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RNAアプリケーションガイド

RNA

RNAアプリケーションガイド

注意を要するRNAの取扱いから精製、cDNA合成、タンパク質翻訳など、RNAを用いる実験を行う上で参考になる情報が盛りだくさん。実際の実験でためになるコツやヒントが分るQ&Aなど。

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プロメガ株式会社 Get the message … RNAガイド表1-4 01.1.22 2:55 PM ページ2 タンパク質� 5章�翻訳� TNT® System 1章� RNasin® RNA分解酵素� Total RNA mRNA精製� PolyATract 2章� ® 1000 細胞・組織� 4章� cDNA合成� PCR Access RT-PCR 6章� DNA(PCR産物)� 転写�3章� DNA(クローニング)� RiboClone ® SV RNA 目 次 第1章 RNaseから大切なRNAを守る…………………………………………..1 第2章 RNA精製 ……………………………………………………………………….2 第3章 in vitro 転写………………………………………………………………….12 第4章 RT-PCR ……………………………………………………………………….16 第5章 in vitro 翻訳………………………………………………………………….20 第6章 cDNA合成 ……………………………………………………………………26 第7章 RNA精製後のアプリケーション ……………………………………..30 RNAガイド表2-3 01.1.22 3:23 PM ページ1 Chapter 1 RNaseから大切なRNAを守る 1 リボヌクレアーゼ(RNase)がない環境を作り出す方法に ついて 多くの分子生物学の手法はインタクトなRNAを必要としま す。RNaseは非常に不活性化するのが難しく、抽出途中また抽 出後の検体への混入を極力避ける努力をしなければなりませ ん。これは特に検体が手に入れ難いまたは取り返しのつかない 貴重なものである場合非常に重要です。以下の注意事項がRNA サンプルへのRNaseのコンタミを防ぎ、全長のRNAを抽出精製 するのに役立ちます。 RNaseのコンタミを防ぐためのヒント ① RNaseの2大汚染源は研究者の手と空気中に浮かぶ埃につい た細菌やかび、またはこれらの付着したガラス容器です。こ れらの汚染源からサンプルを守るには、RNA精製・解析用の 試薬を取扱うときには必ず手袋を着用し(新品の使い捨ての ラテックス手袋など)、無菌操作を行ないます。 ② RNAを取扱うときにはなるべくプラスチック製の使い捨て器 具を使います。これらの器具は普通RNaseフリーなので、前 処理が不要です。 ③ 再利用しているガラス容器やプラスチック器具は、RNaseを 除去・失活させる処理を施します。ガラス容器は200℃で一 晩乾熱滅菌します。その他プラスチック容器などは0.1N NaOH / 1mM EDTAで満遍なくすすぎ、その後DEPC (diethyl pyrocarbonate) 処理水ですすぎます。COREX® 管は乾熱滅 菌せずに、0.05%DEPC水に一晩浸します。これにより、遠心 中にCOREX® 管が割れる可能性を低減することができます。 ④ ほとんどの新鮮な脱イオン水はRNaseフリーですが、これも RNaseの汚染源になる可能性があります。もし、プローブや 検体としてのRNAが分解してしまった場合は、実験室の供給 水をRNAサンプルと一緒に混ぜてインキュベートし、アガロ ースゲルで分析して分解しているかどうか確認して下さい。 ⑤ RNA抽出用の試薬などは専用のものを使うようにします。デ ィスポの手袋をし、必ず乾熱滅菌済みのスパチュラを使用し、 未使用の秤量皿又は薬包紙を使って下さい。 ⑥ 自家製の溶液は必ず0.05% DEPCを加え、室温で一晩インキ ュベートします。その後、30分間のオートクレーブにより DEPCを飛ばしてから使用します。オートクレーブのみでは RNaseを不活性化できませんのでご注意ください。 注意:Tris系のバッファーはDEPC処理できませんので、Tris bufferを調製する際には厳重 に注意してTrisを秤量し、DEPC処理済みの水とガラス容器を使用してください。 RNasin® Ribonuclease Inhibitor: ネイティブタンパク 質と組換えタンパク質 リボヌクレア―ゼ(RNase)阻害剤を使用することにより、多 くのアプリケーションでRNAの分解を防ぐことが出来ます。プ ロメガのネイティブと組換え体RNasin® Ribonuclease Inhibitor は、真核生物の中性リボヌクレアーゼを含む幅広いリボヌクレ アーゼに対する阻害能力を持っています(1、表1-1を参照)。 これらネイティブ並びに組換え体RNasin® Ribonuclease Inhibitorは、RNaseの混入が問題となる以下のような様々なア プリケーションで使用できます。 ● RNAの収量増加 ● cDNA合成中のmRNAの保護 ● 逆転写PCR (RT-PCR) ● in vitro 転写/翻訳システム ● in vitro 翻訳時のRNAの安定性改善 ただし、リボヌクレアーゼは変性状態でも活性を保ちますの で、非共有結合的に結合するRNasin® Ribonuclease Inhibitorが 変性されて効力を失うことにならないよう、変性させる条件を 避ける必要があります。活性化型のリボヌクレアーゼが RNasin® Ribonuclease Inhibitorから解離しないようにするた め、使用は50℃以下で尿素などの変性剤が存在しない状態を選 んでください。一方RNasin® は幅広いpH域でご使用いただけま す(表1-2を参照)。 阻害できる 阻害しないリボヌクレアーゼ リボヌクレアーゼ RNase A RNase T1 RNase B S1 Nuclease RNase C RNase from Aspergillus sp human placental RNase RNase H RNase ONE™ Ribonuclease Taq DNA Polymerase AMV, M-MLV Reverse Transcriptase SP6, T7 または T3 RNA Polymerase 活性 RNaseへの非共有結合による阻害 阻害型 非競合型(3) リボヌクレアーゼ(RNase A) 1対1(2) との結合比 結合阻害定数 Ki = 4 x 10-14M (3,4) 使用濃度 反応溶液1 µlに対して1 unit 避けるべき反応条件 50℃以上、尿素、SDS pH活性域 5~9(至適pH7~8)(1) 分子量 49,847Da 等電点 pI 4.7 参考文献 1. Blackburn, P. and Moore, S. (1982) In: The Enzymes, Vol. XV, Part B, Academic Press, NY. 2. Polakowski, I.J. et al. (1993) Am. J. Pathol. 143, 507. 3. Lee, F.S. et al. (1989) Biochemistry 28, 219. 4. Lee, F.S. et al. (1989) Biochemistry 28, 225. 製品案内 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) RNasin® Ribonuclease 2500u N2111 18,000 Inhibitor RNasin® Ribonuclease 10000u N2115 39,000 Inhibitor Recombinant RNasin® 2500u N2511 18,000 Ribonuclease Inhibitor Recombinant RNasin® 10000u N2515 39,000 Ribonuclease Inhibitor 表1-2. ネイティブならびに組換え体RNasin® Ribonuclease Inhibitorの 特徴 表1-1. ネイティブならびに組換え体RNasin® Ribonuclease Inhibotorの ヌクレアーゼとポリメラーゼに対する影響(汎用されるものなど を選択し、リストアップした) 第1章 RNaseから大切なRNAを守る RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ1 はじめに ノーザンブロット解析、cDNAライブラリーの構築、RT-PCR、 プロテイントランケーションテスト(Protein Truncation Test; PTT)といったアプリケーションにおいては、単離したRNAの精 製度が高く、RNAが完全な状態を保っていることは極めて重要 な意味を持ちます。RNA精製の成否は様々な要因-効果的な組 織/細胞の破砕、内在性RNaseの不活性化、混入しているDNA やタンパク質の除去など(1)-に依存しています。RNAを用いた すべての実験において、これらの中で最も重要な要因となるの が迅速なRNaseの不活性化です。RNaseは幅広い条件下で強力 なRNA分解活性を発揮します(2)。その他にも、RNAの精製法を 選択するときに考慮すべき要因としてサンプルの種類、目的の RNAの特性および単離したRNAをどのようなアプリケーション に用いるかなどが挙げられます。 一般的なRNA単離法と留意点 RNA精製方法の最初のステップは細胞や組織の破砕です。こ の破砕・ホモジナイズのステップが徹底して行なわれないと RNAは細胞から放出されません。また、破砕の作業にともない 内在するRNaseが細胞小器官から放出されます。良質のRNAを 精製するには、細胞を破砕すると同時にこれらRNaseを不活性 化する必要があります。このホモジナイズのステップでは通常 グアニジンを使用しタンパク質を変性させ、RNaseを一時的に 不活性化しています。また、ホモジナイズを促進させるために 界面活性剤を利用することもあります。 細胞が破砕・ホモジナイズされた後、酸化フェノール:クロ ロホルム:イソアミルアルコールの有機溶媒混合液により、有 機物(タンパク質、細胞膜など)を抽出するのが最も一般的な 方法論です。ここでRNAの精製度を決める要因は、正確な酸化 フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールの比、組織 の種類に対するその溶媒の十分な量と正しいpHです。これら試 薬の精製度とDNAを有機相に抽出するための条件設定が意外と 難しいため、一般的に市販されている試薬を利用することが賢 明です(RNAgent® Total RNA Isolation Systemなど)。目視で確 認できるくらいのDNA混入があった場合、試薬の使用量やその 調製に問題があったと考えられます。RNA精製過程では、DNA を取り除くステップも含まれていますが、普通DNAは有機溶媒 による抽出ステップで取り除かれます。水相を移すとき有機相 との境目の沈殿がDNA混入の原因となりますので、なるべく避 けるようにします。また、DNAを完全に取り除きたい場合は、 RQ1 RNase-Free DNase(カタログ番号M6101)を利用するこ とをお勧めします。これは、特にRT-PCRを行なうときに必要 なステップです。 RNA精製の初期過程では、環境からのRNaseによる汚染は問 題となりません。精製過程でRNaseを不活性化する試薬からサ ンプルを移すとき、特に外部からのRNaseによる汚染を防ぐ必 要があります。ゲル電気泳動で明瞭に見えるRNAサンプルでも、 活性のあるRNaseや活性化可能なRNaseが存在する可能性があ ります。そのようなRNaseを完全に隔離するには、RNasin®リ ボヌクレアーゼ阻害タンパク質を利用します。この阻害タンパ ク質により、容器やピペッティング中に混入しやすいRNaseか らRNAサンプルを守ることが出来ます。これら、RNaseの混入 を防ぐためのヒントはプロメガRNAガイド第1章をご覧下さい。 Total RNAかPoly(A)+ RNAか RNAはtotal RNAとしてもpoly(A)+ RNAとしても単離できます (3)。どちらの手法を用いることが最も実験者の要求に適うか、 という選択は単離したRNAをどのようなアプリケーションに用 いるかに大きく依存します。一般的なアプリケーションに対し てtotal RNAとpoly(A)+ RNAのどちらが適しているかの一般的な ガイドラインを表2-1に示します。 表2-1の情報はどちらのRNAを使うかを選択するための一般 的なガイドラインとなりますが、選択にはこうしたアプリケー ション以外の要因も考慮する必要があります。多くの場合、 poly(A)+ RNAを実験に用いることによって様々な利点がありま す。しかし、total RNAの方が望ましい場合や、poly(A)+ RNAの 単離に特殊な問題が起こりうる場合もあります。例えば、 poly(A)+ RNAの単離システムはバクテリアやウイルスのような 非ポリアデニル化RNAの単離には使えません。poly(A)+ RNA は mRNAの大部分を占めており、多くのアプリケーションでは poly(A)+ RNAが望ましいとされていますが、高速多検体処理が 要求される実験系ではtotal RNAを単離する方が解析しやすくな ります。最終的にはサンプルの特性、サンプルサイズや検体数 などを考慮した上で、total RNAかpoly(A)+RNAのどちらを単離 するべきか選択してください。 2 RNA Applications Guide 第2章 RNA精製 表2-1. 様々なアプリケーションにおけるtotal RNAとpoly(A)+ RNAの比較 (+++)推奨、(++)十分、(+)可能、(-)推奨しない RNA ノーザン RT-PCR ライブラリーの ヌクレアーゼ in vitro プライマー PTT ディファレンシャル レプリゼンテーション ブロッティング 構築 プロテクション 翻訳 エクステンション アッセイ ディスプレイ ディファレンシャル アッセイ 分析 total RNA ++ ++ + ++ - ++ +++ + + poly(A)+ RNA +++ +++ +++ +++ ++ +++ +++ +++ +++ RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ2 Chapter 2 RNA精製 3 Total RNAの単離(有機溶媒による抽出法) RNAgents® Total RNA Isolation System RNAgents® Total RNA Isolation Systemは液層抽出法に基づい た迅速な精製法です(4)。このシステムはサンプル中の内在性 RNaseを急速に失活させる強力な変性剤を用い、それに続く有 機溶媒による抽出と脱塩・濃縮の為のエタノール沈殿を組み合 わせています。RNAgents® System は培養細胞をはじめ組織、 血液、植物体と様々なサンプルからのtotal RNA抽出が可能です (4)。様々なサンプルからの標準的なRNAの収量を表2-2に示し ます。 表2-2. 様々な細胞・組織からRNAgents® System を用いて単離した total RNA の収量 サンプル Total RNAの収量 HeLa 細胞 1.6mg RNA/108 cells Human WBC細胞 1.3mg RNA/108 cells マウス腸 2.3mg RNA/g 組織 マウス脾臓 8.3mg RNA/g 組織 マウス肺 1.9mg RNA/g 組織 マウス肝臓 6.6mg RNA/g 組織 マウス腎臓 3.1mg RNA/g 組織 RNAgents® System は、自由にスケール調整ができ、単離したRNAを RT-PCRへ適用するための改良プロトコールでは、多数のサンプルを1時 間半以内に処理できます(4)。RNAgents® System で調製されたRNAは RT-PCRに加え、ノーザンブロット解析やcDNA合成、Poly(A)+ RNA 調製 用のサンプルなど、様々な用途にお使いいただけます。 表2-3. SV Total RNA Isolation Systemを用いて単離したTotal RNAの 収量 組織 / 開始 プレップ mg組織 A260/ A260/ 細胞株* サンプル量 あたりの あたりの A230 A280 収量 収量 肝臓 30mg 133µg 4.4µg 2.4 1.9 腎臓 20mg 46µg 2.3µg 2.1 1.9 心臓 60mg 16µg 0.3µg 1.8 2.1 脾臓 15mg 79µg 5.3µg 2.3 1.9 脳 60mg 39µg 0.7µg 2.1 2.1 肺 60mg 36µg 0.6µg 2.0 2.1 筋肉 30mg 22µg 0.7µg 1.8 2.1 RAW 5 x 106 51µg — 2.0 2.0 264.7 cells cells *心臓と肺はラット由来。その他の組織はマウス由来。マウスマクロファ ージ細胞株RAW264.7は、10% FCSと1mMピルビン酸を含むDulbecco’s modified Eagle’s medium中でコンフルエントになるまで成育した。あと の4つの列の値は平均値を示した。細胞株と脾臓サンプルはそれぞれ2個 と3個のサンプルの平均値で、その他のサンプルは最低でも6サンプルの 平均値を示した。 Total RNA の単離(スピンカラム法) SV Total RNA Isolation System∬ SV Total RNA Isolation System∬ は組織、培養細胞、白血球な どから簡単・迅速に完全なRNAを1時間以内に精製するシステ ムです(サンプル数にもよります:参考文献28, 図2-1)。Wizard® Plus SV Minipreps DNA Purification System∬(カタログ番号 A1330)と同じように吸引法でも遠心法でもお使いになれます。 サンプルの種類、目的のRNAの発現量や機能によりますが、1 回の精製に60mgまでのサンプルを処理できます。また、この システムではRT-PCRなどのDNA増幅を行う方法で問題となる ゲノムDNAの混入を最小限に留めるために、DNase処理のステ ップを組み込んでいます。この単離法ではフェノール/クロロホ ルム抽出やエタノール沈殿は不要であり、最終サンプルへの DNaseの持ち込みもありません。様々なサンプルからの標準的 なRNAの収量を表2-3に示します。 備考: 吸引法で精製される場合、Miniprep Vacuum Adaptor (カタログ番号 A1331) が 必要になります。別途お求めください。 ∬特許出願中 ホモジネート� (細胞磨砕)� ・希釈液�  (タンパク質の沈殿・分離)� ・エタノール� 遠心による溶出� 遠心により洗浄液を完全に除去� 上澄添加� 吸引による洗浄� DNase 処理� 吸引による洗浄� 上澄添加� 遠心による洗浄� DNase 処理� 遠心による洗浄� 遠心法� 吸引法� Vac-Man 図2-1. SV Total RNA Isolation System (カタログ番号Z3100)の概略図。 プロトコールの詳細については参考文献28をご覧ください。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ3 Poly(A)+ RNA の精製 RNAの解析に用いられる技術の多くにおいて、非選択的な RNA(Total RNA)を使用できますが、poly(A)+ RNAを使うことで より高い感度や特異性が得られます。Poly(A)+ RNAの精製では mRNAが濃縮されるだけではなく、cDNA合成やその他のRNA 解析の際にバックグラウンドとなる他の核酸分子が取り除かれ ます。 プロメガの PolyATtract® mRNA Isolation Systemシリーズは 迅速かつ効率的に、異なる細胞性RNAの混合物や混入したDNA からPoly(A)+ RNAを単離できます(5,6)。すべてのPolyATtract® Systemは迅速なmRNA単離に磁性体技術を応用し、ビオチンと ストレプトアビジンの強固な親和性を利用しています(図2-2)。 これらのシステムは有機溶媒による抽出や沈殿を必要としない ため、少量の開始サンプルからの高速多検体処理に最適です。 PolyATtract® System I~IVは単一のサンプルからtotal RNAと Poly(A)+ RNAの両方が必要な場合に便利ですが、Poly(A)+ RNA を調製する時には、Poly(A)+ RNAの単離に先だってtotal RNAを 単離する必要があります。それとは対照的に、PolyATtract® System 1000(6)は、前もってtotal RNAを単離する手間を省き、 様々な組織から直接Poly(A)+ RNAを単離できます。この単離シ ステムは極めて効率的であり、様々なサンプルサイズに対応で きます。ごく少量のスタート材料からPoly(A)+ RNAを単離する 場合、PolyATtract® System 1000を用いた組織/細胞からの直接 精製によって最大限の収量が期待できます ( 表 2-4 )。 PolyATtract® Systemの特長を表2-5に示します。 表 2-4. PolyATtract® System 1000によるmRNAの収量 組織 mRNA 収量(µg/g 組織) マウス 肺 100 マウス 肝臓 220 マウス 腎臓 330 NIH 3T3 細胞 200* *約6 x 108 個の細胞 プロメガの各RNA精製キットについては表2-5を参照ください。 図2-2 PolyATtract® mRNA Isolation Systemの概要 Total RNAサンプル、または破砕した組織・細胞中のRNAとビオチン化 オリゴ(dT)をハイブリダイズさせる。