態をオートファゴソームと呼びます。 続いてオートファゴソームがリソソームと融合し、リソソーム内の分解酵 素により包み込まれた細胞質成分が分解されます(図 1 上参照)。この 様な過程を経て、細胞質成分を分解するのがオートファジーです。 発光法を用いたオートファジーフラックスの検出 オートファジーの過程において多くの分子の関与が見出されています が、LC3 タンパク質はオートファジーのほぼすべての過程で存在する事 からオートファジーの全般的マーカーとして広く利用されています。そ の利用方法としては LC3 の発現量をウエスタンブロッティング(WB)に て定量したり、LC3 に GFP や RFP などの蛍光タンパク質を付加し、イメー ジングでの評価がなされてきました 3) 。一方で、WB ではスループットが 低い事や蛍光イメージングによる評価が難しく、定量的な比較には特殊 な機器が必要になるなどのデメリットがありました。プロメガの新しい アッセイでは発光タグ HiBiT を活用し、プレートリーダーを用いたオー トファジーフラックス解析を可能にしました(図 1 参照。HiBiT について は 2 ページをご覧ください。)。Autophagy LC3 HiBiT レポーター導入細胞 にオートファジー活性に影響を与える化合物を添加し、発光基質と LgBiT タンパク質を検出試薬として加える事で検出を行います。オート ファジーを誘導すると HiBiT-LC3 レポーターの分解が促進され、発光シ グナルが低下します(抑制されると発光シグナルが増加)。すなわち、 本アッセイシステムは一般的なルミノメーターを用いて、オートファジー フラックスの変化を発光シグナルにて簡便に評価することができます。 3 次元細胞モデルでもオートファジーを評価! HiBiT-LC3 レポーターを活用した例を図 2 に示しました。ここでは PP242 と BafA1※を組み合わせて、HiBiT の発光値の変化からオートファ ジーフラックスを 2 次元培養と 3 次元培養のモデルで評価しています。 PP242 処理によりオートファジーを誘導すると、HiBiT-LC3 レポーターの 分解が促進され発光値が低下します。それに対して PP242 と BafA1 処 理を行うと、HiBiT-LC3 レポーターの分解が抑制され、発光値が回復す る結果が観察されました。2 次元、3 次元の培養形態に関わらず、発光 法によりオートファジーフラックスを評価できることが示唆されます。 ある種のがん細胞においては、2 次元培養、3 次元培養、がん組織で はオートファジーに関する転写因子の発現パターンが異なるとの報告が なされています 4) 。従来法では難しかった 3 次元培養での評価も発光 法の活用で進展することが期待されます。3 次元モデルを用いたその 他の発光解析法については 6 ページを参照ください。 オートファジーに関するスクリーニングへの展望 がんをはじめ、種々の疾患の発症などにオートファジーが関与する事か ら、オートファジーを制御する薬剤スクリーニングや創薬にも関心が高 まっています。スクリーニングのモデル例として、図 3 に Autophagy LC3 HiBiT レポーターを用いた 384well プレートでのアッセイ例を示しました。 スクリーニングでは概ね CV 値 10% 以内、Z’値が 0.5 以上であること が求められます5) 。プロメガのアッセイ例では CV 値 3 ~ 5%、Z’値 0.6 ~ 0.7 を示し、良好なアッセイ系が構築できる事が示されました。 最後に オートファジーは今や多くの人が知る機構となりましたが、オートファ ジーの分子機構にはまだまだ未解明な点があります。今回プロメガで はオートファジーのメジャーマーカーである LC3 に着目し、HiBiT の技術 を活用しました。発光技術がオートファジー研究の新しい発見の一助に なれば幸いです。 細胞ビックバン – 高次元細胞プロジェクト プロメガ オートファジー 検索 図 1. オートファジー発光アッセイの概要 図 2. 2 次元細胞モデルと 3 次元細胞モ デルでのオートファジー活性の評価 Autophagy LC3 HiBiT レポーター導入 HEK293 細胞を使用した。2 次元細胞 モデルでは 10,000 cells/well を 96well plate に播種。3 次元細胞モデルでは 2,000 cells/well に て Corning® 96-well Clear Round Bottom Ultra Low Attachment Microplate に播種した。各化合物を 6 時間処理し、発光測定を行った。 図 3. LOPAC ライブラリーを用いたスクリーニングのモデル例 Autophagy LC3 HiBiT レポーター導入 HEK293 細胞を 1000 cells/well で 384well plate に播 種した。(左)種々の化合物にて 6 時間処理し、発光測定を行った。Vehicle control を 100、PP242 のサンプルを 0 とし、オートファジーを誘導する化合物の探索を行った。