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発光法によるレドックス細胞アッセイ

発光法によるレドックス細胞アッセイ 高次元細胞プロジェクト 好気性生物は酸素を用いた代謝機構により、基質の酸化反応から大きなエネルギーを得ています。その一方で、好気性生物は酸化ストレスに曝され るという宿命を背負っており、進化の過程で様々な防御機構を発達させてきました。細胞内の酸化還元状態のバランスの乱れは、細胞の老化や疾患 発症などにつながると考えられており、たとえば、Navdeep ら(Current Biology, 2014)は H₂O₂ により NFκ B 経路や MAPK 経路の活性化が誘導され 発がんに寄与することや、酸化ストレスが幹細胞の自己複製能や分化に関与していることを述べています。ここでは幅広い研究分野にて注目されて いる細胞内の酸化還元に関与する因子を発光にて測定する技術を紹介します。 発光テクノロジーによる活性酸素種と還元物質の測定 活性酸素種(ROS)である過酸化水素(H₂O₂)は細胞の ROS・酸化スト レスレベルを評価する指標の 1 つです。対して、グルタチオンは細胞内 での還元物質であり、活性酸素種の除去を行っています。プロメガで はこれらの因子を発光にて測定する技術を確立しており、その測定原 理を図 1 に示しました。 発光での測定メリットとして ROS アッセイのハイスループットスクリー ニング(HTS)での比較の例をご紹介します。表 1 に LOPAC-1280 を用 いて、ROS-Glo™ Assay と西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)法とを実 際に比較した結果を示しました。75% 阻害を示す化合物数を比較する と HRP 法では系に影響が見られた化合物が 7.1% もありました。それに 対し、ルシフェラーゼの発光を用いたROS-Glo™ Assayでは0.5%でした。 HRP は発光強度が弱く、発光の減衰が速いなどの欠点があり、さらに HRP に対する阻害効果が偽陽性の原因となるなどの問題点があります。 プロメガの H₂O₂ 測定法では①ルシフェリン前駆体が H₂O₂ とまず反応 する、②化合物の影響を受けにくい改良型ルシフェラーゼ Ultra-Glo™ Luciferase を使用しているなどの工夫がなされており、偽陽性が少なく、 スクリーニングなどの薬効評価に威力を発揮します。 ROS-Glo™ Assay HRP 法 化合物の数 LOPAC に 占める割合(%) 化合物の数 LOPAC に 占める割合(%) スクリーニングに用いた化合物数 1,280 1,280 インヒビター:活性 75% 以下 6 0.5 91 7.1 インヒビター:活性 50% 以下 3 0.2 67 5.2 アクチベター:活性 150% 以上 2 0.2 0 0 以上細胞株レベルでの測定例でしたが、組織レベルでの酸化還元状態 を検討したい場合にはグルタチオン測定法、GSH-Glo™ Assay がお勧 めです。様々な細胞株や組織での測定報告がありますので、詳細はプ ロメガ HP のサイテーションリストをご覧ください。 www.promega.jp/resources/tools/citations/ 発光テクノロジーによる NAD・NADP の測定 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)および、そのリン酸化 型 NADP はともに生体内の酸化還元反応の補酵素として関与する重要 な分子です。これらの分子もまた細胞内の代謝の状態や酸化還元状態 を示す指標の 1 つです。 これまで、ELISA・HPLC などの煩雑な方法での測定がなされてきました が、プロメガではこれらの分子種も簡便に測定できるよう、試薬の添 加のみで測定できるようにデザインし、改良した測定法を確立しました。 図 2 には一例として、NAD/NADH の測定原理を示しました。さらに、作 製したライセートに対して酸やアルカリで前処理を行うことにより、片 方の分子種を分解することで、酸化型・還元型それぞれの量や比率を測 定することも可能です。 