oligo(dT)はmRNAのpoly(A)テール にのみ結合する。ビオチンに結合する Streptavidin-Paramagnetic Particles(SA-PMPs)を加える。SA-PMPsを引き付けるために磁石を用い、 その結果mRNAを含む複合体が精製されます。Nuclease-Free Water を 加えることによってSA-PMPsからmRNAを分離する。 2本鎖RNAの精製 多くのRNAウイルスはライフサイクルの中で、2本鎖RNA状 態をとる時期があります。健康体の植物、動物や真菌類の細胞 には2本鎖(double-stranded; ds)RNAはほとんど含まれません。 そのため、dsRNAの存在はウイルス感染の診断に用いられます。 dsRNAは哺乳動物細胞内におけるウイルスの防御機構の活性化 に関与することが知られています(7)。dsRNAの精製と解析は ウイルス学にとって重要なツールとなります(8,9)。 多くの場合、最初にインタクトなウイルス粒子を精製し、そ こから核酸を抽出する手法が最も簡便なdsRNAの単離方法です (10)。dsRNAはヒドロキシアパタイト(10,13)やCF-11セルロー ス(11,12)への特異的な吸着、またはフェノールを用いての differential extraction(14)、種々のヌクレア-ゼに対する感受性 の違い等を利用して組織から精製できます(12)。1本鎖 RNA(single-stranded RNA; ssRNA)からdsRNAを分離する最も 一般的な方法はCF-11セルロースへの吸着を利用したものです。 まず全ての核酸を精製した後、エタノール存在下でdsRNAを CF-11セルロースへ吸着させます。洗浄の後、dsRNAはCF-11 セルロースからエタノール不含のバッファーにより溶出されま す(15,16)。ssRNAのみを切断する条件でDNaseおよびRNaseで 処理することで、より高い精製度が求められます。高塩濃度 (0.3M NaCl)下ではDNase Iと RNase AはDNA とssRNAを分解 しますが dsRNAは分解されません。低塩濃度下では全ての核 酸が分解されてしまいます (8)。ヌクレアーゼを用いた Differential digestionはDNAとssRNAの混入物からの精製に、ま たdsRNA本体の確認のために利用できます。 磁� 石� 磁� 石� mRNA画分を含むtotal RNA ビオチン化Oligo(dT)� プローブとの相補鎖結合� AAAAAAA3´ 5´ B–TTTTTTT3´ 5´ m7G ストレブトアビジンコート磁性体ビーズ� AAAAAAA3´ 3´ TTTTTTT–B5´ 5´ m7G 磁力によるビーズ結合体の回収� AAAAAAA3´ TTTTTTT–B 5´ m7G 洗浄ならびに溶出� AAAAAAA3´ TTTTTTT–B 5´ m7G (水相)� (固相)� 5´ m7G AAAAAAA3´ TTTTTTT–B 磁� 石� 磁� 石� 4 RNA Applications Guide RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ4 5 mRNA特異的な定量 Poly(A) mRNA Detection System Poly(A) mRNA Detection Systemは、高感度なmRNAの特異的 検出のためにデザインされたルシフェラーゼベースの検出キッ トです。検出は、目的サンプル中に存在するmRNA濃度の評価 を可能にする一連のハイブリダイゼーションと酵素反応による 発光シグナルに基づきます。このシステムはmRNAに特異的で、 rRNAまたはtRNAではほとんどシグナルを生じません。このシ ステムの検出限界は400pg mRNA (例:40pg/µlのmRNA溶液、 10µlを反応に添加) です。 このキットを用いた検出には、次のハイブリダイゼーション と酵素反応が含まれます。 1. アンカーオリゴ(dT)プライマーをmRNA poly(A)テールにハイ ブリダイズ 2. ハイブリダイズ完了後、mRNAの量に応じてATPを生成する 2つの異なる酵素反応が進行 3. ルシフェラーゼ / ルシフェリン反応を用いて合成されたATP 量に応じて光シグナルを生成 4. 合成したATP量をスタンダードmRNAと比較し、サンプル中 のmRNA量を推定 特長 高感度: UVを用いた分光光度計やゲル解析よりも優れた感度 を示します。ピコグラム (pg) からナノグラム (ng) オ ーダーのmRNAの特異的検出が可能 特異性: mRNAを検出。rRNAやtRNAのシグナルはほとんどな く、total RNAサンプルからのmRNAの検出が可能 直線性: 50倍の濃度まで直線性を示します。 効率的: 検出のために必要なmRNAサンプルの量が少量で済 みます。 このテクノロジーでは、2本鎖DNA(dsDNA)とDNA:RNAハ イブリッドのDNA鎖を脱重合するDNA Polymerase Iのピロリン 酸化機能を利用しています。 RNAサンプル中のpoly(A) mRNAを特異的なターゲットとする ために、アンカーオリゴ(dT)プライマーをmRNA poly(A) テー ルにハイブリダイズします。オリゴ(dT)プライマーは、3’末端 に1つのデオキシグアノシン、またはデオキシシチジン、デオ キシアデノシンを持つ18merのオリゴヌクレオチドです。3’末 端のこの塩基はpoly(A)テールの最初の位置にオリゴヌクレオチ ドを導き、アンカーさせ、正しくアンカーしたオリゴ(dT)プラ イマーのみがピロリン酸化されるようにします。既知量の mRNAを含むスタンダードmRNAの反応で合成された光のユニ ット数と比べることでサンプル中に含まれる未知量のRNAを定 量することができます。精製した1.2kb合成カナマイシン転写 産物がmRNAスタンダードとして提供されます。 Chapter 2 RNA精製 a Patent Pending. N/A = Not Applicable. 精製 カタログ プロトコル RNA 製品名 番号 番号 所要時間 サイズ サンプル処理量 収 量 特 長 SV Total RNA Z3100 TM048 1時間 50回分 1回あたり(最大) 0.27~5.3µg/mg • 迅速, 高収量, フェノール不要 Isolation Systema 組織:30mg 組織 • 少量サンプルに最適 細胞:5×106 個 • 吸引と遠心を選択可能 血液:100µl~1ml • 血液・動物/植物組織・細胞・ 細菌・酵母を処理 ※吸引の場合、Miniprep Vacuum Adaptors SV Total RNA Isolation Z3101 TM048 1時間 10回分 (カタログ番号A1331)が System, Trial Sizea 必要です。 RNAgents® Total RNA Z5110 TB087 2.5~3時間 可変 1キットあたり(最大) 1.3~8.3µg/mg • 高収量, 低コスト Isolation System (標準 組織:6g 組織 • グアニジン, フェノール方式 プロトコル) 細胞:6×108 個 (フェノールはキットに含まれ 1.5時間 ます。) (短縮 プロトコル) PolyATtract® mRNA Z5200 TM021 30分 ラージ 1キットあたり Total RNAの • 迅速, フェノール不要 Isolation System II スケール 1~1mg 1~2% • Total RNAからmRNAを単離 (with Magnetic Stand) Total RNA×3回 PolyATtract® mRNA Z5210 TM021 30分 Z5200の Isolation System I 試薬のみ (without Magnetic Stand) PolyATtract® mRNA Z5300 TM021 30分 スモール 1キットあたり Total RNAの • 迅速, フェノール不要 Isolation System III スケール 100µg~1mg 1~2% • Total RNAからmRNAを単離 (with Magnetic Stand) Total RNA×15回 PolyATtract® mRNA Z5310 TM021 30分 Z5300の Isolation System IV 試薬のみ (without Magnetic Stand) PolyATtract® System 1000 Z5420 TM228 45分 2~50回以上 1回あたり 70~200ng • 迅速, フェノール不要 (with Magnetic Stand) 組織:5mg~2×1g mRNA/mg組織 • 組織, 細胞から直接mRNAを単離 PolyATtract® System 1000 Z5400 TM228 45分 Z5420の 細胞:106 ~108 個 (without Magnetic Stand) 試薬のみ 血液:10µl~10ml Total RNA mRNA (Total RNAサンプル用) mRNA (組織・細胞サンプル用) 表2-5. 各RNA精製システムの特長 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ5 6 RNA Applications Guide RNA単離の成否は組織/細胞を効率良く破砕すること、内在性の RNaseの迅速な不活性化、DNAやタンパク質の除去など、様々な要 因が関与しています。内在性RNaseの不活性化の他に、サンプルの 調製や精製の過程でRNase活性を持ち込まないということも、最も 重要な要因のひとつです。ここでは、より確実なRNAの解析や保存、 精製の為のアドバイスについて述べています。 RNase-フリーの環境を作る - RNase-フリーの環境はインタクト なRNAを単離するために極めて重要です。RNA単離をはじめる前に、 RNA分解の対策について紹介している第1章『RNaseから大切なRNA を守る』をお読みください。また、合わせて(7)もご覧ください。 RNA 抽出前のサンプルの処理と保存方法 - 多くの細胞や組織は簡 単な破砕操作で処理できます。しかし筋肉や結合組織を大量に含む ような組織では効率良くRNaseを阻害、不活性化するために、細か く切り刻んだりすり潰したりといった操作が必要になります。でき るだけ迅速にサンプルを破砕することは、内在性のRNaseを急速に 不活性化するために重要です。速やかに組織を処理することが困難 な場合、変性剤を含むバッファー中でサンプルを処理し、RNA抽出 が終了するまでは可能な限り-70℃に保つようにしてください。代わ りの方法として、抽出前に液体窒素で凍結させておくこともできま す。 取り扱いに注意が必要な組織からのRNA単離 - 開始サンプルの種類 によってRNAの単離が難しい場合があります。RNase活性が特に高 い組織、脂質やグリコーゲンを大量に含むような組織等では特に問 題となります。プロメガのRNA精製システムでは、こうした組織か ら最大限の収量を得るために、一部を改良したプロトコールを紹介 しています(18-21)。 RNAサンプルの沈殿 - RNAは精製と濃縮のために沈殿させます (22,23)。少量のサンプルや希釈したRNAを沈殿させるときに、 RNase-フリーのグリコーゲンなどをキャリアーとして使うと、収量 の増加が見込めます。グリコーゲンは核酸を基質とした反応に影響 を及ぼさないので、核酸分子をキャリアーとして用いた際のバック グランドを除くことができます。さらにRNAの沈殿量の増加とグリ コーゲンによる沈殿物の体積増加によって、ペレットを目視で確認 することもできます。またサンプル溶液に等量の5M酢酸アンモニウ ムを加え、20分間氷上でインキュベートすることによりRNAは選択 的に沈殿するので、DNAと分離することができます。 Poly(A)+ RNA の選別 - Poly(A)+ RNAの使用により、後のアプリケ ーションでさまざまな利点が得られます。例えばノーザンブロット では高いシグナル/ノイズ比が得られます。またcDNA 合成やRT-PCR ではmRNA非依存的な合成を抑制することができます。しかし、total RNAの単離が望まれる場合や、目的のPoly(A)+ RNA 固有の問題 (poly(A)テールが短いなど)によって精製できない場合があります。 非常に少量のtotal RNA からのpoly(A)+ RNAの精製も技術的に難しい 問題です。限れられた量のサンプルからのpoly(A)+ RNAの精製は PolyATtract® System 1000(6)を用いたダイレクト精製により十分な収 量をあげることができます。 Poly(A)+ RNA単離手法の比較 - 核内で修飾される新生RNAに付加 されるポリアデニル酸テールは、細胞性RNAやDNAの混合物からの poly(A)+ mRNA の精製に利用されます。この精製はpoly(A)配列に poly(dT)をアニーリングさせ、支持体に吸着させる事によって行われ ます。Poly(A)+ RNA を捕らえるためには、バッチ法、oligo(dT)セル ロースを用いたカラムクロマトグラフィー、磁性体による吸着の3つ の主要な手法があります。従来から行われてきたバッチ法には、支 持体中のボイド容量が大きいという難点があります。その結果、非 ポリアデニル化RNA の除去効率が悪くなったり、支持体からの液量 が多いため溶出の際にサンプルが希釈されてしまうことになります。 カラムクロマトグラフィーでは時間がかかり、こちらの方法でも溶 出液量が増えてしまいます。プロメガのPolyATtract® Systemは迅速 なmRNA精製のために磁性体技術を応用し、ビオチンとストレプト アビジンの強固な親和性を利用しています(図2-2)。この手法は極め て効率的であり、どのようなスケールにも対応できます。 Total RNAからのPoly(A)+ RNAの収量 - total RNAにはmRNA、 rRNA、tRNAが含まれています。Poly(A)+ RNAはtotal RNAのおよそ 1%であり、精製後のサンプルは極めて少量となります。そのため精 製の操作中やその後の実験の過程ではRNaseを混入させないよう、 細心の注意が必要です。 精製したRNAの保存 - RNAは専用のコンテナを使用し、-80℃で保 存してください。使いやすい分量に分注し、凍結融解を数多く繰り返 さないようにし、大量のサンプルを一度で汚染させてしまう危険を避 けてください。長期の保存または貴重なサンプルを保存する際には、 分注しておいたRNAサンプルに1/10容量の3M酢酸ナトリウムと2倍量 のエタノールを加え、沈殿したまま-80℃で保存してください。 RNAの純度 - RNAの純度を評価するために頻用されるアッセイ法は 260nm と280nmの吸光度比です。分子生物学の一般的な実験書では 260/280の比が1.8~2.0にあるとき、タンパク質の混入が極めて少な いRNAサンプルであると記述されています。この方法は簡便であり、 十分に目的に適った方法である一方で、計測方法に潜在的な限界が あることに注意しなくてはなりません(24)。一般に核酸精製にはフェ ノールやEDTAのような多くの化合物が使用され、こうした化合物の 中には、その後に続く実験を阻害するものが含まれています。これ ら化合物のコンタミネーションは吸光度260nmと240nmの比で計測 されます(私信、25)。吸光度比は1.8以上にするべきです。一方、 A260/A280の吸光度比が1.0程度またはそれ以下のときには、RNA の精 製に頻繁に用いられるフェノールやEDTAの混入が考えられます。 インタクトな RNA - 細胞性RNAが分解されていないかどうか、変 性ゲル電気泳動で確認します。数種類の変性剤がありますが、グリ オキサルとホルムアルデヒドが最も広く使われています。グリオキ サルゲルは毒性も低く、扱いやすいのですが、ホルムアルデヒドゲ ルの方がノーザンブロット解析等で感度が高いと報告されています。 一般的には1~10µgのtotal RNAまたは0.1µgのPoly(A)+ RNAを1レーン で分離できます。泳動後にはエチジウムブロマイドで染色し、観察 できます。サンプルは0.1mg/mlエチジウムブロマイド色素で染色し ます。染色には泳動後に染める方法、加熱融解させたゲルに加える 方法、泳動前に直接サンプルに加える方法があります。プロメガで は泳動前に直接サンプルに加える方法を推奨します。この方法は最 も感度が高く、バックグランドも低くおさえられます。total RNA が 完全であるかどうかは、リボゾームRNAのシャープなバンドによっ て確かめられます。Totalまたは poly(A)+ RNA が分解されていないか どうかは、アガロースゲルを泳動した後、メンブレンに転写して放 射性同位元素で標識したプローブによって確かめることもできます (26)。 Poly(A)+ RNAのモル濃度の決定 - サンプル中のPoly(A)+ RNAのモル 濃度を決定する手法が(27)で紹介されています。この技術では poly(A)ポリメラーゼによって放射性同位元素をRNAの3’側末端に取 り込ませています。取り込まれた標識体は12~18塩基のoligo(dT)の 存在下でRNase Hの作用により、選択的に除去されます。この反応 はRNase H が、oligo(dT)とハイブリダイズすることによって形成さ れたDNA-RNA ハイブリッド鎖上のRNA鎖のみを分解する性質を利 用しています。 ヒント RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ6 7 Q.サンプルから取れるRNAの量はどのくらい? RNA精製は難しく十分な収量がえられないこともあり、RNA の精製度や収量を前もって予測しなければならない場合があり ます。収量の予測のための最初のポイントは、生物自体に関す るものです。細胞中に存在するRNA量は、検体の種類やその検 体の代謝活性によって左右されます。従って、サンプルの質が RNAの収量の評価に影響すると考えます。サンプル処理の工程、 細胞破砕または溶解後直ちにヌクレアーゼを不活性化すること が、効率的なRNAの精製方法のポイントになります。表2-6に 様々なサンプルからどのくらいのRNAの収量が得られるかの目 安を示します。 表2-6. 組織と培養細胞からのTotal RNA と mRNA の予想収量 Total RNA mRNA 有機溶媒を利用した 磁性体を利用し直接、 組織 抽出方法 培養細胞または破砕 (RNAgents® Total された組織からの抽出 RNA Isolation System) (PolyATtract® System 1000) マウス 肝臓 6.6 mg/g組織 220µg/g マウス 腎臓 3.1mg/g組織 328µg/g マウス 肺 1.9mg/g 組織 100µg/g マウス 脾臓 8.3mg/g組織 72µg/g マウス 小腸 2.3mg/g組織 NA (実験データなし) ヒト 白血球 1.3mg/108 cells NA HeLa細胞 1.6mg/108 cells NA マウス 膵臓 NA 370µg/g NIH 3T3細胞 NA 200µg/g (約6×108 cells) SV Total RNA Isolation System Q.SV Total RNA Isolation Systemには従来のRNAの分 離方法と比べてどのような利点がありますか? SV Total RNA Isolation Systemには以下の利点があります。 ● 高収量のTotal RNAが得られます(表2-3を参照) ● 手順が迅速・簡単です ● 遠心法と吸引法の選択ができます ● 組織、細胞、全血など様々なサンプルからtotal RNAを分離 できます ● Spin Column AssemblyとSterile Elution Tubeが便利な個別 のパッケージ入りです Q.SV Total RNA Isolation Systemを使うと、RNAの収 量はどれくらいですか。また様々な組織から精製さ れたTotal RNAの純度はどれくらいですか? 表2-3に示されている値は、プロメガで得られた結果の平均で す。収量は組織の種類や動物の代謝の状態によって異なります。 精製されたRNAは、RT-PCRやノーザンブロッティングを含む 通常の分子生物学のアプリケーションに使用できます。 Q.精製したRNAにゲノムDNAの混入はありますか? 開始のサンプル量がプロメガの推奨する量を超過していなけ れば、DNase I処理の手順によりゲノムDNAのキャリーオバー (混入)は最小限にとどめられます。このシステムを使って精 製されたtotal RNAを50ng用いてRT-PCRを行ったとき、ゲノム DNAは検出されませんでした(図2-2)。 SV Total RNA Isolation Systemを使って、表2-3に示された推 奨するサンプル量を超過した場合、ゲノムDNAが混入する可能 性があります。精製したRNA中へのゲノムDNAの混入が懸念さ れる場合は、単離したRNAをRQ1 RNase-Free DNase(カタロ グ番号:M6101)で処理した後、フェノール/クロロホルム抽出 とエタノール沈殿を行うとゲノムDNAを除去できます。 図2-2. RT-PCR による混入ゲノム DNA の比較 Total RNA はプロメガ及び他社製品を用いて、マウス肝臓30mgから単離 し、イントロンを挟む IL-1βプライマーで RT-PCR を行った。ゲノム DNA の混入があると目的バンド(401bp)の他に1,123bpのバンドが観察 されます。 Q. SV Total RNA Isolation Systemを植物組織、バクテ リア、または酵母からのRNA単離に使うことはでき ますか? SV Total RNA Isolation Systemを使って、タバコやトマト、 シロイヌナズナの葉からのRNA単離に成功しています。