(右) PP242 と種々の化合物にて 6 時間処理し、発光測定を行った。PP242 のみのサンプルを 0、 PP242 + BafA1 のサンプルを 100 とし、オートファジーを阻害する化合物の探索を行った。 オートファジー活性を発光プレートリーダーで高速測定! オートファジーの分子メカニズムを解明した功績にて東京工業大学 大隅栄誉教授が 2016 年のノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新し いところだと思います。オートファジーは発がん、神経変性疾患、生活習慣病、感染、各種の炎症などの様々な疾患に関与し、また発生・免疫・寿 命などにも関わりのある分解機構です1,2) 。オートファジーフラックスの測定では全般的なマーカーである LC3 に対しての発現・局在解析や LC3 に蛍 光タンパク質を付与してのイメージング解析が行われています。一方で従来法はスループットが低い事、蛍光イメージングの評価というデメリットが ありました。これに対し、今回、プロメガではオートファジーフラックスを発光にて測定し、簡便に定量化する技術を確立しました。 参考文献 1)N Engl J Med. 2013 Feb 14;368(7):651-62. 2)Nature Reviews Cancer volume 17, pages 528–542 (2017) 3)Yoshii, S. R. & Mizushima, N. Int. J. Mol. Sci. 18, 1–13 (2017). 4)Corinna Bingel et al. Cell Death Dis. 2017 Aug; 8(8): e3013 5)アッセイ系のバリデーションの手順(東京大学 創薬機構) http://www.ddi.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/themes/ddi/doc/ assay_validation_method.pdf RLU Drug dosage Autophagy LC3 HiBiT レポーター導入細胞 に化合物などを処理 オートファジー阻害剤 ▲発光増加 通常のオートファジー 定常レベルのHiBiT-LC3 発光測定 オートファジー活性化剤 ▼発光増加 発光測定 (下のグラフ参照) ファゴフォア オートファゴソーム オートリソソーム: LC3 HiBiT Reporter および 内容物の分解 細胞を破壊して、 LgBiT タンパク質と 基質を供給するために Nano-Glo® HiBiT Lytic Reagent を添加 Autophagy LC3 HiBiT Reporter HiBiT Spacer LC3 リソソーム LgBiT Reporter Levels (% of Vehicle Control) n = 3 1000 m 1000 m Vehicle BafA1 PP242 PP242 + BafA1 Avg. plate Z’= 0.65 +/-0.03 PP242 + BafA1 activity level PP242 alone activity level Autophagy Inducer Screen Compound serial # 150 125 100 75 50 25 0 0 160 320 480 640 800 960 1120 1280 0 160 320 480 640 800 960 1120 1280 120 100 80 60 40 20 0 -20 Normalized Activity % Normalized Activity % Autophagy Inhibitor Screen Compound serial # Vehicle alone activity level PP242 alone activity level Avg. plate Z’= 0.67 +/-0.06 LOPAC compounds +/- 3 St.Dev. +/- 25% LOPAC compounds +/- 3 St.Dev. +/- 25% ※ PP242 : mTOR 阻害剤(オートファジー誘導剤)、BafA1(Balomycin A1):オートファゴソー ムとリソソームの融合阻害剤(オートファジー阻害剤) 関連製品 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Autophagy LC3 HiBiT Reporter Vector and Detection System 1kit GA2550 88,000 HEK293 Autophagy LC3 HiBiT Reporter Cell Line and Detection System 1kit GA1040 1,070,000 U2OS Autophagy LC3 HiBiT Reporter Cell Line and Detection System 1kit GA1050 1,070,000 5Promega KAWARABAN