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プロメガ実験ノート vol.3 MiCheck miRNAバイオセンサークローンを用いた miRNAが関わる遺伝子発現抑制の網羅的解析

プロメガ株式会社 MiCheck miRNAバイオセンサークローンを用いた miRNAが関わる遺伝子発現抑制の網羅的解析 はじめに マイクロRNA(miRNA)は、約21~25ヌクレオチド鎖長の機能性小分子RNAです。そのmiRNAをコードする遺伝子はゲノム上に数百から 数千種類存在し(ヒトゲノム上には2,588種類のmiRNAが存在しています*)、主にRNAポリメラーゼIIによって転写されています。初期 miRNA転写産物(primary miRNA: pri-miRNA)は、核内でプロセッシングをうけステム・ループ構造を持ったmiRNA前駆体(precursor miRNA: pre-miRNA)になります。その後、pre-miRNAは細胞質に移動し、Dicerのプロセッシングを受けて二本鎖のmiRNAになりRNAinduced silencing complex (RISC)に取り込まれます。最終的には片方の一本鎖miRNAがRISCに残り、その塩基配列に基づく遺伝子発 現抑制が惹起されます。発現抑制はmiRNAと相補的または一部相補的なメッセンジャーRNA(mRNA)に対して起こります。そのため、 1種類のmiRNAが複数の遺伝子の発現調節に関わっています。このユニークな遺伝子発現調節はさまざまな生命現象・生命機能に関わり、 さらに病気にも関連しています。したがって、miRNAの発現状況や活性状態はそれらとの関係を調べるうえで重要な情報となります。 (* 2014年11月28日現在) 1. コンストラクトの設計 miRNAが関与する遺伝子発現調節を簡単に調べるために、miRNAのターゲットとなるリポーター遺伝子の構築を行いました。解析対象 となるmiRNAの相補配列をDNA合成し(二本鎖のオリゴDNAにする)、それをpsiCHECK™-2ベクターがコードするウミシイタケルシ フェラーゼ遺伝子の3’非翻訳領域(3’-UTR)に挿入してmiRNAバイオセンサークローンを構築しました。3’-UTRにmiRNAの相補配列を挿 入することでアミノ酸コドンフレームを気にすることなく、つまり、ルシフェラーゼのアミノ酸コードを変えることなくmiRNAのター ゲットレポーター遺伝子を構築することができます。この方法で176種類のmiRNAバイオセンサークローンを構築しました。 miRNAバイオセンサークローンのウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子3’-UTRに はmiRNAと結合する相補配列が存在します。解析対象のmiRNAがRISCに取込まれ 機能性小分子RNAとして働いている場合、その相補配列をもったルシフェラーゼ遺 伝子は配列特異的な転写後抑制を受けます[RNA interference (RNAi)と同じ発現 抑制]。その結果、ウミシイタケルシフェラーゼ(タンパク質)の発現が下がり、 そして酵素活性が低下します。したがって、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を調 べることで、RISCに取込まれ実際に機能しているmiRNAの発現抑制活性を調べる ことができます(図1)。 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 神経薬理研究部 北條浩彦 先生 Vol. 3 図1:MiCheck miRNAバイオセンサークローンの作用機序 各 microRNA 標的配列はSV40 プロモーター制御下にあるウミシイタケルシフェラーゼ遺伝 子の停止コドンの下流、3’非翻訳領域に挿入しています。このため、microRNA 標的配列を含ん だウミシイタケルシフェラーゼ転写物が発現します。ウミシイタケルシフェラーゼ転写物は検討 対象のmicroRNA によってその翻訳が影響を受けるので、その結果を発光値として検出するこ とができます。 3.熱ストレスとmiRNAが関わる遺伝子発現制御 miRNAが関わる遺伝子発現制御が熱ストレス下で影響を受けるか否かについてMiCheck miRNAバイオセンサークローンを用いて調べ ました。HeLa細胞に143種類のMiCheck miRNAバイオセンサークローンとコントロールのpsiCHECK™-2ベクター(miRNAのターゲット 配列を持たない)をトランスフェクションし、16時間後、40℃の熱処理を行いました。熱処理後、デュアル・ルシフェラーゼアッセイを 行い、ウミシイタケルシフェラーゼの活性(ターゲット)をホタルルシフェラーゼの活性(コントロール)で正常化し、さらに psiCHECK™-2ベクター(miRNAのターゲット配列を持たない:抑制を受けない)を導入した細胞から得られた正常化ウミシイタケルシ フェラーゼの値を基にそれぞれの発現抑制値を算出しました。得られた40℃の発現抑制値を通常の37℃培養で得られた発現抑制値と比較 したところ、多くのmiRNAが関わる遺伝子発現抑制が熱処理後に亢進しているように観察されました(図2)。おもしろいことにDNA チップを用いたmiRNAの発現解析の結果、熱処理をしてもmiRNAの発現に大きな変化が表れていないことが示されました。miRNAが関わ る遺伝子発現抑制の亢進にはmiRNAの発現量は関与していないと考えられます。 