グラム 陽性菌やグラム陰性菌からのRNAの単離にもご利用いただけま す。また、少し修飾したプロトコルを用いると酵母からRNAを 単離することもできます。これらのアプリケーションに関する 詳しいプロトコルは下記のサイトでご覧いただけます。 Q.プロトコルで薦めている容量より少ない容量で溶出で きますか? お奨めしている溶出液量は50µl以上となっています。25µlの 滅菌水で溶出した場合は、RNAの収量が減少します(表2-7参 照)。より濃度の高いRNAサンプルが必要な場合は、SpeedVac®でRNAを乾燥し、希望する容量になるよう溶かします。 表2-7. 様々な溶出容量ごとのRNAの収量の例 溶出液量 Total RNA の収量 A260/A230 A260/A280 (µl) (µg) 25 101.4 2.25 2.01 50 136.9 2.33 1.95 100 137.9 2.39 1.85 200 141.0 2.43 1.75 (2 x 100) 200 131.0 2.44 1.73 列2~4の値は2サンプルの平均値 Chapter 2 RNA精製 M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 C bp –1,123 – 401 bp 1,500 – 1,000 – 700 – 500 – 300 – 100 – プロメガ 他社 Q&A RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ7 Q. SV Total RNA Isolation SystemをゲノムDNAの単離 に用いることはできますか? SV Total RNA Isolation Systemは、スタンダード・プロトコ ルからDNase処理の手順を省くだけでゲノムDNAの精製に使う ことができます。このシステムでは1mlの血液から0.75~1.5µg のDNAが得られ、増幅反応に使うことができます。また、RNA もいっしょに精製されます(Promega Notes 69参照)。 Q.RNAの収量と純度はどのように数値化したらいいの ですか? 十分なRNAがある場合は、total RNAの収量を260nm(A260)の 波長に設定した分光光度計で測定できます。吸光度1ユニット は1mlあたり40µgの一本鎖RNAに相当します。 純粋なRNAは、A260/A280の吸光度の比率が2.0を示します。 A260/A230の比率からもサンプルの純度がわかります。A260/A230が 2.0よりも小さい場合は、Lysis Buffer中のグアニジンチオシア ネ-トまたはβ-メルカプトエタノールが残っていることを示し ます。その場合、RNAを酢酸塩とエタノール(RNase-free)で沈 殿させます。 Q.プロメガではTotal RNAの精製用に、RNAgents® Total RNA Isolation SystemとSV Total RNA Isolation Systemを販売しています。RNAの精製法 はどのように選んだらいいのですか? どちらのRNA精製システムでも、RT-PCRや、cDNAライブラ リーの構築、ノーザンブロッティングなど、様々な精製後のア プリケーションにお使いいただけるRNAが得られます。 SV Total RNA Isolation Systemは、少量のサンプルから迅速 にRNAを精製するカラムベースのシステム(遠心法または吸引 法による)です(表2-5参照)。このシステムは、フェノール/クロ ロホルムによる抽出や塩/エタノールによる沈殿を必要としませ ん。DNase I 処理が精製手順に組み込まれているので、RNAへ のゲノムDNAの混入がほとんどありません。 RNAgent® Total RNA Isolation Systemは、グアニジンと酸性 フェノールベースのシステムで最大6gの組織からのRNA精製に 使用できます(4)。このシステムには2つのプロトコルがあり、 スタンダードプロトコルでは約2.5~3時間、簡易プロトコル (RT-PCRで使用するRNA用に簡略化されています)では90分か かります。 PolyATtract® mRNA Isolation Systems Q:PolyATtract® System 1000 はどのように機能します か? サンプルをグアニジンチオシアネートバッファーおよびβ-メ ルカプトエタノールでホモジナイズし、Biotinylated Oligo(dT) Probeを加えmRNAとアニールさせます。細胞残渣とタンパク 質を遠心により除去すると、溶液中にはプローブとmRNAのハ イブリッドが留まります。MagneSphere ® Streptavidin Paramagnetic Particlesで捕獲した Biotinylated Oligo(dT) Probe とmRNAとのハイブリッドはMagnetic Separation Standで捉え られ、ハイブリダイズしないRNAは洗浄除去されます。 組織、 培養細胞から高品質のmRNAを30分以内に単離することがでで きます。 Q:PolyATtract® mRNA Isolation Systemで得られた mRNAの収量が低い場合に考えられる原因とは? mRNAの収量はスタート時のtotal RNAサンプルの質や PolyATtract® mRNA Isolation System操作中におけるサンプルの 取扱い方など様々な要因が影響します。 多くの問題点の例として… 1) スタート時のtotal RNAサンプルがインタクト(濃度が既知 であり、しかも良質)であることが重要です。 A)サンプルはアガロースゲルに泳動してエチジウムブロマ イドで染色し、RNAのバンドが明確でスメアリングを起 こしていないことを確認するべきです。また、上部 (28S) のリボゾームRNAバンドは下部 (18S)のものより約2倍の 強度が見とめられるべきです。スメアリングが起こって いたり、リボゾームRNAが観察されない場合、RNaseが 混入していることを示しています。RNaseの混入が見と められた場合は再度RNAを単離してください。 B)サンプルをアガロースゲルに泳動し、エチジウムブロマ イド染色で強度を見るときには既知濃度のサンプルと比 較することが理想的です。サンプルにDNAが混入してい る場合、RNA濃度を260nm (A260) での吸光度測定だけで 判断すると、過大に見積もる可能性があります。RQ1 RNase-Free DNase (カタログ番号 M6101)で処理するこ とによりDNA混入サンプルからDNAを除去することがで きます。 C)分光測定による分析の場合、A260/A280 比は1.7~2.0となる べきです。この比率が低い場合には通常タンパク質の混 入が、反対に高い場合はグアニジンチオシアネートやβメルカプトエタノール(Total RNA抽出方法にこれらが使 用されている場合)の残存が原因になっています。調製 したRNAにタンパク質が混入している場合、フェノール: クロロホルム:イソアミルアルコールで再抽出してくださ い。その他の夾雑物はエタノール沈殿で除去できます。 2) サンプル中でのBiotinylated Oligo(dT) ProbeとmRNAのハイ ブリダイゼーションは温度と塩濃度 (SSC) に依存します。 A)プローブの捕獲前にアニーリング反応の温度を充分に下 げないと、収量が下がる可能性があります。これは特に 暖かい実験室でしばしば問題になります。Biotinylated Oligo(dT) ProbeとmRNAのアニーリング反応は室温 (22 ~25℃) になるまで充分に時間をかける必要があります。 B)もしも、アニーリング反応でSSCが含まれないか、また は0.5Xおよび0.1XのSSC洗浄液が不適切に調製されてい る場合、mRNAはハイブリダイズしないか、またはハイ 8 RNA Applications Guide RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ8 Chapter 2 RNA精製 9 ブリッドが十分形成されず融解してしまいます。この場 合、保存していた上澄み(最初の粒子を捕獲するステッ プからの)に SSCを加えた後、 MagneSphere ® Streptavidin Paramagnetic Particleペレットに加え、適切 な濃度のSSCで洗浄を繰返すことでmRNAを回収するこ とができます。 C)もしも最後の洗浄後、チューブに塩が多く残っている場 合は、mRNAがBiotinylated Oligo(dT) ProbeとmRNAとの ハイブリッドから効率的に溶出されていない可能性があ ります。その場合はNuclease-Free Waterで再度溶出する ことによりBiotinylated Oligo(dT) Probe – mRNAハイブリ ッドからmRNAが得られることがあります。 Q:PolyATtract® mRNA Isolation Systemに使用されて いるMagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particleのサイズおよび結合容量は? MagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particleは直径の平 均が0.5µmの不規則な球体で、表面積は100~150mm2 /mgです。 粒子の結合容量はmg粒子あたり0.75~1.25nmol Biotinylated Oligo(dT) Probeで、濃度1mg/mlで供給されます。 Q: Biotinylated Oligo(dT) Primerの長さは? Biotinylated Oligo(dT) Probeの長さは25merで18個の炭素原 子(スペーサーアーム)を挟んでビオチンが共有結合していま す。 Q:PolyATtract® SystemsのMagnetic Separation Standの代わりにどんなマグネットでも使用できます か ? または MagneSphere ® Streptavidin Paramagnetic Particleを遠心することはできます か? Magnetic Separation Standはネオジム-コバルトでできた強 力な希土類磁石です。このシステムで使用するマグネットは、 チューブの側面にMagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particle全てを引きつけるだけの強さが必要です。通常の磁石は、 サンプルから粒子を部分的に引きつけるかもしれませんが、す べてを引きつけることはできないので、代用品として使用でき ません。サンプルの遠心は粒子が凝集する原因となり、充分な mRNAの収量は期待できません。さらに、夾雑物が粒子ととも に沈殿することがあるため、サンプルの遠心は行わないでくだ さい。 Q:MagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particle は再利用できますか? MagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particleは使用前、 30分以内に洗浄し、再懸濁しなければなりません。保存バッフ ァーにはこの粒子を安定化させるために必要なBSAが含まれて おり、粒子を洗浄することにより除去します。MagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particleは洗浄して再利用すること はできません。 Q:Biotinylated Oligo(dT) Probe とMagneSphere® Streptavidin Paramagnetic Particleとの結合はSDS によって影響されますか? はい, SDSの存在はストレプトアビジンとビオチンの相互作 用に影響をあたえます。5% SDS (テストされた最高の濃度)の 場合, 68% のBiotinylated Oligo(dT) Probe – mRNAハイブリッド サンプルしか回収されませんでした。 その他 Q:少量のRNAを正確に定量する限界とは? 1 ml以下のサンプルを測定するときにはセミミクロかミクロ セルキュベットを使用します。ミクロショートキュベット(高 さ25mm)では300-400µlのサンプルを測定することが出来ます が、測定機種により異なりますのでご注意下さい。分光光度計 の測定可能な最低容量は光線の通る位置により決まります。詳 細に関しては、光度計のマニュアルをご覧になるか、メーカー までお問い合わせ下さい。短い光路長による計測も可能ですが、 正しい数値を出すためには、ある濃度以上のmRNAが必要です。 キュベットの標準光路長は1cmです。サブ-ミクロセルでは10µl まで計測できるものがあります。それらのキュベットがご使用 の機種に適合しているか確認する必要があります。黒い遮光素 材で覆われているキュベットは低いS/N比を得ることが出来ま す。キュベットの窓は(研磨石英)で200 nm以下で使用出来る ことが条件です。ポリスチレンやアクリル製のキュベットは 230-280 nmでは使用できないので適しません。 計測値が0.02から0.1の場合、一般的に誤差が多く数値の信頼 度が低くなりますので注意して下さい(機種により異なりま す)。1.0 A260ユニットは1本鎖RNAで40µgに相当します。従っ て、正確な測定が必要な場合、濃度が4.0µg/ml 以上のRNA溶液 の測定を推奨します。 Q:mRNAを正確に定量するには? cDNA合成やRT-PCRを行う前、またはDNAチップ用のcDNA プローブを合成する際にmRNAを正確に定量することは重要で す。プロメガのpoly(A) mRNA Detection System はrRNA、 tRNAが混在する中、mRNAのみを定量することができます。詳 細については5ページをご覧下さい。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ9 (PN:Promega Notesの略称。NN:Neural Notesの略称。 www.promega.com/pnotes www.promega.com/nnotes でご覧いただけます。 ( ) 内はページ RNAgents® Total RNA Isolation Kit PN029(5) :大腸菌からのRNA精製(ライソザイムを使用) PN036(17) :フェノール抽出の影響や短時間用に改良したプロ トコールの紹介 PN054(2) :トウモロコシの様々な組織(胚、小根、子葉鞘、 胚乳、葉)からの精製 PN055(10) :RT-PCR用の改良プロトコールの紹介、サンプル 量毎の収量データ、ノーザンブロットのデータ PN061(33) :Q&A、個々の構成試薬の役割の説明、改良点、ア プリケーション、使用できるサンプル、収量、開 始サンプル量、RT-PCRプロトコールなど PN062(11) :少量のヒト血液からのRT-PCR用のRNA精製 PolyATtract® mRNA Isolation Systems PN025(1) :全工程図、精製の原理、サンプルに対する収量の 値、精製したmRNAの純度、精製したmRNAの in vitro翻訳 PN033(6) :システム改善後の収量データなど PN056(27) :Q&A PN060(14) :動物組織・植物組織・動物細胞・Total RNAか らの精製、サンプル量毎の試薬使用量の一覧 PN075(10) :Biomek® 2000を用いた96ウェル対応の組織から のmRNA直接精製プロトコール、RT-PCRデータ、 品質データなど PolyATtract® System 1000 PN039(7) :マウス肝臓からの直接精製、マウス組織・培養細 胞からの精製データ、精製したmRNAからの cDNA合成 PN041(14) :酵母からのmRNA精製データ PN044(10) :タバコ葉・トウモロコシ葉からの収量データ PN054(2) :トウモロコシの胚・葉からの精製データ、ノーザ ンによる確認 PN060(14) :動物組織・植物組織・動物細胞・Total RNAか らの精製、サンプル量毎の試薬使用量の一覧 PN062(11) :少量のヒト血液からのRT-PCR用のRNA精製 NN012(20) :マウスおよびラット脳からのmRNA精製 Streptavidin MagneSphere® Paramagnetic Particles PN066(17) : PolyATtract ®システムで用いられている Paramagnetic Particlesの形状・性能・使用方法 などに関する説明 SV Total RNA Isolation Kit PN064(7) :精製プロセスの概要説明、ラットやマウス組織・ 培養細胞からの精製(収量と品質)、ヒト血液か らのTotal RNA精製 PN067(16) :Q&A、システムの概要、収量や純度、植物組織・ バクテリア・酵母からの精製など PN068(23) :ヒト血液(1-3ml)からの精製、抗凝血剤の影響 や血液の保存状況による影響を示すデータなど PN068(28) :植物の葉(トマト)、酵母(S. cerevisiae)、大腸 菌(E.coli)からの精製プロトコールと収量・純 度のデータ PN069(17) :脳組織からのRNA精製、精製産物のプロメガRTPCRプライマーを用いた確認 PN069(19) :ヒト全血からのゲノムDNAとRNAの同時精製、手 法の流れ図、ゲノムDNAとRNAの単離データ(マ ウス組織および血液)、ゲノムDNAとRNAの増幅 データ、in vitro翻訳、血漿からのHCVウィルスRNA の単離 PN071(2) :カキ幼生からのRNA精製プロトコールと収量・純 度のデータ NN012(20) :マウスおよびラット脳からのゲノムDNAの精製 10 RNA Applications Guide アプリケーション RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ10 Chapter 2 RNA精製 11 参考文献 1. Ausubel, F.M. et al. (1996) Current Protocols in Molecular Biology 2, John Wiley & Sons, New York, Chapter 4. 2. Chirgwin, J.M. et al. (1979) Biochemistry 18, 5294. 3. Aviv, H. and Leder, P. (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 1408. 4. RNAgents® Total RNA Isolation System Technical Manual #TM021, Promega Corporation. 5. PolyATtract® mRNA Isolation System Technical Manual #TM228, Promega Corporation. 6. PolyATtract® System 1000 Technical Manual #TM228, Promega Corporation. 7. Groskreutz, D. and Schenborn, E. (1995) Promega Notes 48, 8. 8. Dodds, J.A., Morris, T.J. and Jordan, R.L. (1984) Ann. Rev. Phytopathol. 22, 151. 9. Matthews, R.E.F. (1991) Plant Virol., 3rd Edition, Academic Press, San Diego. 10. Santos, N. and Gouvea, V. (1994) J. Vir. Meth. 46, 11. 11. Franklin, R.M. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 55, 1504. 12. Choi, G. and Randles, J. (1996) Biotechniques 23, 610. 13. Ausbel, F.M. et al. 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SV Total RNA Isolation System Technical Manual #TM048, Promega Corporation. 