多糖類を豊富に含む植物病原菌からのDNA・RNA 抽出
植物病原菌の同定 : バナナ・カカオ病原菌 >>> DNA・RNA 抽出 >>>全ゲノム解析、RNA-seq 多糖類を豊富に含む植物病原菌からのDNA・RNA 抽出 植物の病害診断のためには、病原菌の分類に基づいた同定が必要になります。それは、病原体の形態のみだけでなく、複数の遺伝子情報から分子系統解析を行います。各遺伝子の増幅には、ユニバーサルプライマーを用いるのが一般的であり、増幅不良や非特異的増幅が頻発していました。そのため、全ゲノムデータを用いた新たなPCR プライマーの設計が必要でしたが、従来の核酸抽出法では、多糖類を多く含みかつ細胞壁が硬いため、次世代シーケンス解析に適した品質の核酸抽出物を得ることが困難でした。 多糖類を多く含む病原体から高品質なDNA を精製するコツ 表1. 異なるサンプルから得られた 核酸の収量と純度 DNA RNA こんなところに 3 3 3 3 3 3 3 困っていました 3 3 3 3 3 3 3333 高品質なDNA 取得による分子系統解析の効率向上 Maxwell® と独自のラボプロトコールにより、ゲノムDNA の抽 出が困難だった病原菌から、高品質のゲノムDNA が容易に 得ることが可能になり、全ゲノムデータを基にPCR プライマー を設計できるようになりました。結果取得までの近道となる だけでなく、コスト削減につながる場合があります。 このように 3 3 3 3 3 解決 3 3 できました 3 3 3 3 3333 1. 菌体の回収には、0.2%YG 液体培地で培養後にコーヒーフィルターを使用してろ過し、滅菌水で洗浄し風乾させる。その後、コーヒーフィルターより剥 がし、40 ~ 100 mg の菌体を液体窒素で凍結し破砕する。乾燥させすぎる前に回収するのがコツ。 2. CTAB バッファーを加えても液状にならないサンプル(疫病菌)も、そのまま進める。また、CTAB バッファーを入れてボルテックスを行うとサンプルが粘 性を増す株がある(一例として、Nigrospora)が、プロトコール通り65℃で保温する。ただし、ときどきボルテックスを行う。遠心後は、上澄みをできる だけ回収し、Maxwell® のカートリッジに加える。これまでの結果、最少の回収液量は100 μl 程度であり、得られたDNA でNGS 解析に成功している。 3. サンプルが多いと、溶解液の粘性が高くなり、Maxwell® の磁性体ビーズの凝集による収量低下を引き起こす場合がある。このため、DNA もRNA も抽出 量が少なかったときは、粘性を低減するためにサンプル量を減らす。 ラボプロトコール結果 サンプル破砕 20 ~ 100 mg の回収した菌体を凍結破砕する。 65℃で2 時間保温する(注意:サンプルの粘性が高い場合は、ときどきボルテックスする)。 16,000 xg で10 分間遠心する。 上清500 μl を使用して、Maxwell® で核酸を自動精製。 DNA 抽出の前処理 プロメガのキットに含まれるCTAB Buffer を500 μl 加えて、試料を完全に混和する。 20 μl RNase A, Solution、40μl Proteinase K Solution を加えてボルテックスする。 DNA 精製: Maxwell® RSC PureFood GMO and Authentication Kit (カタログ番号 AS1600) RNA 精製:Maxwell® RSC Plant RNA Kit (カタログ番号 AS1500) 植物病理学分野では、病害診断や防除技術の開発を含むあらゆる解析において、核酸の品質が研究の成否を大きく 左右します。特に、次世代シーケンスや全ゲノム解析では、高精度なDNA の取得が不可欠です。 私たちは、SATREPS BaCaDM プロジェクトとして、フィリピンとの国際共同研究を通じ、バナナおよびカカオの難防除 病害に対する管理技術の開発に取り組んでいます。対象とするのは、バナナの萎凋病・葉枯病、カカオの果実腐敗 病やVSD 病など、有効な防除法が確立されていない病害です。 研究の過程で、現地で報告されていた病害の一部が誤同定であることや、分類学的整理を要する病原菌群の存在が 明らかになりました。そのため、次世代シーケンス解析や全ゲノム情報に基づく病原菌特異的遺伝子の探索を行い、 病原菌を正確に識別するためのPCR およびqPCR 用プライマーの設計を進めています。これらの分子診断技術の 確立には、高品質で再現性の高いDNA の取得が前提となります。当研究室では、Maxwell® によるDNA 抽出を導入 することで、安定したゲノム解析と診断技術の開発を支えています。 本研究を通じて、バナナおよびカカオの病害対策に貢献し、食料生産の安定化という世界的課題に取り組んでいます。 多糖類を豊富に含む植物病原菌からのDNA・RNA 抽出 玉川大学 農学部 生産農学科 植物病理学分野 BaCaDM プロジェクト代表 渡辺 京子 先生 植物病原菌の同定 : バナナ・カカオ病原菌 >>> DNA・RNA 抽出 >>>全ゲノム解析、RNA-seq 図1. 炭疽病菌のHIS 3のPCR の結果。左:既報のプライマー。右:当研究室で開発したプライマー(Co_H3F/ Co_H3R)。既報のプライマーに比べ、非特異が減少し、増幅効率が改善された。 RNA 抽出の前処理 Wash Buffer ※ 1 を1ml を加える。さらに破砕して、2 ml チューブに入れる。 30 秒間ボルテックスする。 11,000 ×g で5 分間の遠心分離し、上清を除く。 この工程を2 度繰り返す。自作のCTAB Buffer ※ 2 500 μl を加えて、試料が完全 に混和するまでボルテックスする。 ※ 1 Wash Buffer: 0.1 M Tris-HCI, 0.35 M sorbitol, 10% (w/v) PEG 6000,4% (v/v) 2- メルカプトエ タノール, pH8.0(2- メルカプトエタノールは使用直前に添加する) ※ 2 CTAB Buffer: プロメガよりCTAB Buffer (カタログ番号 MC1411, 容量 100 ml)を調達する。 この製品1ml あたり40 μl 1-thioglycerol、3%(w/v) PVP-40 を加え、よく撹拌して調製する。 サンプル量は乾燥菌体の場合 0.02 g 以上あれば、その後の 解析に十分量の核酸が得られ ました。しかし、同種内でも 菌株によって多糖の量が異な るため、核酸抽出のしやすさ が異なります。これまでの経 験から上述のコツを見出して いるため失敗はほとんどあり ませんが、抽出に失敗した株 は粘度が高いものであり、サン プル量を減らすことで抽出が できています。 吸光度 波長(nm) 図2. DNA のQC チェック サンプル (属名) サンプル量 (g) 収量 (μg/μl) 260/280 Phytophytora 0.2 681.0 2.00 0.1 513.1 1.97 0.05 1060.0 1.96 Nigrospora 0.5 204.5 1.96 0.04 396.7 1.88 0.02 363.2 1.92 Colletotrichum 0.1 1189.0 1.99 0.05 506.0 1.89 Trichoderma 0.1 226.0 1.87 Lasiodiplodia 0.05 69.0 1.88 サンプル (属名) サンプル量 (g) 収量 (μg/μl) 260/280 バナナ根 + 病原菌0.1 100.0 2.02 Fusarium 0.1 304.5 2.40 3 Maxwell® 自動核酸精製装置ユーザーボイス集