2. MiCheck miRNAバイオセンサーの作用機序 プロメガ株式会社 本社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981 / Fax. 03-3669-7982 大阪事務所 〒532-0011 大阪市淀川区西中島6-8-8 花原第8ビル704号室 Tel. 06-6390-7051 / Fax. 06-6390-7052 日本語 Web site : www.promega.co.jp テクニカルサービス ● Tel. 03-3669-7980 / Fax. 03-3669-7982 ● E-mail: prometec@jp.promega.com 販売店: PKS150101 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) pFN21A HaloTag® Flexi® Vector 20µg G2821 29,000 関連製品 MiCheck miRNAバイオセンサークローンは、miRNAに対する相 補配列を持った二本鎖オリゴDNAを合成し、それをsiCHECK™-2ベ クターに挿入してクローンを構築しますが、miRNAの中にはどうし てもバイオセンサークローンが得られない(クローン化できない) モノがありました。それらは、おそらく、設計したオリゴDNAの配 列がプラスミドの複製に何らかの影響を与えているのではないかと 考えています。 こんなところで苦労しました Dual-Luciferase® Reporter Assay System 100回分 51,000 参考文献 1. Fukuoka M., Yoshida M., Eda A., Takahashi M., Hohjoh H. (2014) Gene silencing mediated by endogenous microRNAs under heat stress conditions in mammalian cells. PLoS ONE, 9(7): e103130. 2. Takahashi M., Eda A., Fukushima T., and Hohjoh H. (2012) Reduction of type IV collagen by upregulated miR-29 in normal elderly mouse and klotho-deficient, senescence-model mouse. PLoS ONE, 7(11): e48974. 3. Tamura Y., Yoshida M., Ohnishi Y., and Hohjoh H. (2009) Variation of gene silencing involving endogenous microRNA in mammalian cells. Mol Biol Rep, 36: 1413-1420. 4. psiCHECK™-2ベクターを選んだ理由 レポーター遺伝子(レポータープラスミドなど)を細胞内に導入しその発現を解析する場合、最も注意しなければならない事はトラン スフェクション効率(レポーター遺伝子の導入効率)です。細胞の種類や状態、使用するトランスフェクション試薬や方法そして導入す る核酸(レポータープラスミド)の精製度合などによってその効率は影響されます。その様な実験ごとに異なるトランスフェクションで あっても解析対象となるレポーター遺伝子の発現を正常化し比較・検討できるようにするのが、一緒に導入されるコントロールのレポー ター遺伝子(コントロール・レポーター遺伝子)の役目です。コントロール・レポーター遺伝子の条件は、解析対象のレポーター遺伝子 と分けて(識別して)検出できること、そして解析対象のレポーター遺伝子と同じトランスフェクション効率で細胞内に導入されること です。psiCHECK™-2は、解析対象レポーター遺伝子(ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子)とコントロール・レポーター遺伝子(ホタル ルシフェラーゼ遺伝子)の両方を持つプラスミドベクターです。したがって、psiCHECK™-2ベクターを用いれば、たとえトランスフェク ション効率が変動したとしても導入後の細胞には必ず解析対象レポーター遺伝子とコントロール・レポーター遺伝子が同じコピー数ずつ 存在することになります。これにより実験間で異なるトランスフェクション効率であっても解析対象レポーター遺伝子の発現量を同数の コントロール・レポーター遺伝子の発現量によって正常化し、正確に比較することができるようになります。この正確な定量化(正常 化)が、レポーター遺伝子を使ったmiRNAの発現抑制解析には不可欠な要素であり、それを可能にするpsiCHECK™-2は理想的なプラス ミドベクターであるといえます。 図2 :40℃と37℃のmiRNAが関わる遺伝子発現抑制 143種類のMiCheck miRNAバイオセンサークローンとコントロール のpsiCHECK™-2ベクターをHeLa細胞にトランスフェクションし、熱 処理40℃と通常の37℃温度条件下でmiRNAが関わる遺伝子発現抑制 を調べました。37℃のmiRNAバイオセンサークローンから得られた発 現抑制のデータ(青)を基に40℃の同じクローンから得られたデータ (橙)を重ねて示したグラフです(文献1より改変)。 E1910 30% OFF 本実験で使用したクローンが購入できます www.promega.co.jp/micheck/index.html 詳細・クローンリストはWebでご覧いただけます ヒト143種+マウス33種