製品案内 Total RNA精製 (スピンカラムタイプ) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) SV Total RNA Isolation 50回分 Z3100 28,000 System SV Total RNA Isolation 10回分 Z3101 10,000 System, Trial Size Miniprep Vacuum Adaptor 20個 A1331 2,000 Total RNA精製 (液相分離タイプ) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) RNAgents® Total RNA 1システム Z5110 23,000 Isolation System mRNA精製 (Total RNAからの精製) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) PolyATtract® mRNA Isolation 1システム Z5200 26,000 System II with Magnetic Stand PolyATtract® mRNA Isolation 1システム Z5210 21,000 System I PolyATtract® mRNA Isolation 1システム Z5300 26,000 System III with MagneticStand PolyATtract® mRNA Isolation 1システム Z5310 21,000 System IV mRNA精製 (組織、細胞からのダイレクト精製) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) PolyATtract® System 1000 1システム Z5400 59,000 without Magnetic Stand PolyATtract® System 1000 1個 Z5410 15,000 Magnetic Separation Stand PolyATtract® System 1000 1システム Z5420 69,000 with Magnetic Stand mRNA定量システム 製品名 サイズ カタログ番号 定価(¥) Poly(A) mRNA Detection 100回分 K4040 35,000 System RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ11 第3章 in vitro 転写 12 RNA Applications Guide 表3-1. アプリケーション別プロメガin vitro転写システムの比較 転写システム アプリケーション Riboprobe® System RiboMAX™System メンブレン +++ + ハイブリダイゼ-ション RNaseプロテクション +++ + アッセイ in situ +++ + ハイブリダイゼーション ライブラリー +++ + スクリーニング 転写マッピング +++ + in vitro翻訳 +++ +++ 卵母細胞への注入 + +++ 哺乳類細胞への + +++ トランスフェクション リボザイムの産生 ++ +++ 低分子RNAの合成 ++ +++ キー: (+++) 推奨; (++) 十分に可能; (+) 可能 表3-2. プロメガin vitro 転写システムの特長の比較 目的 Riboprobe® System RiboMAX™ System 大量RNA生産 – +++ プローブ合成 RI標識 +++ – 非RI標識 +++ – バクテリオファージ プロモーター T7 +++ +++ SP6 +++ +++ T3 +++ +++ 転写産物のキャッピング1 +++ +++ 1 効率的な翻訳のために、一部の転写産物には5’末端にm7 G(5′)ppp(5′)G キャップの付加が必要です。in vitro合成反応時に、Ribo m7 G Cap Analog, 40mM (カタログ番号P1711, P1712)を加えることによりキ ャップの付加が行えます。 注意: 反応液中に存在するおそれがあるRNase活性を阻害するために、 プロメガではRNasin® Ribonuclease Inhibitorの添加を推奨しています。 キー: (+++) 推奨; (-) 推奨しない はじめに in vitro転写とは、in vivoでの転写系をin vitroで模倣する行程 で、精製された成分の存在下でRNAポリメラーゼにより鋳型 DNAからRNA転写産物が合成されます。in vitroで合成された RNAは、タンパク質のin vitro合成、ハイブリダイゼーション用 のRI標識したRNAプローブの産生や卵母細胞に注入するための RNA大量調製などの多くのアプリケーションに広く利用されま す(1-12)。 一般的な考慮事項 in vitroで産生されたRNA転写産物を多く得るためには、鋳型 として良質なDNAを使うことが必要不可欠です。エタノール沈 殿は鋳型となるDNAから塩や転写反応を阻害する混入物を除く ために有用です。RNA転写産物を生産するための鋳型として、 直鎖状およびスーパーコイルのどちらでも用いることができま す。スーパーコイル状のプラスミドを鋳型として使う場合や特 定部分の転写産物が必要な場合、ローリングサークル転写を起 こさないようにプラスミドにRNAポリメラーゼ終結シグナルを 組み込むことが必須です。ローリングサークル転写が起こった 場合、反応産物をゲル電気泳動で解析したときに、予想される RNA転写産物よりも大きなバンドとして確認されます。この問 題の解決には、平滑または5’突出末端を生成する制限酵素を用 いて鋳型を直鎖状にすることを推奨します。3’突出末端部位で RNAポリメラーゼは反転し、目的の転写産物に対して相補的な 転写を開始する可能性があるため3’突出末端を生成する制限酵 素で鋳型を直鎖状にすることは避けてください。 プロメガin vitro転写システム バクテリオファージのSP6、T7またはT3プロモーターを含ん でいる鋳型DNAから適当なRNAポリメラーゼ (SP6, T7または T3) を用いて転写を行った場合、µgからmg単位のRNAを産生 することができます。プロメガではさまざまなプロモーター領 域の組み合わせを持つクローニングベクターを販売していま す。これらのベクターは多様な研究アプリケーションに用いら れるRNA転写産物の合成に対応して設計されているので、 Riboprobe® SystemやRiboMAX™ RNA Transcription Systemと 組み合わせてお使いいただけます(表3-1)。表3-2ではこれら2種 類のキットの特長を比較します。 in vitro 転写(標識用) Riboprobe® in vitro Transcription System Riboprobe® Systemはin vitroにおける比活性の高い一本鎖 RNAプローブやµg単位 (5~10µg) の転写産物の調製用にデザイ ンされています(図3-1)。RI標識したRNAプローブを作成するた めに、RI標識されたrUTP、rCTPまたはrGTPを転写反応に組み 込みます。RI標識されたATPの使用は、組み込みキネティック スの効率が低いため推奨しません。rNTPは35S、32P、33Pまたは 3 Hで標識できます。複数の標識されたNTPを反応に用いること により、高い比活性をもつプローブが産生されますが、このプ ローブは自己崩壊が急速に起こるため、以降のアプリケーショ ンに影響を及ぼすことがあります。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ12 13 メンブレンハイブリダイゼーションでは効率的な反応のため に全長のプローブを必要としません。一方、転写マッピングの ようなアプリケーションでは全長のプローブを必要とします。 反応液中のrNTP量が12µMをきると、全長の転写産物が生成さ れにくくなります。標識ヌクレオチドの濃度が対応する非標識 ヌクレオチドで調整されていない場合、標識ヌクレオチドを最 終濃度が12~24µMとなるように増やすことをお薦めします。 この条件が満たされない場合、全長の転写産物を得ることは難 しくなります。 転写産物をRNaseプロテクションアッセイのプローブとして 使う場合、このプローブには300~500ntの長さと1~3× 108 cpm/µgの比活性が必要です。転写産物を合成するときには、 [α-32P]CTP(3,000Ci/mmol)のような比活性が高いrNTPを使って ください。解析時に転写産物を完全にプロテクションする全長 のプローブを使うことが重要なので、使用する前にプローブの ゲル精製を推奨します。プローブのゲル精製により、鋳型DNA からプローブを分離することで高いバックグラウンドを防ぐこ とができます。プローブのゲル精製に代わる方法として、プロ メガのRQ1 RNase-Free DNaseによる処理と、続けて行うフェ ノール抽出、エタノール沈殿によってハイブリダイゼーション のバックグラウンドを防ぐことができます。 図3-1. Ribroprobe® in vitro Transciption Systemの概略 pGEM Vector プラスミドを適切な制限 酵素で消化し、直鎖化� クローニングするDNA断片� ライゲーション、トランスフォーメーション、� コロニーの選択� インサートの調製� (制限酵素による消化)� ベクターの調製� 1.制限酵素による消化� 2.脱リン酸化� SP6 T7 RNA合成反応液(RNAポリメラーゼ rNTPなど)を加えてインキュベート� multiple cloning sites T7 SP6 pGEM recombinant ラン – オフ転写� RQ1 DNaseによる� 鋳型DNAの除去� 精製されたRNA 転写産物� PROGAM: Il COLORS: B& FONTS: Hel LINKED GRA OLD NAME( Riboprobe® in vitro Transcription Systemを使い、非RI標識の プローブも合成することができます。ビオチンまたはディゴキ シゲニン修飾された塩基を転写産物に取り込んだり、RNAの3′ 末端に付加することができます(13,14)。しかし、修飾された塩 基の取り込みにより収量は低下します。この手法の代わりに、 T4 RNA Ligaseで転写産物の3’末端にビオチンまたは蛍光標識 されたヌクレオチドを付加することができます(15)。また、 terminal deoxynucleotidyl transferase (TdT)を用いてディゴキシ ゲニンやビオチンをRNAの3’末端に付加できることが文献に紹 介されています(16)。 in vitro 転写(ラージスケール) RiboMAX™ Large Scale RNA Production System 卵母細胞への注入や哺乳類細胞へのトランスフェクションの ようなアプリケーションのために、大量のRNA転写産物が必要 とされる場合、Riboprobe® in vitro Transcription Systemよりも むしろRiboMAX™ Large Scale RNA Production Systemを使用 して転写反応を行います。RiboMAX™ Systemはmg単位 (2~ 6mg) の転写産物の調製用にデザインされています(17)。実際 の収量は鋳型の配列、転写産物の長さ、鋳型の精製度により変 動します。RiboMAX™ SystemはRNA転写産物を大量に調製す るため、高比活性プローブの生産には推奨しません。 RNAのキャッピング Ribo m7 G Cap Analog ほとんどの真核生物のRNAは5’末端にm7 G(5′)ppp(5′)G キャ ップ構造を持っています。このキャップ構造は、eIF4Eのよう な翻訳開始因子の結合、RNAのプロセシングや移行、細胞内ヌ クレアーゼからの保護において重要な役割を担っています。キ ャップを付加されたRNAはライセートやXenopusの卵母細胞を 使ったin vitro翻訳、マイクロインジェクション、核抽出物を使 ったin vitroスプライシングやプロセッシングに利用できます。 Ribo m7 G Cap Analog(カタログ番号P1711およびP1712)は、 5′ 7-methyl guanosine nucleotide(m7 G(5′)ppp(5′)G)です。これ は生体内におけるmRNAのキャップ構造形成のようにin vitro合 成されたRNAに組み込まれます。このキャップアナログはプロ メガのRiboprobe® SystemやRiboMAX™ Systemでお使いいただ けます(17,18)。 Chapter 3 in vitro 転写 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ13 転写産物のでき具合は、鋳型の性質、精製度、バッファー組 成、反応条件などの多くのパラメーターに依存します。in vitro 転写反応とそのRNA収量を最適化するためのコツとガイドライ ンを以下にご紹介します。 鋳型DNAの直鎖化:決まった長さのRNAを生産するために、通常鋳 型DNAをin vitro転写反応の前に直鎖化します。適当な制限酵素によ ってDNAを直鎖化し、続いて適したクリーンアップの手順を行いま す。精製した『直鎖状DNA』が実際、完全に直鎖化されているか、 また予想された大きさのDNA断片が存在しているか(分解されていな いか)を確かめるために、転写反応の前にアガロースやポリアクリル アミドゲル電気泳動により確認してください。ラン-オフ転写を行 う場合、目的よりも長い転写産物を産生することがあるので3’突出末 端を形成した直鎖状プラスミドを鋳型とすることは避けてください。 直鎖状プラスミドをKlenowで処理することにより3’突出末端を平滑 末端にすることができます。 一般的な転写産物の比活性:32P-CTPをRiboprobe® Systemで取り込 んだ場合の一般的な比活性は2~2.5×108 cpm/µg RNAです。 一般的なRNA収量:Riboprobe® Systemでの一般的な収量は5~10µg RNA/µgプラスミドDNAであり、RiboMAX™ Systemでの収量は2~ 6mg RNA/50~100µgプラスミドDNAです。 試薬の保存と用法:スペルミジンの存在下では4℃でDNAが沈殿す ることがあるので、試薬は室温で調製してください。また、RNAも スペルミジンの存在下で低温にした場合に沈殿することがあるので、 Transcription Buffer中にRNAを凍結保存しないでください。 コントロールの使用:試薬の機能チェックおよびコンタミネーショ ンの検定に備え、常にポジティブコントロールとネガティブコント ロールを行ってください。 鋳型DNAの除去:転写反応後、鋳型DNAを取り除くためにサンプル をRQ1 RNase-Free DNaseで処理してください。続いて、フェノー ル/クロロホルム抽出とエタノール沈殿で転写産物を精製してくださ い。 RNA転写産物の安定性:転写産物をトランスフェクションやインジ ェクションのようなアプリケーションに用いる場合、転写産物の安 定性は重要です。RNAの安定性を上げる転写産物のキャッピングは 転写反応時に行うことができます。SP6 RNAポリメラーゼを使う場 合、GTPの最終濃度1mMに対して5mMのキャップアナログを加えて ください。T7 RNAポリメラーゼを使う場合には、GTPの最終濃度 1.5mMに対して7.5mMのキャップアナログを加えてください。 転写産物ができているかをチェック:ゲルで転写産物ができている かをチェックするときは、RNAをホルムアミドのローディングバッ ファーで希釈し、ローディングの前に65℃で5分間加熱することによ り通常のアガロースゲルで変性ゲルと同様に確認することができま す。 転写産物のゲル解析:RNAラダーと比較した時に、予想と異なった サイズで転写産物が泳動された場合、エタノール沈殿により転写産 物を精製することで正しい移動度を示すことがあります。 転写産物の長さ:RiboMAX™ Systemを用いて最大14kbの転写産物 を作成することができます。しかし、通常このキットは5~6kbの転 写産物の合成に汎用されています。転写反応は37℃で2~4時間行い ます。反応条件の詳細はRiboMAX™ SystemのTechnical Manual (TB166)をご覧ください。 ポリメラーゼ効率の上昇:転写反応に0.05% Tween®-20を加えるこ とで、反応におけるポリメラーゼの効率が上がり、より多く転写産 物が得られることがあります。 Q. Riboprobe® とRiboMAX™ の違いは? Riboprobe® Systemは高い比活性標識産物(RI標識など)を 合成するためにデザインされています。RiboMAX™ Systemは 大量のRNAを合成するためのシステムで、in vitro 翻訳やマイク ロインジェクションなどに適していますが、高比活性標識産物 の合成には適しません。 Q. これらのシステムを使うには何が必要ですか? 適切なプロモーター(T7, T3, SP6など)を持つベクターに、 目的のDNA配列をクローニングしたものが必要です。プロメガ の2つのプロモーターを持つpGEM®ベクターが便利ですが、T7, T3, SP6プロモーターを持つベクターであれば使用できます。 コンストラクトを大腸菌で増やし、標準的な精製法に従いプラ スミドを精製します。あとはこの鋳型DNAを適切なRNAポリメ ラーゼやバッファー、rNTPを含む転写反応混合液に加えるだけ です。 Q.完全長の転写産物を得るにはどうすればいいですか? もしも、Riboprobe® Systemのプロトコルで完全長転写産物 が得られない場合、転写反応を室温で行うことで完全長転写産 物の合成される割合が増える可能性があります。RNAポリメラ ーゼの種類によってターミネーター配列が異なります。もし、 目的のDNA配列にターミネーター配列がある場合は、異なる RNAプロモーターを利用することで解決することができます。 また、rNTP濃度を上げることで完全長転写産物を合成できるか もしれませんが、合成したRNAプローブの比活性は低下してし まいます。 Q.合成したRNAはどのようなアプリケーションに使用 できますか? Riboprobe® Systemで合成したRNAプローブはサザンブロッ ティングやノーザンブロッティングに使用することができます (19,20)。特にサザンブロッティングでは、RNA:DNAハイブリ ッドがDNA:DNAハイブリッドよりも熱安定性が強いので、よ り厳しい条件で洗うことができ、S/N比を高くすることができ るため有用です。その他、プラークおよびコロニーリフティン グ(21)や組織切片のin situハイブリダイゼーション(22)、染 色体in situハイブリダイゼーション(23)に使用することがで きます。その他RNaseプロテクションアッセイなどの液相のハ イブリダイゼーションを必要とする様々なRNAマッピングにも 使用できます。 Q. in vitro転写反応でのRibo m7 G Cap Analogの取り込 み効率はどのくらいですか? Riboprobe® SystemやRiboMAX™ Systemを使い、標準的な反 応を行った場合、Ribo m7 G Cap Analogは60~70%の転写産物 に5′-ヌクレオチドとして取り込まれます。 14 RNA Applications Guide ヒント Q&A RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ14 15 Q.標準反応にRibo m7 G Cap Analogを加えることで収 量は減少しますか? キャップアナログの取り込みによってRNAの収量は標準反応に対し て20~50%減少します。14kb以上を目的としたin vitro転写反応では、 低い比率で転写されたり、予想よりも小さなサイズの転写産物が得ら れます。これはrGTPが不足しているためと考えられます。このためプ ロメガではrGTPの濃度を上げるように推奨しています。転写反応の効 率とキャップ付加された転写産物の生成量の釣り合いをとるために、 キャップアナログ:rGTPの比率を10:1から1:1の範囲で変動させること ができます。伸長を促進するために反応温度を30℃まで下げることが できますが、この処置は転写産物の生成量には無関係です。 予想よりも転写産物が短い場合、転写開始が制限されています(律速 段階である可能性があります)。このような時には、インキュベーショ ン時間を延長する、RNA polymeraseの量を増やす、鋳型の濃度を上 げるなどの対処を行ってください。 Q.ライセートを使ったin vitro翻訳を行う場合、キャッ プ付加された転写産物はキャップ付加されていない 転写産物よりも効率的に翻訳されますか? Rabbit Reticulocyte Lysate(RRL)やWheat Germ Extract(WGE)で翻訳 反応を行う場合、効率的な翻訳のためにほとんどの転写産物でキャッ プ構造を必要としません(24,25,26)。キャップ付加されていないRNA でも翻訳反応に加える量を増やすことでタンパク質合成量はキャップ 付加されたRNAと同等になります(27)。 RRLでは最大刺激レベルより20mM上の濃度の KClにおいて、キャ ップ付加されていないRNAからのタンパク質合成に最適な条件を示し ます(28)。 RRLでの翻訳はmRNAのキャップ構造の存在に比較的影響されませ ん。しかし、一般的に知られているRNA結合タンパク質(hnRNP A1, La, hnRNP 1/PTB, p50)を加えることにより、RRLにおける翻訳にキャ ップ構造が必要となることをSvitkinらの研究グループは発見しました。 これらのタンパク質はキャップ付加されていないmRNAの翻訳を著し く阻害します。一方、キャップ付加されたRNAの翻訳には影響しませ ん(29)。著者らは細胞質に存在するこれらRNA結合タンパク質の機能 の一つとして、5’末端のキャップ構造を介した機構によりリボソーム の結合を促し、誤った翻訳開始点からの開始を妨げているのではない かと考えています。 RRLとWGEの翻訳キットでは、キャップ付加された転写産物の翻訳 効率が上がることもあります(17,25,26)。例えば、dihydrofolate reductaseのmRNAの翻訳をRRLで行った場合、キャップ付加された RNAがキャップ付加されていないRNAの4~8倍のタンパク質を発現す ることをRestoらは観察しました(30)。 Q.in vitro転写/翻訳反応(例えば、TNT® System反応)に cap analogを直接加えることができますか? 翻訳が著しく阻害されるため、キャップアナログをTNT® Systemを 使った反応に直接加えることはできません。また、翻訳反応の前に遊離 のキャップアナログを除かなければ、これらは翻訳反応を阻害します。 Q.プロメガのin vitro 転写システムで2本鎖RNAを合成 することはできますか? できます。