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不均一な野外植物,多検体からの安定した核酸抽出のポイント

分子生物学の多くの研究は、実験室で育てた生物を材料として行われています。しかしながら、生物は野外 環境において生育し、進化してきました。いうまでもなく、野外環境では複数の環境要因が同時に、かつ複 雑に変化します。 これは、コントロールされたシンプルな環境である実験室とは大きく異なった環境です。そのため、実験室で 取られたデータだけでは野外における実際の生物のふるまいを理解することは困難であり、分子生物学を現 実の諸問題解決に十分生かすことができていない原因になっています。そこで我々のグループでは、野外環 境下で多数のサンプルからトランスクリプトームデータを取得し、それらのデータと気象データを合わせて統 計モデリングを行うことで、この問題に挑んでいます。例えば、水田のイネを用いた研究では、気温などの 環境要因へのトランスクリプトームの応答を定量的に明らかにするとともに、栽培期間の任意のタイミングで のトランスクリプトームを気象データから予測することを可能としました(図 1、Nagano et al., (2012), Cell)。 不均一な野外植物、 多検体からの安定した核酸抽出のポイント 龍谷大学 農学部 植物生命科学科 情報生物学研究室 永野 惇 先生 野外では環境要因が複雑に変動するため、数百から数千ものサンプルを 用いて、統計モデリングを行う必要があります。一方で、野外サンプル の多くは、実験室と比べ、極めて不均質です。そのため、均質ではない 多検体サンプルから安定して RNA 抽出することが重要な課題でした。 多検体用の 96 ウエルフォーマットの抽出キットもありますが、不均質な サンプルによる前処理工程の煩雑さに加え、マニュアル操作による人為 的なミスなどが重なり、安定した RNA 抽出を実現することは至難の業で した。 1 Maxwell® RSC Instrument の活用 Maxwell® RSC Instrument では、1)強力な洗浄が行え、かつ、2)夾雑物の 吸着が少ない磁性体セルロースビーズを採用しています。夾雑物の多い特 殊な植物からでも純度の高い核酸を得ることができます。 また、自動化されているため、マニュアルで抽出していたころと比べて、失 敗が減り、非常に安定した収量が得られるようになりました。プロメガでは、 機器の貸し出しプログラム“RentaMAX”を実施しています。試薬購入だけで Maxwell® RSC Instrument を使えるので、一度試してみてはいかがでしょうか。 2 難しいサンプル検討サービスの活用 (前処理方法の最適化) 植物のみならず、真菌、細菌などでは、モデル動植物とは異なり、核酸抽 出のために、特徴的な前処理工程が必要な場合があります。 プロメガでは、核酸抽出が困難なサンプルでの前処理工程などを、豊富な 経験と論文情報に基づいて、最適な条件を提案および検討してもらえます。 野外植物から次世代シーケンス(NGS)グレードの DNA・RNA を抽出するためのポイント 図 1. 野外トランスクリプトームデータと気象データのモデル化 これによって実際の野外環境下における環境応答をトランスクリプトームレベルから 理解できる。また、任意の気象条件下のトランスクリプトームの予測が可能となる。 ここ 3 3 が 3 難しい! 3 3 333 プロトコール 2 プロメガでは、上記のサービスを実施しているので、あまり分子生物学を得意としていない共同研究先にも導入を勧めやすいと感じています。実際、 Maxwell® RSC Instrument は、分子生物学実験に慣れていない学生などでも NGS 解析グレードの核酸を安定的に抽出できるので、いくつかの共同研究先でも 利用されるようになりました。 参考文献  Nagano, AJ., et al. (2012) Deciphering and prediction of transcriptome dynamics under uctuating eld conditions. Cell 151, 1358-69. temperature solar radiation 気象データ 予測 統計モデリング / 機械学習 トランスクリプトームデータ データベース 理解 Nagano et al., (2012) Cell ラボプロトコール サンプル破砕 • 溶かさないように注意しながら 50 mg を分取 • ビーズ破砕 植物育成、サンプル採取 • 試験農場にてイネの葉を採取 • 迅速に液体窒素で冷凍し、保管 1 核酸の品質チェック • 濃度(ng/µL)測定:Qubit • 品質チェック:BioAnalyzer • この後、Library 作製などに使用 5 2 RNA 抽出 • Maxwell® RSC の Deck Tray にカートリッジをセット • 抽出用チューブに Nuclease-Free Water 50 µL を入れる • カートリッジの第 1 槽目に作成したライセートを全量移す • 第 8 槽目にプランジャーを入れて、Maxwell® RSC 本体にセット • プログラムを選択し、精製スタート⇒約 50 分強で RNA 抽出液完成 ライセート作製 • Maxwell® RSC Plant RNA Kit(カタログ番号 AS1500)を使用 • 破砕用チューブに、Homogenization Buffer 200 µL 添加 • ボルテックスを用いて、十分に撹拌 • さらに、Lysis Buffer 200 µL 添加し、ボルテックスで撹拌 3 4 特集 Maxwell® RSC 使いの達人に教わる困難サンプルの鉄板ラボ内プロトコール 4