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バナナ萎凋病菌への防御応答機構の解析に向けた、バナナ球茎からの高品質RNA 抽出

植物の発現解析:バナナ球茎>>> RNA 抽出>>> RT-qPCR, RNA-seq バナナ萎凋病菌への防御応答機構の解析に向けた、バナナ球茎からの高品質RNA 抽出 バナナ萎凋病は世界のバナナ生産に莫大な損害をもたらしている難防除土壌病害である。病原体はフザリウムと呼ばれる菌で、土壌中に残存した胞子が発芽して植物の根から侵入し、維管束を介して地上部に広がる。本菌が感染すると植物の根からの水分の獲得が妨げられ、最終的には枯死に至る。本病は土壌から感染するという性質上農薬の利用困難で、新たな技術による、持続可能な防除法の開発が求められている。 バナナ萎凋病菌への防御応答機構の解析に向けた、 バナナ球茎からの高品質RNA 抽出 植物の発現解析:バナナ球茎>>> RNA 抽出>>> RT-qPCR, RNA-seq サンプル破砕 乾熱滅菌済み乳鉢と乳棒で液体窒素を加えながら、サンプルを完全にパウダー状にする。2 サンプリング バナナ球茎をサンプリングし、70% エタノールと1% 次亜塩素酸ナトリウムで表面 殺菌後、0.1 g を切断し液体窒素で凍結、-80℃保存する。 1 Maxwell® でのRNA 抽出 Lysis Buffer(Maxwell® Kit に付属)200 μl を添加・混和し、室温10 分間インキュベート する。Nuclease-Free Water をElution Tube に30μl 添加する。ライセートをMaxwell® カートリッジに加え、RNA を自動抽出する。 5 品質チェック NanoDrop One で濃度、A260/A280 およびA260/230 を測定する。-80℃で保存する。6 バナナ萎凋病は世界のバナナ生産に莫大な損害をもたらしている難防除土壌病害である。病原体はフザリウムと呼ばれる菌で、土壌中に残存した胞子が発芽して植物の根から侵入し、維管束を介して地上部に広がる。本菌が感染すると植物の根からの水分の獲得が妨げられ、最終的には枯死に至る。本病は土壌から感染するという性質上農薬の利用困難で、新たな技術による、持続可能な防除法の開発が求められている。植物が本来備えている病原体への防御応答を高める薬剤「プラントアクチベーター(抵抗性誘導剤)」の探索は、新たな防除技術として最も有望なものの一つである。しかし、こうした研究を進めるには、植物の防御応答遺伝子の発現を解析する手法が必要である。本項では、サリチル酸(SA)経路の防御応答関連遺伝子の発現を経時的に解析するため、バナナ萎凋病菌が蓄積し防御応答が引き起こされる組織であるバナナ球茎から、RT-qPCR および東京農工大学 農学部 RNA-Seqに適した高品質 RNAを安定的に抽出する手法を紹介する。 植物病理学研究室 小松 健 先生 • バナナ球茎には多糖類・フェノール化合物が豊富に含まれる。遺伝子発現解析に用いるRNA に これらが混入するとDNase 処理やRT-qPCR 反応を阻害する可能性が高い。 • 球茎は根や葉など他の組織に比べ硬いため、ビーズ破砕機による均一な破砕が困難である。さらに、破砕後のサンプルは粘性が非常に高く、市販のスピンカラムを用いたRNA 抽出効率を著しく低下させる。バナナの球茎の切断部。左:健全植物の球茎、右:バナナ萎凋病罹病植物の球茎。バナナ萎凋病罹病植物で球茎が褐変している。バナナの球茎からRT-qPCR やRNA-seq などの遺伝子発現解析に適したRNA を抽出するためのポイント • -80℃のフリーザーに保存した組織0.1 g をある程度カミソリで刻んでから乳鉢に入れ、液体窒素を加えながら完全な粉末になるまで破砕(ビーズ破砕機も 利用可能)すること。 • 破砕したサンプルにWash Buffer ※ 1 を加え、混和後に遠心する。この工程を上清に粘性・着色がなくなるまで繰り返し洗浄すること(一般的に3 回程度行う)。この前処理により多糖類・フェノール化合物などの不純物を効果的に除去し、後段のMaxwell® RSC を用いたRNA の抽出効率を向上できる。 • 不純物除去後の沈殿に、CTAB Buffer ※ 2 を添加する。70℃でインキュベート後、遠心し上清を回収すること。このCTAB 処理により、細胞を完全に溶解させる。ラボプロトコール 使用キット:Maxwell® RSC Plant RNA Kit(カタログ番号 AS1500) RNA 抽出前処理 65℃ に温めたWash Buffer ※ 1 4 ml を添加・混和し、12,000×g、4℃、5 分間遠心し、上清を除去する。この工程を、粘性が低下しサンプルの色が消えるまで繰返す。 ※ 1  Wash Buffer: 0.1 M Tris-HCI, 0.35 M sorbitol, 10% (w/v) PEG 6000, 4% (v/v) 1-thioglycerol, pH8.0(1-thioglycerol は使用直前に添加する) CTAB 処理 沈殿にCTAB Buffer ※ 2 600 μl を添加・混和し、70℃、10 分間インキュベートする。 14,000×g、4℃、5 分間遠心し、上清400 μl を新しい1.5ml チューブに移す。 ※ 2  CTAB Buffer: プロメガよりCTAB Buffer (カタログ番号 MC1411, 容量 100ml)を調達する。 この製品1ml あたり40 μl 1-thioglycerol、3%(w/v) PVP-40 を加え、よく撹拌して調製する。 バナナ球茎100 mg から抽出した全RNA の濃度と純度 このように、本研究室独自の前処理とMaxwell® の組み合せにより、高品質かつ高収量のRNA が得られた。特に、Wash Bufferでの繰り返し洗浄による不純物事前除去は、多糖類・フェノール化合物の除去に極めて効果的であり、Maxwell® でのRNA 抽出の成功率を大幅に向上することができた。また、Maxwell® RSC Instrument による自動抽出により、実験者間差が解消され、複数のタイムポイント・処理区間での比較が可能な高品質RNA を安定的に取得できた。抽出したRNA はRT-qPCR 解析に適用でき、バナナ球茎におけるSA 経路関連遺伝子の発現変動の解析に貢献できる。 本プロトコルはバナナに限らず他の植物の栄養繁殖性組織にも適用可能である。本研究室では、本プロトコルを花卉植物であるユリに適用し、バナナの球茎と同様に多糖類・フェノール化合物を多く含む球根からのRNA 抽出と、球根におけるウイルス蓄積量の解析に成功している。Maxwell® と本手法を活用することで、栄養繁殖性の植物の研究が加速することが期待される。 3 3 がが 33 難しい! 3 3 333333 Sample No. ng/μl A260/280 A260/230 1 133.2 1.82 2.03 2 73.4 1.82 2.06 3 75.4 1.82 1.96 4 72.4 1.82 2.20 上記のRNA を用いてMaPAL1、MaWRKY40、MaDL01 という バナナの3 遺伝子、および内在性リファレンス遺伝子である MaActin1 についてRT-qPCR を行ったところ、いずれも相関係数 R² ≧ 0.98、反応効率 80 ~ 110% という良好な検量線が得られ、 定量が可能であった。 ※さらにDNase 処理をすることでより高純度のものが得られる。