Alvaradoらの論文で、プロメガのT3 (カタログ番号 P2083)、T7 (カタログ番号P2075) RNA Polymerasesと、Riboprobe® System (カタログ番号P1420、P1430、P1440) を用いてdsRNAを合成 し、ディゴキシゲニン標識プローブを用いたin situハイブリダイゼー ションで内在性のmRNA転写産物の発現を検出する実験が行われてい ます(31,32)。 参考文献 1. Schenborn, E.T. (1995) Meth. Mol. Biol. 37, 1. 2. Krieg, P.A. and Melton, D.A. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 7057. 3. Melton, D.A. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 144. 4. Krainer, A.R. et al. (1984) Cell 36, 993. 5. Krieg, P.A. and Melton, D.A. (1984) Nature 308, 203. 6. Georgiev, O. et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 8539. 7. Nicole, L.M. and Tanguay, R.M. (1987) Biosci. Rep. 7, 239. 8. Witherell, G.W. et al. (1990) Biochemistry 29, 11051. 9. Turek, C. and Gold, L. (1990) Science 249, 505. 10. Kaplan, G.et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 8482. 11. Burgin, A.B. and Pace, N.R. (1990) EMBO J. 9, 4111. 12. Heus, H.A. et al. (1990) Nucl. Acids Res. 18, 1103. 13. Langer, P.R. et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, 6633. 14. Aigner, S. and Pette, D. (1990) Histochem. 95, 11. 15. Richardson, R.W., and Gumport, R.I. (1983) Nucl. Acids Res. 11, 6167. 16. Rosemeyer, V. et al. (1995) Anal. Biochem. 224, 446. 17. RiboMAX™ Large Scale RNA Production Systems Technical Bulletin #TB166, Promega Corporation. 18. Riboprobe® in vitro Transcription Systems Technical Manual #TM016, Promega Corporation. 19. Melton, D. et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 7035. 20. Srivastava, R.A.K. and Schonfeld, G. (1991) BioTechniques 11, 584. 21. Hanahan, D. (1983) J. Mol. Biol. 166, 577. 22. Jorgensen, E.M. and Garber, R.L. (1987) Promega Notes 10. 23. Matthaei, K.I. and Reed, K.C. (1986) Promega Notes 5. 24. Dasso, M.C. and Jackson, J. J. (1989) Nucl. Acids Res. 17,3129. 25. Rabbit Reticulocyte Lysate Systems Technical Manual #TM232, Promega Corporation. 26. Wheat Germ Extract Technical Manual #TM230, Promega Corporation. 27. Gurevich, V.V. et. al. (1991) Anal. Biochem, 195, 207. 28. Kozak, M. (1990) Nucl. Acids Res. 18, 2828. 29. Svitkin, Y.V. et al. (1996) EMBO J. 15, 7147. 30. Resto, E. et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20, 5979 31. Alvarado, A.S. and Newmark, P.A. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96,5049. 32. eNotes – Citations. 製品案内 in vitro 転写 (ラベリング用) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Riboprobe® System – SP6 1システム P1420 32,000 Riboprobe® System – T3 1システム P1430 32,000 Riboprobe® System – T7 1システム P1440 32,000 Riboprobe® Combination 1システム P1450 37,000 System – T3/T7 RNA Polymerase Riboprobe® Combination 1システム P1460 38,000 System – SP6/T7 RNA Polymerase in vitro 転写 (翻訳・大量合成 用) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) RiboMAX™ Large Scale RNA 1システム P1280 35,000 Production System – SP6 RiboMAX™ Large Scale RNA 1システム P1290 35,000 Production System – T3 RiboMAX™ Large Scale RNA 1システム P1300 35,000 Production System – T7 Ribo m7 G Cap Analog 10A254 P1711 24,000 units Ribo m7 G Cap Analog 25A254 P1712 45,000 units Chapter 3 in vitro 転写 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ15 図4-2. マウス肝臓由来のtotal RNAを鋳型とし、β-アクチンに特異的な プライマーを用いたコントロール反応。540bpのPCR産物を検出 表4-1.RT-PCRの反応条件 反応に影響を 考慮すべき点 推奨する条件 与える要因 RNA鋳型 鋳型からの 鋳型の精製にはRNAgents®、SV Total DNA、変性剤、RNA Isolation System、または 塩等の排除 PolyATtract® mRNA Isolation System を推奨します。 鋳型の完全性 鋳型が分解されていないことをホルム アルデヒド・ゲル電気泳動で確認して ください。Total RNAをご使用の際は 18Sと28Sの比率を確認してください。 鋳型の分解 RNasin® Ribonuclease inhibitorを加え てください。 1回の反応に必 Total RNA : 1pg~1µg 要なテンプレ Poly (A)+ RNA : 1~100ng ート量 DNAの混入 混入が予想される場合にはRQ1 RNase-Free DNase をお使い下さい。 プライマー 以降のアプリ オリゴ(dT)、ランダムヘキサマー、また ケーションに は遺伝子特異的プライマーを使い分けて 依存する 下さい。備考1をご覧ください。 濃度 50pmol~1µmol MgSO4 濃度 3.0µM~0.5mM dNTPs 濃度 通常200µM サイクル数 逆転写の温度 備考2をご覧ください。 と時間 PCR 備考3をご覧ください。 備考: 1. 3’側のプライマーは、全RNAに対応するプライマー(オリゴ(dT)および ランダムヘキサマー)よりも遺伝子特異的な配列を含むものを可能な 限りお使いください(図4-3)。ただしライブラリーの構築にはオリゴ (dT)およびランダムヘキサマーが適しています。特にランダムヘキサ マーは転写産物に沿っていくつもプライミングするので、2次構造を とり易い、長いmRNAをクローニングする場合に適しています。 2. AMVはMMLVに比べ、高温で効率よく逆転写反応が行われるため、 Access RT-PCR Systemでは48℃、45分間を目安として温度設定する ことをお薦めしています。Access RT-PCR Systemは、反応温度を最 高58℃まで上げることができます。高温での反応はRNAの2次構造に 起因する問題を最小限に抑えられるので、完全長のcDNA合成におい て非常に有効です(1~6)。逆転写反応に続き、RNA-cDNA ハイブリ ットを解離させ、AMV-RTを失活させるために94℃ 2分間の熱処理を お薦めします。AMV-RTの不活化はTfl DNA Polymeraseが十分なパフ ォーマンスを発揮するために必要です(7,8)。 16 RNA Applications Guide はじめに polymerase chain reaction (PCR**) はDNAを迅速かつ正確に 数千倍から数百万倍に増幅する、極めて有効で感度の高い技術 です。PCRの応用法である逆転写PCR(Reverse TranscriptionPCR:RT-PCR)は、組織や細胞における遺伝子発現研究の最も 有効な手段の一つとして登場しました。本法ではPCRステップ に先立って、mRNAの第1鎖cDNAへの転換が行われます。この 効果的な実験手法はライブラリーの構築をはじめとして、発生 段階における遺伝子発現解析、ディファレンシャル・ディスプ レイ、in vitro翻訳系のテンプレート合成など、幅広く用いられ ています。逆転写に酵素については6章をご参照ください。 プロメガ Access RT-PCR System プロメガのAccess RT-PCR System は、2種類の酵素を用い る手法の感度と1種類の酵素で行う手法の簡便性の両方を兼ね 備えています。この2種類の酵素を用いたシングルチューブの 反応系(図4-1)は、トリ肉腫ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus:AMV)逆転写酵素とThermus flavus (Tfl) 耐熱性DNA Polymerase から成り、わずか1pgのtotal RNAから特異的な mRNAを検出し、また102 コピーのコントロールRNAを検出し得 る感度を持ちます(図4-2)。AMV/Tfl 5× Reaction Buffer は逆転 写反応とDNA増幅反応とでバッファーの調整が必要ないように 最適化されています。そのため操作の手間が省け、コンタミの 危険も最小限に抑えられます。 MuLV/Taq Tth RNA Promega RNA PCR Kit PCR Kit Access System RT-PCR マスターミックス MuLV Tth AMVとTfl の調整 ↓ ↓↓ 第1鎖合成 42℃、45分 60℃、45分 48℃、45分 ↓ ↓↓ 逆転写酵素の 99℃、5分 該当しない 該当しない 失活 ↓ ↓ ↓ 試薬の追添 Taq、プライマー 該当しない 該当しない バッファー ↓ ↓↓ テンプレートの 94℃、2分間 94℃、2分間 94℃、2分間 変性 ↓ ↓↓ 第2鎖を合成 40サイクル 40サイクル 40サイクル 増幅 図4-1. 3通りのRT-PCRプロトコールの概要 RT-PCR の最適化 RT-PCRを行うに当たって、パラメーターの最適化を行うた めには多くの要素を考慮しなければなりません。表4-1に反応 系に影響を及ぼす様々な要因のいくつかをリストアップし、推 奨するサンプル調製法または濃度等を記載しています。RTPCRは鋳型とプライマーの組み合わせ等によって、それぞれ最 適の条件を選択しなくてはなりません。 第4章 RT-PCR MuLV/Taq RNA PCR Kit Promega Access RT-PCR System pg total RNA per reaction M M 106 105 104 103 102 101 10 0 0 540bp ß-actin amplimer pg total RNA per reaction M M 106 105 104 103 102 101 1 pg total RNA per reaction M M 106 105 104 103 102 101 1 0 pg total RNA per reaction M M 106 105 104 103 102 101 1 bp 1500 1000 500 Tth RNA PCR Kit Minus AMV RT control (Access RT-PCR System) 540bp ß-actin amplimer bp 1500 1000 500 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ16 17 3. 第2鎖cDNAの合成とそれに続くDNAの増幅に関する諸条件は、DNA 増幅産物の長さ、またはプライマーのアニーリング温度を考慮し、各 自で設定してください。一般的には40サイクルのPCR反応で目的の RNA検出には十分であると言われています。検出しようとするmRNA が希少である場合にはサイクル数を上げるか、nested PCRを行う必 要があります。しかしこの場合、僅かながら混入しているゲノム DNAに起因する、非特異的なPCR産物が増加する傾向があるので注 意が必要です。こうしたDNAの混入はRQ1 RNase-Free DNase処理を 施しても完全に除くことはできません。したがってPCRのサイクル数 は必要最小限に抑える必要があります。 図4-3. RT-PCRにおける、異なったプライマーを用いたmRNAからの cDNA第1鎖の合成様式 RNAサンプルのDNase処理 RQ1 RNase-Free DNase ウシ膵臓から精製されたRQ1(RNA-Qualified) RNase-Free DNaseは、2本鎖および1本鎖DNAを分解し、3′-OHのオリゴ ヌクレオチドを生成するエンドヌクレアーゼで (9)完全性を維 持したRNAが要求されるアプリケションに使用されます。この 酵素はin vitro転写後の鋳型DNAの除去(10)やRT-PCRなどで使 用するRNAサンプルからのDNA除去(11)、その他ニックトラン スレーション(12)、ランダムな断片の合成(13)、フットプリン ティングにおけるゲノムDNAの切断(13)にもお使いいただけま す。 Mg2+の存在下では個々のDNA鎖をランダムに切断し、Mn2+の 存在下では2本鎖をおおよそ同じ部位で切断し、平滑末端また は1~2塩基突出した末端を生成します(14)。 ランダムプライマー� オリゴ(dT)プライマー� 5′ AAAAAAAA 3′ mRNA 第一鎖 cDNA 5′ 3′ 配列特異的プライマー ( ) 5′ 3′ AAAAAAAA 3′ TTTTTTTT 5′ mRNA 第一鎖 cDNA AAAAAAAA 3′ TTTTTTTT 5′ mRNA 第一鎖 cDNA N6 N6 N6 N6 N6 N6 5′ PCR 第一鎖合成:� RQ1 DNaseの反応停止 DNase I処理が必須の場合、キャリーオバーを最少にするため に、酵素量を低く (1 unit/µg RNA未満) 抑えます。RQ1 RNaseFree DNaseを含むDNase Iは、サンプルを単純に熱処理しただけ では十分変性しません。DNase Iの除去を確実にするには、サン プルのフェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿による回収 をお薦めします。しかし、抽出や沈殿によるサンプル量の減少を 回避する場合、RQ1 DNase反応にMg2+またはMn2+が必要であるこ とを利用して、EDTAやEGTAなどのキレート剤添加により反応を 停止させることもできます(図4-4)。プロメガのRQ1 RNase-Free DNaseにはEGTAを含有するRQ1 DNase Stop Solution が添付され ています。DNase反応後にこのStop Solutionを添加した後、65℃、 10分間のインキュベートにより酵素を不活性化し、そのままRTPCR反応に加えることができます(注意: DNase処理した後の RNAを電気泳動する場合は、反応バッファーやStop Solutionの影 響により泳動度に異常をきたすため、フェノール抽出による DNase Iの不活性化をお薦めします)。 図4-4.RQ1 DNase活性のEDTAによる阻害 RQ1 DNase、1ユニットを、20mM EDTAの存在下または非存在下で 20mM Tris-HCl, pH 7.4、100mM NaCl、および10mM MgCl2 中で1µgの pGEM®-4Z閉環状プラスミドDNAとインキュベートした(反応の最終量 20µl)。反応は37℃で10分間行なわれ、1%アガロースゲルで解析した。 レーン1、DNaseなし。レーン2、+ EDTA。レーン3、- EDTA。 Chapter 4 RT-PCR 1 23 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ17 18 RNA Applications Guide Q. Total RNAをテンプレートとして用いることはできま すか。それともpoly(A)+ RNAが必要ですか? ターゲットRNAテンプレートはTotal RNA、poly(A)+ RNAまた はin vitro転写されたRNAのどれでも構いません。逆転写がうま くいくかどうかは、テンプレートとして用いるRNAの完全性や 精製度に依存します。用いるRNAの種類が何であれ、RNA精製 の操作中にRNaseフリーの環境が維持されることが重要です。 プロメガの RNAgents ® Total RNA Isolation System、 PolyATtract® mRNA Isolation Systems、およびSV Total RNA Isolation Systemで、Access RT-PCR Systemに十分使用できる 純度のRNAサンプルを精製できます。さらに、RNAサンプル中 に含まれるDNA量を最少になるよう注意してください。DNAを 含む可能性のあるRNAサンプルには、プロメガのRQ1 RNaseFree DNaseのようなRNase-Free DNase IでRNAサンプルを処 理することをお薦めします。 Q. DNA Polymeraseを用いて増幅したフラグメントを pGEM®-T、 pGEM®-T Easy、および pTARGET™ Vectorsを使ってクローニングすることはできます か? Tfl DNA Polymeraseは、3’→5′ エクソヌクレアーゼ (プルーフ リーディング) 活性を持たず、テンプレート非依存的に3’末端 にアデノシン塩基を付加します。したがって、Access RT-PCR Systemを使って合成したcDNAは、pGEM®-T、pGEM®-T Easy、 およびpTARGET™ Vector Systemsを使ってクローニングできま す。 Q.Access RT-PCR Systemを用いて増幅した最長のフ ラグメントサイズはどれくらいですか? ヒト骨格筋から精製したtotal RNAからAccess RT-PCR Systemを使ってジストロフィンの3.9kbのフラグメントが増幅 されています(15)。しかし、大きなターゲットの増幅は難しく、 反応条件を最適化する必要があります。 Q.Tfl DNA Polymeraseの忠実度はどれくらいです か?AMV RTのエラー率はどれくらいですか? Tfl DNA Polymeraseに塩基が間違って取りこまれる率は 1.03×10-4エラー/塩基と報告されており(16)、Taq DNA Polymeaseで報告されている8.9×10-5から1.1×10-4 エラー/塩 基(17,18)に比肩します。AMV RTのエラー率は、MMLVも同様 におよそ3.0×10-5 エラー/塩基であると報告されています(19)。 高Tm値プライマーの使用 ― アニーリング温度はTm値によっ て決まります。高Tm値プライマーを用いることにより、アニ ーリング温度を下げずに済むのでPCRにとって有利です。 Tfl DNAポリメラーゼ ― Tfl DNAポリメラーゼはテストされた 条件下では内在性の逆転写活性は認められません。 マグネシウムの使用 ― MgSO4 の代用としてMgCl2 を使用するこ とはできません。Tfl DNA ポリメラーゼはMgSO4 の添加によっ て反応性を増加させます。 コントロールの使用 ― それぞれのアッセイ系でポジティブコ ントロールを取ることにより、反応液の組成に問題がないかど うかをチェックできます。また、ネガティブコントロールを取 ることによってコンタミネーションをチェックすることができ できます。ネガティブコントロールにはAMV-RTを除いた、 RNAサンプルを含むすべての反応構成物を使用します。