最後に ここで紹介した NAD/NADH-Glo™ , NADP/NADPH-Glo™ はかわら版夏号 で紹介したGlucose Uptakeアッセイなどの測定原理の基礎になっており、 この技術をベースに種々の代謝産物の測定法の開発が進められていま す。また細胞株ベースでのアッセイのみならず、組織サンプルやバクテ リアなどの応用例もありますので、詳細については弊社 Web サイトを 参照いただくか、お気軽にお問い合わせください。 プロメガ 高次元細胞プロジェクト 検索 図 1. 活性酸素種と還元物質の測定原理 (上図)H₂O₂ の測定法では、H₂O₂ とルシフェリン前駆体が反応し、ルシフェリンを生成。 H₂O₂ 量を発光シグナルに変換して測定する。 (下図)グルタチオンの測定法では、グルタチオン Sトランスフェラーゼ(GST)を用いて、 ルシフェリン前駆体と還元型グルタチオン(GSH)を反応させ、ルシフェリンを生成。GSH 量を発光シグナルに変換して測定する。 キーポイント 頑強なアッセイ 化合物の影響を受けにくいアッセイデザ インと改良型 Luciferase を使用 簡単な測定プロトコル Add to Measure の簡単 プロトコル 様々な生物種での応用例 哺乳動物細胞株に加え、組織 やバクテリアの例もあり。もちろんマルチプレックスアッセ イにも対応! NAD+ NADH NAD+ NADH NAD+ NADH NAD+ NADH 細胞 (PBS中) 細胞溶解液 細胞溶解剤を添加 NAD+ 測定用 NAD/NADH-Glo™ で NAD+ を測定する NAD/NADH-Glo™ Assay. NADHを測定する NADH測定用 0.4N HClを添加 60°C 15分熱処理 60°C 15分熱処理 室温で10分置き、 Trizma® base を添加 室温で10分置き、 HCl/Trizma® 溶液を添加 NADH Reductase Substrate NAD+ Luciferin Reductase NAD Cycling Product NAD Cycling Substrate NAD Cycling Enzyme Light Luciferin Detection Reagent (Ultra-Glo™ rLuciferase + ATP) (右図)細胞株、組織、菌などのライセートサンプルに前処理を加えることにより、 NAD,NADH(もしくは NADP,NADPH)をそれぞれ分けて測定可能 図 2. NAD/NADH 測定法の原理と応用例 (左図)発光シグナルに変換して NAD/ NADH 量を測定する。測定は試薬を調製し、 添加するのみで 1 時間程度で発光測定が 可能。 CH3 S O O O NO2 S N S N COOH HO GST S N S N COOH Luciferin GSH GS-R Luc-NT Luciferase Light H2 O2 Substrate S N C N O B O O HO S N S N COOH Luciferin H2O2 Luciferase Light 表 1. ROS-Glo™ H₂O₂ と一般的な HRP 法(蛍光)の偽陽性率の比較 10µM H₂O₂ を各 well に加え、LOPAC-1280 を添加した際のシグナルへの影響を、ROSGlo™ Assay と HRP 法を比較した。 関連製品 製品名 測定用途 サイズ カタログ番号 定価(¥) 特別価格(¥) ROS-Glo™ H₂O₂ Assay 過酸化水素(H₂O₂)の測定 10ml G8820 69,000 55,200 特 GSH-Glo™ Glutathione Assay 還元型グルタチオン(GSH)の測定 10ml V6911 69,000 55,200 特 GSH/GSSG-Glo™ Assay 還元型および酸化型グルタチオン(GSH,GSSG)の測定 10ml V6611 90,000 72,000 特 NAD/NADH-Glo™ Assay NAD,NADH の測定 10ml G9071 90,000 72,000 特 NADP/NADPH-Glo™ Assay NADP,NADPH の測定 10ml G9081 90,000 72,000 特 4 特 期間限定プロメガクラブキャンペーン対象製品 ※期間:2016 年 10 月 11 日~ 12 月 22 日 プロメガクラブについては www.promega.co.jp/promegaclub.html をご覧ください。