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テックの一言コラム_2016年7月号 出会いは別れより難し

ぱく質をリコンビナントとして細胞内に発現させることにより、 検出対象を細胞内に入れることができるという反面、細胞内の 濃度をコントロールすることがきわめて難しい。そもそも細胞 内で均一に存在すること自体がありえない。ここも細胞の実験 のむずかしいところで、数式が入り込みにくいと考えています。 ところで、これは細胞内に限った話ではないですが、解離する ことよりも結合していることの証明は難しいと考えています。そ れは解離を観察するということは、結合が観察できていること が前提であるからかもしれません。まして細胞内でどのくらい の親和性をもって結合しているか、となるとセルフリーの感覚 からすると想像できません。しかし、薬剤が細胞内 PPI を解離 させる、あるいは会合させないということについては、細胞内 薬剤濃度が細胞外と同一あるいは相関するという前提のもと、 薬剤の強度を定量性を持って見ることができます。 細胞内での薬剤の効果を評価する 別れ際が重要 さらに以前も記述しましたが、薬剤の薬効が細胞内での解離の しやすさと関連することが示唆されてきました。解離というの は、Ligand-Receptor binding 実験でいえばフリーのリガンドがな い状態で行われますので、基本薬剤濃度に依存しません。そう いった意味から、細胞内での薬剤の解離のしやすさ(滞留の程 度)を見ることができるようになったことは、薬剤開発のお手 伝いができると考えられます。 出会いを見つけるよりも、別れの方がわかりやすい。これは分 子や細胞レベルでも同じなのでしょうか。 さて弊社では、タンパク質と低分子化合物の結合を細胞内 で観察するためのキットを発売しました。まずは HDAC と Bromodomain のアッセイキットです。また、Kinase についてもカ スタム品でご提供が可能です。内容は下記文献に詳細に記載さ れています。ご興味ある方はお問い合わせください。 Nature Communications 6 (2015), Article number: 10091 出会いは別れより難し[Vol. 13] 2016 年7月号 セルフリー系 PPI はシンプルなだけに たんぱく質分子間相互作用(PPI)の実験を考えると、Binding assay を思い出します。Binding assay というと、受容体とそのリ ガンドの結合ですが、リガンドが大きい場合は、そのまま PPI といえます。 昔 RI を用いて Binding assay を行っている際に、結合様式を考え るうえで、いくつかの計算式を用いました。Binding assay で得ら れる 50% 阻害濃度 IC50 は相対的なものなので、それを絶対的 な値 Kd あるいは Ki を算出するのに、Cheng-Prusoff の式(式 1) が多用されています。Kd は、実験に用いる Ligand 濃度と、その Ligand の Kd に依存するという公式です。ところが、このもとを た ど る(BBRC 6 6 ( 2 ) 1 9 6 5 687-)と受容 体の濃度も関 係しているの です(式 2)。 従って、Cheng-Prusoff の式が成り立つのは受容体濃度が無視で きるほど低い、という前提があると私は考えています。昔はリコン ビナントの受容体などなかったので、必然的に受容体濃度は低 く、無視できました。ところが、今や受容体濃度が無視できな いほど放り込むことができます。いつの間にか計算式が一人歩 きをしてしまい、Cheng-Prusoff の式に従っているから大丈夫と 考えられているようで仕方がありません。また Ligand-Receptor binding は、通常 Ligand を標識します。またシグナルの方向も明 確です。一方、単に PPI というと、シグナルの方向性を考慮しな いことがほとんどです。これらの式は、リガンドや受容体は濃 度で示されており、前提としてどちらも均一に存在するという のが前提です。実験中に用いていた受容体である膜画分は、イン キュベーション中に試験管の底に沈んでき ます。ふと思ったことは、正確には受容体 は均一ではない。それどころか、細く長い 試験管で実験したら、どうなるのでしょう。 このあたりも前提を無視しかねない状況で す。もちろん結合を見るだけであれば、問 題ありません。一方で、これを逆手にとって 実験の検出に利用することもできます。た とえば完全に均質系だと高濃度にしにくい ものが、何かに固相化することにより局所 的に高濃度になるので、親和性が低いものでも検出感度が上が りうる、というものです。 細胞内 PPI はセルフリーとは違う PPI については、本来の結合が細胞内で起きている場合は、や はり細胞内で検出することも重要です。特に PPI 阻害剤などを 考えるうえでは、膜透過性も同時に結果に反映されます。さら に対象のタンパク質は細胞内に均一に存在することは考え にくく、またセルフリーの試験管内とは全く異なる環境での会合 を見ることができます。ところが、FRET や BRET は目的のたん テクニカルの ひと こと コラム 受容体 リガンド 同じ ? IC50 = Ki(1 + L ; 遊離リガンド濃度 L Kd )…(式 1) IC50 = Ki(1 + LT Kd + RT Kd + 3 2 + LR Kd )- IR …(式 2) LT ; リガンド総濃度 RT ; 受容体総濃度  LR ; リガンド – 受容体複合体濃度 IR ; 阻害剤 – 受容体複合体濃度 Hypothetical Data BTK Residence Time BRET Signal Short Residence Long Residence Super long residence or covalent 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 0 .0 0 0 .0 2 0 .0 4 0 .0 6 0 .0 8 T im e (m ) B R E T R a tio Dasatinib Ibrutinib Vehicle 解離しやすさを BRET シグナルとして観察できる。 Ibrutinibe は、Dasatinib より 解離しにくいことが示唆された。 Target Nluc Nluc Target テスト化合物を BRET ドナー 標的タンパクに結合させる。 BRET アクセプター標識リガンド を加え、リアルタイムで測定する。 テクニカルサービス Tel. 03-3669-7980/Fax. 03-3669-7982 E-Mail : prometec@jp.promega.com プロメガ株式会社 本   社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982