PCRで 増幅し得る産物を検出することにより、ゲノムDNAの混入を検 出します。 dNTPの濃度 ― 高濃度のdNTPは、誤った塩基対の取りこみを 増加させ、DNAポリメラーゼの忠実度を減少させることがあり ます。 AMV逆転写酵素の使用 ― AMV逆転写酵素を用いた第1鎖cDNA の合成は、58℃まで温度を上げることが可能です。しかしなが らその活性は50℃以上で著しく減少しすることが知られていま す。 試薬の調製 ― 使用前に完全に融解し、転倒混和またはボルテ ックスによりよく撹拌してください。酵素類は氷上に置き、使 用する前にボルテックスしてください。混合が不十分な場合、 実験結果に影響を及ぼすことがあります。 ミネラルオイルの使用 ― 重層用のオイルはヌクレアーゼフリ ーの高品質オイルをお使いください。オートクレーブしたオイ ルは用いないで下さい。 RNAの完全性の確認 ― RT-PCRを行う前にはtotal RNAが分解 していないかどうか、サンプルの一部をホルムアルデヒド変性 ゲル電気泳動で確認してください。28S(5.1kb)と18S(1.9kb)リ ボゾームRNAのバンドによって確かめられます。mRNAは2つ のrRNAのバンドの間でスメアとなり、分解したRNAは18Sの下 に現れます。 RNaseからの保護 ― RNasin® Ribonuclease Inhibitor のような RNase阻害剤を用いてください。 何度試してもうまくいかない場合 ― 特にポジティブコントロ ールからも何も検出されないような場合には、まずサーマルサ イクラーのサイクリングが問題なく行われているか、また温度 計でウェルの温度が正しく設定温度に達しているかを確認して ください。 ヒント Q&A RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ18 19 Chapter 4 RT-PCR 1チューブ型RT-PCR反応を用いたネココロナウィルス の蛍光検出による定量 プロメガのAccess RT-PCR System (カタログ番号A1260、 A1250、A1280)とTaqMan® probe technology (Perkin-Elmer) を用いて蛍光検出による定量に成功しました(20)。この実験で はレポーター蛍光色素とクエンチャーの蛍光色素で標識されて いる蛍光プローブが用いられました。定量は、ポリメラーゼの 伸長反応のステップの間に、Tfl DNA Polymeraseのエキソヌク レアーゼ活性によってハイブリダイズしたプローブからレポー ター蛍光色素が切断されることにより生じる蛍光によります。 慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ性白血病 (ALL)患者における Bcr-Abl遺伝子の検出 Evans らは、プロメガの Access RT-PCR System* (カタログ 番号A1260、A1250、A1280) と nested PCR を組み合わせた系 により、慢性骨髄性白血病患者のBcr-Abl の転座検出に成功し ました (21)。検出には、初回の増幅反応(RT-PCR)では bcr のエクソン b1(NB1+)と Abl のエクソン a3(Abl3)に特異 的なプライマーが用いられ、続いて Nested PCR 反応のために bcr に対する B2A プライマーと Abl に対する CA3 プライマー が用いられました。この実験では、b3a2 転座と b2a2 転座が3 人の患者サンプルから1例ずつ確認されています。このプロト コルの長所としては、1チューブでRT-PCR反応が行える Access RT-PCR System の使用により実験ステップを簡略化で き、コンタミの可能性も低くなることがあげられます。 *Note:PCR is a patented process. Promega does not encourage or support the unauthorized ot unlicensed use of the PCR process. Use of this kit is recommended for persons that either have a license to perform PCR or are not required to obtain a license. (a) For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures. 参考文献 1. Buell, G.N. et al. (1978) J. Biol. Chem. 253, 2471. 2. Kotewicz, M.L. et al. (1988) Nucl. Acids Res. 16, 265. 3. Bailey, J.M. and Davidson, N. (1976) Anal. Biochem. 70, 75. 4. Bassel-Duby, R. et al. (1986) J. Virol. 60, 64. 5. Huibregste, J.M. and Engelke, D.R. (1986) Gene 44, 151. 6. Shimomaye, E. and Salvato, M. (1989) Gene Anal. Tech. 6, 25. 7. Sellner, L.N., Coelen, R.J. and Mackenzie, J.S. (1992) Nucl. Acids Res. 20, 1487. 8. Chumakov, K.M. (1994) PCR Meth. Appl. 4, 62. 9. Moore,S.(1981)Pancreatic DNase In: The Enzymes, Volume 14A, P.D. Boyer,Ed., Academic Press, New York,281. 10. Riboprobe ® in vitro Transcription System Technical manual #TM016,Promega Corporation. 11. 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Promega Notes 57, p21. 製品案内 RT-PCRシステム 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Access RT-PCR 20回分 A1260 19,000 Introductory System Access RT-PCR System 100回分 A1250 76,000 Access RT-PCR System 500回分 A1280 300,000 RTシステム 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Reverse Transcription 100回分 A3500 64,000 System PCRシステム 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) PCR Core System I 200回分 M7660 24,000 PCR Core System II 200回分 M7665 28,000 DNA分解酵素 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) RQ1 RNase-Free DNase 1000u M6101 6,000 アプリケーション RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ19 表 5-1. テンプレートの由来によるin vitro翻訳システムの選択 図 5-1. in vitro 転写・翻訳とシステムの関係 RNA ウサギ網状 小麦胚芽 大腸菌S30 赤血球 抽出液 抽出液 抽出液 (1) (2) (9-11) 動物 +++ ++a -b 植物 ++ +++ - 細菌 ++ ++ +++ 哺乳類ウイルス +++ -c - 植物ウイルス +++ +++ - a 転写因子の発現に使われた b 翻訳後のプロセシングが必要な場合は薦めません c encephalomyocarditis virus internal ribosomal entry sites (EMCV IRES)を持つ哺乳類ウィルスでは小麦胚芽抽出液での発現があまり見 られません キー: (+++) 推奨; (++) 十分可能; (+) 可能; (-) 推奨しない プロメガのin vitro翻訳システム プロメガではタンパク質のin vitro生成のために様々なシステ ムを提供しています。表5-2に、必須のシークエンスエレメン トとテンプレートの必要条件示します。 20 RNA Applications Guide はじめに in vitroにおける翻訳には(i)RNAテンプレートを用いるプロ グラムシステムと、(ii)DNAテンプレートを用いるプログラム システム(転写/翻訳システム)の2つの基本的な方法論があり ます(図5-1)。RNAテンプレートは、Total RNA、mRNA、また はin vitroで合成された転写産物などが使用できます。DNAテン プレートは、プロモーターや翻訳開始点の下流に翻訳されるべ き遺伝子を持つプラスミドやPCR産物、RT-PCR産物などが使用 できます。適切なin vitro翻訳システムは、翻訳される遺伝子の オリジン(真核生物/原核生物)、利用できるテンプレート(例 えばRNAまたはDNA)および生成されたタンパク質をどのよう なアプリケーションに用いるか等、様々な要因に依存します。 翻訳システムの選択 必ずという訳ではありませんが、一般的に真核生物の遺伝子 を翻訳するときには真核細胞のシステムが使用され、同様に原 核生物の遺伝子を翻訳するためには原核生物のシステムが選択 されます。ある翻訳システムの構成要素中に、抗原性や機能性 において交差する成分が含まれている場合、別のシステムを使 う必要性が生じます。ミクロソーム膜を使用する翻訳後修飾や 翻訳後のプロセッシングは、ウサギ網状赤血球の抽出液でのみ 可能です。ただし、小麦胚芽抽出液の翻訳システムにおいては、 特定の反応条件に限り使用可能な場合もあります。表5-1にテ ンプレートの由来別に、システム選択の概要を示します。 in vitro 転写� in vitro 翻訳� RiboMaxTM� (第3章参照)� ● Rabbit Reticulocyte Lysate� ● Wheat Germ Extract ● TNT System (Rabbit,Wheat)� E. coli S30 System DNA RNA タンパク質� ●� ® 第5章 in vitro 翻訳 表5-2. プロメガのin vitro タンパク質翻訳システムの比較 タンパク質 DNA DNA シグナル切断 グリコシレーション 収 量 翻訳システム 環状 直鎖状 RNA プロモーター (6-8) RBSa (50µl 反応) 真核生物系 TNT® Reticulocyte yes yes yes T7, T3, SP6 yes no 150-300nge Lysate and combinations TNT® Wheat Germ yes yes yes T7, T3, SP6d yesc no 150-300nge Extract and combinations Rabbit Reticulocyte Lysate no no yes no yes no 50-200nge Wheat Germ Extract no no yes no yesc no 30-150nge 原核生物系 E. coli S30 Circular yes no no strong E. coli nob yes 100-250nge E. coli S30 Linear yes yes yes strong E. coli f nob yes 100-250ng (RNAでは (DNAのみ) 効率が落ちます) e E. coli T7 S30 Circular yes no no T7 or strong E. coli nob yes 300ng a RBS=ribosome binding site (リボゾーム結合サイト) b バクテリアによってはβラクタマーゼ遺伝子をプロセッシングします。 c プロセシングには、タンパク質が小胞と結合し、signal recognition particle (SRP) との相互作用が必要です。 小麦胚芽抽出液の調製過程でのEDTA処理でSRPが除去されてしまうため、プロセシング実験を効率的に行うためには外因性SRPの添加、EDTA処理の ステップを除くなどの変更が必要です。 d プロモーターの選択が重要です。 e システムに添付されたコントロール翻訳反応の場合。目的のタンパク質によって収量が変わります。 f スーパーコイル非感受性大腸菌プロモーターのみ使用可能。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ20 21 Chapter 5 in vitro 転写 ウサギ網状赤血球抽出液を用いた翻訳の為のRNAテンプ レートの準備 ウサギ網状赤血球抽出液を用いた翻訳に使用するRNAテンプ レートの調製によっては、翻訳効率に影響したり、他の問題を 引き起こしたりする場合があります(表5-4)。テンプレートは精 製され、塩類や有機溶媒(フェノール/クロロホルム)の混入が ないものである必要があります。有機溶媒による抽出後、エタ ノール沈殿したり、PolyATtract® mRNA Isolation Systemによる mRNAの選択的抽出を行うことにより、そのまま翻訳に使える テンプレートが生成されます(表5-5)。網状赤血球抽出液を用 いた翻訳では、in vivo RNAまたはファージポリメラーゼにより in vitroで生成されたRNAをテンプレートとして使うことができ ます(表5-4)。様々なシークエンスエレメントをテンプレートに 導入することで翻訳産物を増加させることができます(表5-6)。 翻訳システムのアプリケーション 翻訳システムは広範囲のアプリケーションに使われています (表5-3)。TNT® Coupled Transcription/Translation Systemは、 転写ステップを別に行なう必要がなく、プラスミドDNAからの 遺伝子の翻訳を大幅に簡便化します。 TNT ® System BibliographyではTNT® システムを、プロテイントランケーショ ンテスト(PTT)やタンパク質・タンパク質相互作用、タンパ ク質・DNA相互作用の研究、クローン化した遺伝子の迅速な同 定(13)などに使用した、100以上の文献を紹介しています (Q&A参照)。 プロメガのin vitro 翻訳システム プロメガではタンパク質の in vitro 生成のために様々なシス テムを提供しています(表5-2)。RNAをテンプレートにタンパ ク質を合成する系には、ウサギ網状赤血球溶解液の系である Rabbit Reticulocyte Lysate (カタログ番号L4960) と、小麦胚芽 抽出液の系である Wheat Germ Extract (カタログ番号L4380) が あります。これらの系では精製したmRNAやin vitro 合成した mRNAをテンプレートとして使うことができます。 プロメガのin vitro 転写・翻訳システム DNAテンプレートを用いるプログラムシステムとして、プロ メガではTNT®シリーズの名称でウサギ網状赤血球溶解液および 小麦胚芽抽出液による転写・翻訳システムを提供しています。 この系では、ファージ由来のRNA Polymerase (T7、SP6、 T3) が用いられているため、それぞれのRNA Polymerase に固 有のプロモーター配列を含むベクターまたはDNA断片を用いる ことが発現の最低条件となります。TNT® ウサギ網状赤血球溶解 液システムでは、T3プロモーターによる系であるTNT ® T3 Coupled Reticulocyte Lysate System (カタログ番号L4950)、 SP6プロモーターによる系である TNT ® SP6 Coupled Reticulocyte Lysate System (カタログ番号L4600)、およびT7プ ロモーターによる系のTNT® T7 Coupled Reticulocyte Lysate System (カタログ番号L4610) がありT3、SP6、T7 RNA Polymeraseがそれぞれの系には含まれます。新製品として現在 マスターミックスタイプのTNT® Quickシリーズ(カタログ番号 L1170/1、L2080/1)がT7またはSP6プロモーター用に製品化さ れています。また、PCR産物の転写・翻訳用に最適化された TNT® T7 Quick for PCR DNA(カタログ番号L5540)がお使いい ただけます。 TNT®小麦胚芽抽出液システムにも、T3、SP6、T7プロモータ ーの系ごとにTNT® T3 Coupled Wheat Germ Extract System (カ タログ番号L4120)、TNT® SP6 Coupled Wheat Germ Extract System (カタログ番号L4130)、およびTNT® T7 Coupled Wheat Germ Extract System (カタログ番号L4140) があります。 大腸菌の発現系としては、E.coli S30 のシリーズがあります。 この系には、環状テンプレート用のキットであるE.coli S30 Circular (カタログ番号L1020)、環状テンプレート用のキットで T7 RNA Polymerase を含む E.coli T7 S30 Circular (カタログ番 号L1130)、直鎖状テンプレート用のキットであるE.coliS30 Linear (カタログ番号L1030) があります。直鎖状DNAを環状テ ンプレート用のキットで用いることはできません (環状テンプ レート用の溶解液では直鎖状DNAは分解されてしまうため)。 記号:(+++) 推奨; (++) 許容; (+) 可能; (–) 不可 ※PCR産物からの翻訳にはTNT® Quick T7 for PCR DNAが最適です。 表5-3. タンパク質翻訳システムの応用による選択ガイド TNT ® TNT ® Reti- T7 TNT ® TNT ® TNT ®※ Reticulocyte Wheat culocyte Wheat S30 S30 S30 用 途 Quick for PCR (9) Germ (9) Lysate Germ Circular Linear Circular プラスミドDNAを用いた翻訳 +++ + +++ +++ – – ++ ++ ++ PCR産物を用いた翻訳 ++ +++ +++ +++ – –– +++ – RNAを用いた翻訳 + + + + +++ +++ – + – クローン化遺伝子の確認 +++ + +++ +++ ++ ++ ++ ++ ++ タンパク質/タンパク質相互作用 +++ +++ +++ +++ ++ ++ ++ ++ ++ タンパク質/DNA相互作用 +++ +++ +++ +++ ++ ++ ++ ++ ++ プロテイントランケーションテスト ++ +++ +++ +++ + + –– – 変異導入分析 +++ +++ +++ +++ ++ ++ ++ ++ ++ 薬剤スクリーニング(翻訳阻害など) +++ +++ ++ ++ +++ ++ +++ ++ ++ RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ21 22 RNA Applications Guide 表 5-5. テンプレートRNA精製の一般的な手順 手法 備考 有機溶媒による抽出後、エタノール沈殿 等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールで抽出後、クロロホルム:イソアミル アルコール抽出を行なう。0.3M酢酸ナトリウムと2.5倍量のエタノールで沈殿させる。クロロホル ムを除去する。 クロマトグラフィー RNase-freeのSephadex® G-25またはG-50。材料のオートクレーブによりRNaseを減少させる ことはできるが、RNaseの混入を完全に除くことはできない。 LiCl沈殿 低分子量のRNAが失われてしまうため、一般的には推奨しない。阻害作用のあるCl- を除去 するためにエタノール沈殿が必要になる。 Poly(A)+ 単離 PolyATtract® mRNA Isolation Systems 表5-6. 翻訳に影響を及ぼすシークエンスエレメント シークエンスエレメント 備考 開始コドン Kozakコンセンサス配列(10)によりウサギ網状赤血球抽出液では翻訳開始が促進される Poly(A) テール コーディング領域の3’末端にpoly(A) テールがあることで翻訳が7倍程度に増加する可能性がある。 しかし、poly(A) のみを加えることやpoly(A) テールを持つmRNAの量を増加させることにより翻訳が 直接阻害されることもある。 5’キャップ構造の有無 5’mGm7 G(5′)ppp(5′)G キャップを持つ場合、RNAの種類によってより効率良く翻訳が行なわれる 場合がある。キャップを持たないmRNAでは内部からあるいは誤った開始点から翻訳されることが ある。キャップ構造を持たないmRNAは、インターナルリボゾームエントリーサイト(IRES) (例えばピコルナウィルスのmRNA(13)に見られるような)を含む場合、ここからの翻訳がより効 率よく起こる(TNT® Systemでキャップを用いると翻訳効率が下がります)。 5’非翻訳領域 EMCV(14) mRNA(IRESを含む)の5’上流領域を目的のmRNAの上流配列と置きかえると、高濃度 のKCl(110~120mM、酢酸カリウムではなく)が加えられた反応で翻訳産物に16倍の増加が観察さ れた。