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プライマリー細胞不要! T 細胞活性化バイオアッセイ

第四回目は「T Cell Activation Assays(T 細胞活性化アッセイ)」の お話です。 ①そもそも T Cell Activation とは? PD-1/PD-L1 チェックポイント阻害に代表されるがん免疫療法では、T 細 胞活性化を抑制する機構の解除を目的としています。またがん免疫 チェックポイント阻害に続くターゲットとして、積極的に T 細胞活性化 を起こすパスウェイの活性化に期待が寄せられています。 ところで、そもそも T 細胞活性化(T Cell Activation)とはどのような現 象をさすのでしょうか?詳しい説明は免疫学の教科書に譲りますが、非 常にシンプルに定義すると「抗原の T 細胞受容体(TCR)刺激により IL-2 が産生されること」と言えます。この TCR から IL-2 産生(= IL-2 プ ロモーター活性化)につながるシグナル経路は複数ありますが、重要 なものの一つが NFAT 経路です。カルシウムシグナルの転写因子として 有名な NFAT は Nuclear factor of activated T-cells の略であり、もともと T 細胞活性化に深い関わりのある分子なのです。IL-2 プロモーターには NFAT シグナルを受け取る NFAT-RE とそれ以外のシグナル経路の刺激を 受け取る領域があり、NFAT 経路は主に TCR/CD3 複合体を介して活性 化され、TCR の co-receptorである CD28 を介したシグナルはそれ以外 の領域を活性化することが分かっています。このメカニズムを再現した 製品 T Cell Activation Bioassays では、主に TCR/CD3 経路の解析に使え る NFAT レポーターを組込んだタイプ(図 1A)と、CD28 など他のシグ ナル経路の解析にも使える IL-2 プロモーターのレポーターを組込んだ タイプ(図 1B)の 2 つを用意しました。 この 2 つの使い分けは、解析対象シグナルが NFAT シグナル以外の経 路に関与するかどうかをもとに考えます。例えば TCR/CD3 経路をブロッ クする PD-1/PD-L1 の解析には NFAT レポータータイプが使えますが、 CD28 経路をブロックする CTLA-4 の解析には IL-2 プロモーター全長を 持つ IL-2 レポータータイプが必要です。PD-1/PD-L1 のようにどちらも 使える場合はシグナルが強い NFAT レポータータイプが使いやすいで しょう(図 2)。 ② T Cell Activation Bioassay アプリケーション Anti-CD3 といった普通のモノクローナル抗体による T 細胞活性化の解 析はもちろん、Abatacept(CTLA-4 R と IgG-Fc のキメラタンパク質)の ような遺伝子組換え融合タンパク質や、Blinatumomab(CD3 と CD19 に 結合する二重特異性抗体)などの評価に使用したアプリケーションもあ ります(技術ポスター:www.promega.co.jp/asy_search.html より“二重特 異性抗体”で検索)。 しかしこのような使い方では、Jurkat がもともと持っている分子を介し たアッセイしかできません。Jurkat が持っていない因子や変異遺伝子の 解析などにも幅広く使いたい。そんな声に対応するため、実はこのアッ セイ、細胞増殖権利付きモデル(Cell Propagation Model, CPM)をご購 入いただければ自由に細胞を改変できるのです。つまり自分のターゲッ トとなる受容体を発現させたり、疾患原因となる遺伝子を欠損させた り、プローブとなるような分子を組込んだりすることで、自由にアッセ イをデザインできるようになりました。これは今までのプロメガのバイ オアッセイとは大きく違う特長です。細胞を改変したアッセイの一例と して、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor, CAR)発現 T 細胞 (CAR-T)アッセイをご紹介します。 CAR は腫瘍抗原に特異的なモノクローナル抗体可変領域の軽鎖(VL) と重鎖(VH)を直列に結合させた単鎖抗体(scFv)を N 末端側に、 CD3 ζ鎖を C 末端側に持つキメラタンパク質の総称です(図 3)。CAR を 発現させた T 細胞は scFv 領域で腫瘍抗原を認識した後、その認識シグ ナルを引き続き CD3 ζ鎖を通じて T 細胞内に伝達します。