目的のmRNAの上流に置き、翻訳産物を増加させることができる翻訳促進効果がある5′ UTRs (例えばβ-グロビンからのような)は他にも存在する。IRESは小麦胚芽抽出液系の翻訳においては逆 の効果を持つ。 表5-4. ウサギ網状赤血球および小麦胚芽抽出液の翻訳系を用いる際のRNAテンプレートの指針 RNAのタイプ RNA濃度 備考 in vitro RNA HEPESバッファーの系 10~80µg/ml HEPESベースの系で合成したRNAの場合、より多量のRNAを翻訳反応に (例:RiboMAXTM System) 加えられる。 Trisバッファーの系 (例:Riboprobe® System) 10~20µg/m RNAが精製されている場合はどちらの系でも安定した結果が得られる。5’ジヌクレオチ ウサギ網状赤血球 ドによるin vitro mRNAのキャップ付加により翻訳効率が増加する可能性がある。 4-10µg/ml 小麦胚芽 in vivo RNA Total RNA 100~200µg/ml rRNAやtRNAがプレップ中に豊富に存在するため翻訳効率が悪い Poly(A)+ RNA 5~20µg/ml Poly(A)+ の分画化によりtRNAやrRNAが除去され、翻訳効率が増加する。 ウサギ網状赤血球 植物から単離されたPoly(A)+ RNAには多糖類が付加されていることがあり、それにより 5-80µg/ml ウサギ網状赤血球における翻訳が阻害される可能性がある。2µg RNA/50µl反応液以上の 小麦胚芽 濃度で反応させた場合、正規の開始コドンよりも下流のATGから翻訳が開始される可能性 がある。 これらの系でタンパク質を合成する場合は、ベクターやDNA 断片に開始コドン、リボゾーム結合サイト (大腸菌の系の場合)、 Kozak 配列、Poly (A) テール、ターミネーター配列が含まれる かどうかに注意してください (開始コドンは必須、そのほかは 発現量に大きく影響することがあります。詳しくは表5-6を参 照)。 これらのin vitro 転写系および転写・翻訳系で発現されたタン パク質を検出する方法には、RI を用いる方法とNon-RI の方法 があります。Non-RI の方法として、プロメガでは発色または 化学発光による検出系であるTranscend™ (カタログ番号L5070 およびL5080) と、蛍光による検出系であるFluoroTect™ GreenLys in vitro Translation Labeling System™ (カタログ番号 L5001、新製品) を販売しています。Transcend™ では、ビオ チンラベルされたリジンtRNA を用いており、ビオチン化され たタンパク質を泳動分離・メンブレンへのトランスファー後、 アルカリホスファターゼ (発色) またはホースラディッシュペル オキシダーゼ (化学発光) 標識ストレプトアビジンで検出しま す。FluoroTect™ では、BODIPY®で標識されたリジンtRNAを 用いており、泳動後、ゲル内の翻訳産物をそのまま蛍光イメー ジング機器 (フルオロイメジャーなど) で検出することができま す。 合成したタンパク質の翻訳後修飾が重要な場合、反応液に Canine Pancreatic Microsomal Membrane (CPMM;カタログ 番号Y4041) を加えることができます。CPMMが有効とされて いる主なアプリケーションには糖鎖の付加やシグナルペプチド の切断があり、膜タンパクの合成やタンパク質のフォールディ ング研究などにも使用されています。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ22 Chapter 5 in vitro 転写 23 ウサギ網状赤血球抽出液および小麦胚芽抽出液を使用する為 のテンプレートRNA調製のヒント 翻訳阻害剤 - 多糖類、2本鎖RNAおよび酸化チオールはウサギ 網状赤血球抽出液を用いた翻訳の阻害剤となります(1)。 in vitro RNA - in vitroで生成されたRNAは、直接翻訳反応に加 えることができます。反応液中で1/10から1/50に希釈されるよ うに用います。 直鎖状テンプレート - 3’突出を持つ直鎖状のDNAテンプレー トを使用するin vitro転写は、アンチセンスRNAを含む大きな mRNAを生産する可能性があります。これらのRNAは、異常な 翻訳産物を生産したり、目的産物の翻訳を阻害することがあり ます。この問題を避けるためには、転写反応の前に3’突出を Klenow DNAポリメラーゼで処理してください (12)。 翻訳の早期終結 - in vitroで生産されたRNAには転写の早期終 結により目的のRNAに加えて短いRNAが含まれている可能性が あります。これらの短いRNAにより翻訳反応で短いタンパク質 が生成されることがあります。 Q.TNT® システムを用いるとどれくらいのタンパク質が 生成されるのですか? 陽性コントロールのテンプレート(ルシフェラーゼ)からは、 50µlの反応当たり約200~300ngのタンパク質が生成されます。 ただし、タンパク質の生成はテンプレートに依存します。 Q. 抗体を作製するのに十分なタンパク質量が得られま すか? 一匹のマウスで免疫反応を生じさせるためには、一回の注射 当たり10~50µgの精製したタンパク質が必要です。ウサギで は最低で50µgですが、100~500µgが好ましいとされます。 50µgの反応当たり250ngのタンパク質が得られるとすると、 TNT® システム1キットで7.5ugのタンパク質が合成されること になります。より多くの抗体を精製するためには2回の免疫が 必要であるとすると、TNT® システム3、4キット分からマウス を免疫するのに十分な産物が得られることになります (15)。 Q.反応当たりどれくらいのDNAテンプレートが必要で すか? 50µlの反応当たり0.2~2.0µgのDNAテンプレートを用いるこ とをお薦めします。これ以上加えても合成されるタンパク質量 は増えません。 Q.TNT® システムを用いたときに合成されるタンパク質 の最大サイズはどれくらいですか? 最大サイズは決められていません。百kDa以上から数百kDa で成功例があります(15)。 Q. 2つの異なるDNAテンプレートを同じ反応で使用する ことはできますか? できます。Co-expression of multiple NF-κB subunits using the TNT® System (PN42、16ページを参照) で、複数のT7プロモ ーター構築体からのタンパク質の同時合成や、3つの異なるプ ロモーター構築体からの複数タンパク質の合成が報告されてい ます。各テンプレートから合成されるタンパク質量は、ひとつ のテンプレートのみを含む反応における合成量よりも少ない可 能性があります。現時点では、プロメガではすべてのロットの TNT® Lysateが複数のポリメラーゼを使った翻訳をサポートする ことは保証していません。 Q. RNAポリメラーゼによってタンパク質合成量が違い ますか? スーパーコイル状の陽性コントロールテンプレートを用いる と、SP6 RNA PolymeraseでT3またはT7 RNA Polymeraseの2倍 の収量が得られています (16,17)。しかし、この違いはすべて のテンプレートであてはまるとは言えません。 ヒント Q&A RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ23 Q.プロメガの Canine Pancreatic Microsomal MembranesをTNT®システムと組み合わせて発現と同 時進行のプロセッシングに使うことはできますか? Canine Pancreatic Microsomal Membranesは TNT ® Reticulocyte Lysate Systemといっしょに使うことができます。 しかし、TNT® Wheat Germ Extract Systemでは使うことができ ません (18)。 Q.TNT®システムの個々の構成品を単品で買うことはでき ますか? TNT®システムは、その試薬が特定のプロモーターに対して最 大の発現を与えるように品質保証された一揃いのシステムとし てしかお求めいただけません。現時点では個々の試薬は必ずし も常に交換可能なわけではありません。しかし、プロメガはこ れら使用の自由度を上げるようにシステムを改良するよう努め ています。 Q.TNT®反応液はどのような組成になっていますか? TNT®システムは特許の対象となっています。TNT®反応のすべ ての構成物と濃度は社外秘となっております。 Q.TNT®の新しいアプリケーションとしてどのようなもの がありますか? 25ページに最近の優れたTNT®システム利用例を示しました。 その他cDNAやPCR産物からのタンパク質発現研究の幅広いア プリケーションについては引用文献集であるBibliography of References Using the TNT® Coupled Transcription/Translation Systems (資料番号 BL001)やプロメガホームページ (引用文献リスト) を ご覧ください。また、アプリケーションの概要については Promega Notes 47、53、60、62、66、67、70 (ホームページ アドレス:http://www.promega.com/pnotes/) の記事も合わせ てご参照ください。 参考文献 1. Pelham, H. and Jackson, R. (1976) Euro. J. Biochem. 67, 267. 2. Krieg, P. and Melton, D. (1984) Nucl. Acids Res. 12, 7157. 3. Thompson, D. and Beckler, G. (1992) Promega Notes 38, 15. 4. Zubay, G. (1973) Ann. Rev. Genet. 7, 267. 5. Zubay, G. (1980) Meth. Enzymol. 65, 856. 6. Shimomaye, E. and Salvato, M. (1989) Gene Anal. Tech. 6, 25. 7. Walter, P. and Blobel, G. (1983) Meth. Enzymol. 96, 84. 8. Spiess, M. and Lodish, H. (1986) Cell 44, 177. 9. Bibliography and References using TNT® Coupled Transcription /Translation System. BL001, Promega Corporation 1996. 10. Kozak, M. (1990) Nucl. Acids Res. 18, 2828. 11. Jackson, R. and Hunt, T. (1983) Meth. Enzymol. 65, 856. 12. Schenborn, E. and Mierendorf, R. (1985) Nucl. Acids Res. 13, 6223. 13. Borman, et al. (1995) Nucl. Acids Res. 23, 3656. 14. Beckler, G.S. (1992) Promega Notes 35, 5. 15. Thompson, D. et al. (1992) Promega Notes 35, 1. 16. Thompson, D. (1993) Promega Notes 40, 1. 17. Thompson, D. and Van Oosbree, T. (1992) Promega Notes 38, 13. 18. Thompson, D. and Beckler, G.S. (1992) Promega Notes 38, 15. 製品案内 in vitro 転写/翻訳 システム (真核生物) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) TNT® T7 Quick for PCR DNA 1システム L5540 75,000 TNT® T7 Quick Coupled 1システム L1170 75,000 Transcription/Translation System TNT® SP6 Quick Coupled 1システム L2080 85,000 Transcription/Translation System TNT® SP6 Coupled 1システム L4600 70,000 Reticulocyte Lysate System TNT® T7 Coupled 1システム L4610 70,000 Reticulocyte Lysate System TNT® T3 Coupled 1システム L4950 70,000 Reticulocyte Lysate System in vitro転写/翻訳 システム (真核生物) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Rabbit Reticulocyte Lysate, 1ml L4960 24,000 Nuclease Treated in vitro 転写/翻訳システム(植物) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) TNT® T3 Coupled Wheat 1システム L4120 65,000 Germ Extract System TNT® SP6 Coupled Wheat 1システム L4130 65,000 Germ Extract System TNT® T7 Coupled Wheat 1システム L4140 65,000 Germ Extract System in vitro 翻訳システム(植物) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Wheat Germ Extract 1ml L4380 24,000 in vitro 転写/翻訳 システム (真核生物) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) E. coli S30 Extract System 1システム L1020 55,000 or Circular DNA E. coli S30 Extract System 1システム L1030 55,000 for Linear Templates E. coli T7 S30 Extract 1システム L1130 58,000 System for Circular DNA 翻訳産物ダイレクト検出システム(蛍光) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) FluoroTect™ GreenLys 1システム L5001 お問い合わせ下さい in vitro Translation Labeling System 翻訳産物検出システム(発色・化学発光) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Transcend™ Non-Radioactive 1システム L5070 30,000 Translation Detection System (Colorimetric) Transcend™ Chemiluminescent 1システム L5080 43,000 Non-Radioactive Translation Detection System 翻訳後プロセシング 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Canine Pancreatic 50µl Y4041 39,000 Microsomal Membranes 24 RNA Applications Guide RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ24 Chapter 5 in vitro 転写 25 35 S W EM W EM 遺伝子A 遺伝子B 大腸菌による発現� 精製� GST タンパク質A TNT GST タンパク質B オートラジオグラフィー� ウエスタンブロッティング� W:洗浄液� E:溶出液� M:マーカー� TNT® で合成した標識タンパク質Aと大腸菌で発現したタ グ付タンパク質Bの相互作用。タグ付タンパク質B をカ ラムに固定し、標識タンパク質A をカラムに通して、洗 浄液と溶出液をオートラジオグラフィーあるいはウエス タンブロッティングによりタンパク質Aとタンパク質Bの 相互作用を解析します。 タンパク質/タンパク質相互作用 オリゴ� 32P オリゴ� 32P オリゴ� 32P オートラジオグラフィー� タンパク質A オリゴ� 32 タンパク質A P オリゴ� 32 タンパク質A P PA� HO� +� CO� PA� HO� +� � HO� +� PA:タンパク質A� HO:標識オリゴ� CO:コールドオリゴ� 遺伝子A TNT TNT PCR� または RT-PCR 血液/組織(DNA,RNA) ノーマル� T7 ATG CAA 変異� T7 ATG TAA 変 異 変 異 ノ ー マ ル 〈例〉�  ・APC�  ・ATM�  ・BRCA1�  ・BRCA2�     など� TNT プラスミド� プール� タンパク質� プール� 大腸菌� cDNAライブラリー� の一部� – + コロニーを集め� ミニプレップ� 酵素処理など� *� cDNAの単離� プロテアーゼ処理/� SDS-PAGE 〈例:プロテアーゼ〉 限定分解� プロテアーゼ基質 cDNAの単離� TNT® 反応(標識なし)で合成したタンパク質と32P 標識した オリゴヌクレオチドを用いたゲルシフトアッセイ。 DNAがタンパク質と結合しなければ、ゲル中をオリゴヌク レオチドは迅速に移動するが、DNAとタンパク質が相互作 用すると泳動が遅れます。この現象に基づいて転写因子の 解析などを行います。 ~タンパク質の機能解析からcDNAをスクリーニング~ ファージプロモーターを含むベクターで構築したcDNAライブ ラリーの一部でTNT®反応を行い、合成されたタンパク質群の中 から特定のタンパク質機能を見つけ、そのcDNAを同定します。 例)特定のプロテアーゼ( caspase-3 など)基質やキナーゼ基 質cDNAの同定、特定のDNAやタンパク質と相互作用する タンパク質cDNAの同定など プロテイントランケーションテスト(PTT) PTTは翻訳停止変異をタンパク質レベルで検出します。 SSCP、シークエンシング、酵素消化などのDNAレベルの 変異検出方法に比べ、主要な2つの利点があります。 ・長い遺伝子フラグメント(2-3Kb)を解析できる ・病理的に関与する変異のみを検出できる (表現型サイレント変異は検出されません) タンパク質/DNA相互作用 ~ ゲルシフト アッセイ~ In vitro 発現クローニング(IVEC) 遺伝子変異検出 TNT®のアプリケーション RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ25 cDNA合成の概説 mRNAに対応するcDNAライブラリーの構築は、分子生物学 において従来からかなりの困難を伴う実験手法の一つでした。 この手法ではmRNAを2本鎖cDNAに逆転写し、続いてベクター にライゲーションするための末端処理を含む、複雑な酵素反応 が行なわれます。cDNAライブラリーは下記のような様々なア プリケーションで有用です(1)。 ● 遺伝子構造解析 ● タンパク質発現 ● DNAマッピング Universal RiboClone® cDNA Synthesis Systemは、Gublerお よびHoffmanにより改良された(3) OkayamaおよびBerg(2)によ る手法に基づいています。この手法は簡単に述べると、ランダ ムヘキサマーまたはoligo(dT)プライマーを用いてAMV逆転写酵 素による第1鎖合成を行い、続いてRNase HとDNA polymerase Iを用いた第2鎖の合成(置き換え)を行ないます。T4 DNA Polymeraseで平滑末端にし、EcoR Iアダプターのライゲーショ ンにより(図6-1) cDNA分子のクローニングへの準備が整いま す。その後cDNA-EcoR Iアダプター分子はLambda gt10や Lambda gt11などのベクターにクローニングされるというもの です(図6-2)。本システムには、cDNA合成やライゲーション反 応の効率を確認するために使用する、陽性コントロールRNAが 含まれます。 図6-1.Universal RiboClone® cDNA Synthesis Systemとoligo(dT)プラ イマーを使ったcDNA合成 AAAA RNase H DNA Polymerase I Second-Strand Buffer 第一鎖合成 14°C, 2時間� AAAA AAAA Oligo(dT) Primer AMV Reverse Transcriptase First-Strand Buffer 第一鎖合成 42°C, 60 分間� AAAA TTTT TTTT TTTT T4 DNA Polymerase dNTPs AAAA TTTT m7Gppp m7Gppp m7Gppp 末端の平滑化� 37°C, 10分間� 図6-2. 一般的なEcoR I アダプターライゲーションの概要 cDNA合成の典型的な方法では、mRNAからの第1鎖cDNAの 合成を開始するためにoligo(dT)プライマーを使用します。ラン ダムヘキサマープライマーにより、mRNAの内部から第一鎖 cDNAの合成を開始するという変法が提供されました(4)。