さらに T 細胞 活性化を増強するため、scFv と CD3 ζ鎖の間に共刺激分子(CD28、 4-1BB のドメイン)を組み込んでいます。図 3 は CAR の構造と CAR 発 現 NFAT エフェクター細胞でのアッセイデータです。 今回ご紹介した T Cell Activation Bioassay は ADCC Reporter Bioassay をは じめ、多くのプロメガバイオアッセイのベースとなったアッセイです。こ のアッセイ、他のバイオアッセイとは違って細胞増殖権利付きモデル(Cell Propagation Model, CPM)をご購入いただければ、お好きなタンパク質 を組込んだり、逆にノックアウトしたりと自由に改変できる点も見逃せ ません。次々出てくる免疫療法ターゲットをいち早く解析するためにも、 アッセイ構築ベースとしてラボに常備いただきたい製品です。 プライマリー細胞不要! T 細胞活性化バイオアッセイ バイオ医薬プロジェクト 抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の研究開発が加速しています。このセクションでは、抗体医薬の研究・評価試験のうち従来法の問題を新たな技 術で克服したアッセイや、従来法では対応できなかった新しいニーズに応えるアッセイをシリーズでご紹介していきます。 プロメガ 抗体医薬 検索 図 1. T Cell Activation Bioassay のアッセイ原理 図 2. 2 つのタイプの使い分け 図 3. 抗 CD19 または抗 CD20 キメラ抗原受容体(CAR)構造と T Cell Activation Bioassay データ 左:CAR の構造。 右:TCR/CD3 Effector Cells(NFAT)に抗 CD19-CAR または抗 CD20-CAR ベクターを一過性に 導入し、Raji 細胞と反応させた。導入した発現ベクター量依存的にシグナルが得られている。 13791M Glo A TCR/CD3 Effector Cell (NFAT) TCR CD3 CD3 CD28 Glo TCR/CD3 Effector Cell (IL-2) NFAT-RE Luciferase TCR CD3 CD3 CD28 IL-2 promoter Luciferase A. B. Signal Linker CD19/CD20 scFv Ab CD28 Linker 4-1BB CD3ζ scFv Spacer Intracytoplasmic Transmembrane Ectodomain Endodomain VH VL 0.0E +00 2.0E +05 4.0E +05 6.0E +05 8.0E +05 1.0E +06 1.2E +06 Bioluminescence (RLU) αCD19-CAR : Carrier 10:0 αCD19-CAR : Carrier 3.3:6.6 αCD19-CAR : Carrier 1:9 αCD19-CAR : Carrier 0:10 αCD20-CAR : Carrier 10:0 αCD20-CAR : Carrier 3.3:6.6 αCD20-CAR : Carrier 1:9 αCD20-CAR : Carrier 0:10 Ratio of CAR DNA to Carrier DNA TCR/CD3 (NFAT) Raji No Raji NFAT-RE Luciferase PD-L1 or PD-L2 Anti-PD-L1 or Anti-PD-L2 Anti-PD-1 PD-L1 or PD-L2 aAPC/CHO-K1 Cells TCR Activator TCR TCR Activator TCR IL-2 Promoter Luciferase CD80/86 CD28 Anti-CTLA-4 aAPC/Raji Cells PD-1 Effector Cells (Jurkat) CTLA-4 Effector Cells (Jurkat) PD-L1 CTLA-4 関連製品 製品名 カタログ番号 価格(¥) (NFAT) J1621 85,000 T Cell Activation Bioassay (NFAT) 5X J1625 385,000 (NFAT), Propagation Model J1601 お問合せ下さい (IL-2) J1651 85,000 T Cell Activation Bioassay (IL-2) 5X J1655 385,000 (IL-2), Propagation Model J1631 お問合せ下さい 2