ラ ンダムプライマーは原核生物のmRNAや一部のウイルスRNAな ど、ポリアデニル化されていないmRNA分子からの合成開始に 有用です。これらのプライマーを用いて生成されたcDNA産物 はランダムな方向にクローニングされます。 方向性のあるcDNAのクローニングは、ある種のアプリケー ションでは有効です。こうしたcDNAクローニングの手法は、 適切な発現ベクターにおいてインサートを正しいポリペプチド として発現する確率が2倍になります。 合成されたcDNA分子のほとんどは、mRNAの5’末端部分に相 補的な数ヌクレオチドを欠いています。これは第2鎖への置き 換えが3′-OH RNAプライマーから進行するためです。これらの プライマーは、添加されたRNase HおよびAMV逆転写酵素に既 存のRNase H活性によりランダムに生成されます。mRNAの最 も5’側のニックは、通常末端から数ヌクレオチドのところに生 じ、残りのRNAオリゴヌクレオチドはハイブリダイズした状態 を保つには短すぎる可能性があります。そのため、DNA polymerase Iの3′-5’エキソヌクレアーゼ活性がcDNA第1鎖の最 後の数ヌクレオチドを除去してしまいます。しかしすべての真 核生物のmRNA分子では、5’側に通常40~80ヌクレオチドから 成る非翻訳リーダー配列が見られるため、ほとんどの2本鎖 cDNAには最初の細胞内mRNA分子に存在するコーディング配 列が含まれていると考えられます(4)。 AATTCCGTTGCTGTCG GGCAACGACAGC cDNA cDNA cDNA cDNA cDNA P P T4 DNA Ligase 15℃, 4時間からO/N 70℃, 10 分間 T4 Polynucleotide Kinase 37℃, 30 分間 フェノール:クロロホルム抽出� スピンカラムクロマトグラフィー� 脱リン酸化したベクターアーム T4 DNA Ligase 室温, 3 時間 ベクター� アーム� ベクター� アーム� P P P P P 26 RNA Applications Guide 第6章 cDNA合成 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ26 Chapter 6 cDNA合成 27 逆転写酵素 逆転写酵素 (RT)は 、 RNAテンプレートから相補的な DNA(cDNA)合成を触媒するDNAポリメラーゼの一種です(5-7)。 RNAからcDNAコピーを作製する逆転写酵素の活性は、cDNA ライブラリーの構築、RT-PCR(a)、プライマー・エクステンショ ンやRNAシークエンシングを含む多くの異なる分子生物学のア プリケーションで利用されています。 AMV RTとM-MLV RTは、両方とも2つの主要な活性を持ちま す。ひとつはRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、もうひとつは RNase H活性です。DNAポリメラーゼ活性は、cDNA合成を必 要とする全てのアプリケーションで必要です。それに対し、 RNase H活性は完全長cDNAを合成するこの酵素の活性として 望ましくなく、むしろ妨げとなります。逆転写酵素は、DNAテ ンプレートとRNA:DNAハイブリッドにおいてDNA依存性DNA ポリメラーゼ活性も持つことに注意してください。しかし、こ の活性は大きくなく、一般的に分子生物学のアプリケーション で活用されることはありません。 RNase H活性とは RNase H 活性は、cDNA合成にもっとも適した逆転写酵素を 選ぶ際に重要な活性です。大腸菌のRNase H活性のように逆転 写酵素のRNase活性はRNA:DNAハイブリッドのRNA鎖を分解 します。cDNAが合成されると、逆転写酵素のRNase H活性の 基質となるRNA:DNAハイブリッドが形成されます。cDNA合成 におけるRNase H活性の影響は2つあります。完全長の逆転写 産物の全収量とパーセント収量が低下するということです。逆 転写反応は、RNAテンプレート中の特異的な配列にハイブリダ イズしたDNAプライマー、多くの場合poly(A)+ テールから開始 されます。プライマーとRNAのハイブリッドは重合のプライム サイト(開始点)として働くのみならず、逆転写酵素のRNase H 活性の基質にもなります。合成されるcDNAの収量は、逆転写 酵素が重合を開始する前にRNA:DNAハイブリッドを破壊する RNase H活性がどのくらいあるかにも影響されます。アプリケ ーションによってはcDNA合成を検出するためにRNAの最少量 を増加させる必要が生じます。さらに、この酵素のRNase H活 性により、DNA重合が起こっているサイトの近くのRNA鎖が切 断されることもあります。切断が起こるとRNA分子のコピーさ れていない部位が逆転写複合体から解離し、cDNA合成は停止 します。RNA分子が長ければ長いほどこのような現象は起こり やすくなります。その結果、お使いになる逆転写酵素にRNase H活性がある場合、長鎖RNA分子(>5kb)が完全にcDNAにコピ ーされにくくなります。 M-MLV, RNase H (-) 逆転写酵素 RNase H(-)の逆転写酵素は特にcDNAライブラリー作製にお いて選択すべき酵素です。この酵素により長いテンプレートか ら完全長のcDNAを合成できるということは、作製したcDNAラ イブラリーがより正確にRNAプール(ライブラリーを作製する ために用いられる長短の転写産物)を反映しているということ です。その一方で、RNase H(-)の逆転写酵素を使用する一番の 利点が長鎖cDNAを合成することであるため、必要とされる DNAが通常短いRT-PCRや、プライマー・エクステンションの 結果改善には結びつかないかもしれません。長鎖cDNA (>5kb) が必要とされるアプリケーションには、RNase H (-)の逆転写酵 素をお使いいただくことを推奨します。RNAテンプレートの長 さのほかに、RNAテンプレート中で複雑な二次構造をとる領域 も、逆転写酵素が完全長cDNAを合成する能力に影響します。 反応温度を上げてcDNA合成反応を実施することで、問題とな る二次構造を持つ領域をリラックスさせ、合成反応を向上させ ることができます。RNAテンプレート中の二次構造が完全長 cDNAの合成を阻んでいる可能性がある状況下や、cDNA合成反 応を温度を上げて行ないたい場合、 M-MLV Reverse Transcriptase, RNase H Minus, Point Mutantを使用することを お薦めします。 M-MLV RT, RNase H (-)の欠失変異型(deletion mutant) と点変異型(point mutant)の違い ほとんどのアプリケーションでは、M-MLV RTのどちらの RNase H (-)型もお使いいただけます。我々の観察では、点変異 型のほうが欠失変異型よりも高温での安定性があります。 1.2kbの鋳型を用いたcDNA合成反応において、M-MLV RT, RNase H Minus, Point Mutantを使った場合55℃まで完全長の cDNAが合成されるのを観察しました。同じ鋳型でM-MLV RT, RNase H Minus, Deletion Mutantを使った場合、50℃まで完全 長cDNAが合成されました。これらの酵素を高温で使う場合の 詳しい情報については、プロメガテクニカルサービスにお問い 合わせください。 (prometec@jp.promega.com) 逆転写酵素の比較には表6-1を参照ください。 RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ27 28 RNA Applications Guide 表6-1.プロメガ逆転写酵素の特徴 AMV Reverse M-MLV Reverse M-MLV Reverse M-MLV Reverse Transcriptase Transcriptase Transcriptase, Transcriptase, (RNase H Plus) RNase H Minus RNase H Minus, Deletion Mutant Point Mutant 推奨されるアプリケーション One-Step RT-PCR ○×× × Two-Step RT-PCR ○○○ ○ cDNA合成(<6kb) ○ ○ ○ ○ cDNA合成(>6kb) △ △ ○ ○ プライマーエクステンション ○○○ ○ 酵素サイズ (kDa) 65kDaと94kDaの 71kDa 56kDa 71kDa 12つのサブユニット 1からなるヘテロダイマー 原料 トリ骨芽腫ウィルス 大腸菌のクローン 大腸菌のクローン 大腸菌のクローン 粒子から精製 RNase活性 あり あり なし なし 熱による不活化 可能、70℃で15分間 (8) 可能、70℃で15分間 (9) 可能、70℃で15分間 (9) 可能、70℃で15分間 (9) 熱安定性 42-58℃ (10) 37-42℃ (11) 40-50℃ (11) 37-55℃ (11) 至適pH 8.3、Tris-HCl中で 8.0、Tris-HCl中で 8.0、Tris-HCl中で 8.0、Tris-HCl中で 25℃で 37℃で (13) 37℃で (13) 37℃で (13) プロセッシビティ 97ヌクレオチド (14) テンプレートに依存 テンプレートに依存 テンプレートに依存 (テンプレートから (文献15,16を参照) (文献15,16を参照) (文献15,16を参照) 外れるまでの平均 付加塩基数) 重合速度 テンプレートに依存 700塩基/分 (18) ND ND (文献17を参照) 要求性 DNAプライマー、 DNAプライマー、 DNAプライマー、 DNAプライマー、 6-10mM Mg2+ 1-2mM Mn2+ 1-2mM Mn2+ 1-2mM Mn2+ または Mn2+ (19) または 1-10mM Mg2+ (19) または 1-10mM Mg2+ (19) または 1-10mM Mg2+ (19) デオキシヌクレオチド 2-40µM dATPには24µM、 dATPには24µM、 dATPには24µM、 (テンプレートに依存) dCTPには31µM(19) dCTPには31µM(19) dCTPには31µM(19) (19,20) エラー率 平均で2,000塩基中に1 平均で1,000塩基中に1 平均で1,000塩基中に1 平均で1,000塩基中に1 (21) (22,23) (22,23) (22,23) cDNAの大きさ 5kbまで 5kbまで 6kbまで 7.5kbまたはそれ以上 推奨するバッファー 50mM Tris-HCl (pH8.3), 50mM Tris-HCl (pH8.3), 50mM Tris-HCl (pH8.3), 50mM Tris-HCl (pH8.3), 条件 50mM KCl, 75mM KCl, 75mM KCl, 75mM KCl, 3mM MgCl2, 10mM MgCl2, 3mM MgCl2, 3mM MgCl2, 10mM DTT (13) 10mM DTT, 10mM DTT (13) 10mM DTT (13) 0.5mM spermidine 阻害剤 グリセロール (>10%), ピロリン酸化ナトリウム, ピロリン酸化ナトリウム, ピロリン酸化ナトリウム, ribonucleotide vanadyl spermidine-HCl, spermidine-HCl, spermidine-HCl, complexes (2mM), グリセロール, ホルムアミド, グリセロール, ホルムアミド, グリセロール, ホルムアミド 比較表については SDS, ヘパリン, 比較表に SDS, ヘパリン, 比較表に SDS, ヘパリン, 比較表に 文献19を参照 ついては文献19を参照 ついては文献19を参照 ついては文献19を参照 推奨するRIラベル [α-32P]dATP [α-32P]dATP [α-32P]dATP [α-32P]dATP または または または または [α-35S]dATP (24) [α-35S]dATP (24) [α-35S]dATP (24) [α-35S]dATP (24) 基質となるヌクレオチド dNTP, DINTP, ddNTP, dNTP, DINTP, dNTP, DINTP, dNTP, DINTP, 7-deaza-dGTP,ビオチン 7-deaza-dGTP, ビオチン 7-deaza-dGTP, ビオチン 7-deaza-dGTP, ビオチン またはdigoxigenin-11-dUTP またはdigoxigenin-11-dUTP またはdigoxigenin-11-dUTP またはdigoxigenin-11-dUTP およびfluorescein-12-dUTP (19) およびfluorescein-12-dUTP (19) およびfluorescein-12-dUTP (19) およびfluorescein-12-dUTP (19) *The PCR process is covered by patents issued and applicable in certain countries. Promega does not encourage or support the unauthorized or unlicensed use of the PCR process. Use of this product is recommended for persons that either have a license to perform PCR or are not required to obtain a license. RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ28 29 cDNA合成の成否には、多くのパラメーターが関与していま す。下記にcDNA合成反応のためのヒントとガイドラインを紹 介します。 第1鎖および第2鎖の収量 - 第1鎖および第2鎖の合成では、約 350~6000ヌクレオチド(第2鎖ではベースペア)のcDNAフラ グメントを生成します。cDNA合成を確認するためにアガロー スゲルで分析する必要があります。 EcoR Iアダプター - RiboClone® Systemに含まれるEcoR Iアダ プターは、cDNAフラグメントとの効率的なライゲーションの ために平滑末端側がリン酸化されています。 RNAがきちんと取れているかの確認 - 可能であれば、使用前 にRNAの完全性をゲルで確認します。mRNAを分解するRNase 活性を阻害するためにRNasin® Ribonuclease Inhibitorを加えま す。RNasin® Ribonuclease Inhibitorは、cDNAクローニングで 問題となるRNase H活性を阻害しません。 陽性コントロールの使用 -キットの内容物に問題がないことを 確認するために、各cDNAクローニング実験において陽性コン トロールを使います。 mRNAの純度 - 高純度に精製されたmRNAからスタートする ようにしてください。SDS、EDTA、多糖類および塩類は、す べて第1鎖cDNAの合成を阻害します。これらの試薬の混入が疑 われる場合は、mRNAサンプルの一部を陽性コントロール反応 に加え、第1鎖合成が阻害されるかどうかをアガロースゲル電 気泳動で調べます。 Sephacryl® S-400スピンカラムの使用 - Sephacryl® S-400を 充填したスピンカラムから溶液が適切に排出されない場合、カ ラムの上部に軽く圧力をかけて排出をスムーズにします。 Sephacryl® S-400をカラムに詰めるときに、カラムの先端に小 さな気泡がトラップされやすいので、溶液をカラムに流す前に 気泡を追い出す必要があります。 スピンカラムでの収量を確保する - Sephacryl® S-400スピンカ ラムからのcDNAの収量を確保するために、バッファーによる 平衡化を2回ではなく3回行ないます。 ヘアピン形成の抑制 - ピロリン酸ナトリウムを第1鎖cDNAの 合成反応に加えると、ヘアピン形成を抑制する効果があります。 DMSOでも同じ効果が見られます。15%のDMSOが第1鎖の合 成で合成効率を下げることなく使用されています(25)。 cDNAクローニング用のRNA - 単離されたmRNAでなく、total RNAを使ってのcDNAクローニングを行なうことは推奨できま せん。第1鎖合成において、32P-dCTPの取り込み効率の低下が 実験で確認されているためです。25~50µgのマウス肝臓からの total RNAとoligo(dT)プライマーを使って得られたデータでは、 ゲルによる分析で第1鎖cDNAが確認されませんでした。 cDNAの長さ - あるcDNA鎖では15kbpのものが合成されてい ます。第2鎖の合成は11℃で1時間、続いて22℃で1時間反応が 行なわれました。他の条件は通常の第2鎖の合成反応条件と同 じです(26)。 参考文献 1. Cohen, J.J. (1993) Immunol. Today 14, 126. 2. Cleveland, D.L. and Ihle, J.H. (1995) Cell 81, 479. 3. Tartaglia, L.A. and Goeddel, D.V. (1992) Immunol. Today 13,151. 4. Kozak, M. (1983) Microbiol. Rev. 47. 5 . Eun, H.-M. (1996) Enzymology Primer for Recombinant DNA Technology, Academic Press, San Diego, CA, 427, 6. Gerard, G.F. and D’Alessio, J. (1993) In: Methods in Molecular Biology, Vol.16: Enzymes of Molecular Biology, Burrell, M.M.,ed., Humana Press, Totowa, NJ, 73. 7. Enzyme Resource Guide, Vol. I : Polymerases BR075A, Promega Corporation. 8. Colomb, M.et al.(1981) J Virol. 38, 548. 9. Roth, M. et al.(1981)J.Virol. Chem. 260, 9326. 10. Mallet, F. et al. (1998) BioTechniques 18, 678. 11. Gerard, G.et al. (1997) Mol. Biotech.8,61. 12. Retzel,E. et al. (1980)Biochem.19,513. 13. Enzyme Resources Guide, Polymerase, BR075A, Promega Corporation 14. Aimasri, N.M. et al.(1991) Am. J. Clin. Path. 95, 376. 15. DeSteano,J.J. et al. (1991) J. Biol. Chem. 266,7423. 16. Busier, R.G. et al. 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Tech. 5, 57. 製品案内 cDNA合成&クローニングシステム 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Universal RiboClone® 1システム C4360 79,000 cDNA Synthesis System 逆転写酵素 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) M-MLV Reverse 10000u M3682 26,000 Transcriptase, RNase H Muinus ( Point Mutant ) M-MLV Reverse 10000u M5301 20,000 Transcriptase, RNase H Muinus ( Deletion Mutant ) M-MLV Reverse 10000u M1701 9,000 Transcriptase AMV Reverse Transcriptase 300u M5101 14,000 Chapter 6 cDNA合成 ヒント RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ29 RNA合成は、真核細胞および原核細胞における遺伝子情報の 流れの中心にあります。それゆえに、単離されたRNAは多彩な 分析・診断技術の標的となっています。同様に、簡単で効率的 にRNAを合成できるシステムが利用できるようになり、配列が 決定されているRNAと生体分子の相互作用を研究するための技 術が発展してきました。臨床分野における核酸の使用にもます ます興味がもたれるようになっています。in vitroにおけるラン ダムなRNA転写産物の生産は、酵素としてあるいは治療に役立 つ機能をもつシークエンスの同定を目的としたハイスループッ トスクリーニングを作り出す突破口となりました。下記では単 離あるいは合成されたRNA転写産物を利用する優れた応用研究 および診断アプリケーション技術を紹介します。 PTT (Protein Truncation Test) ある種の遺伝病や癌は特定の遺伝子の突然変異により起こり ます。これらのなかには、点変異、フレームシフト変異、また はmRNAスプライスサイトにおける変異によるリーディングフ レーム中への終止コドンの導入が主要な病因となるものがあり ます。前述の変異の結果、生成される“短くなった”遺伝子産 物を検出するために、コードしている領域の上流(5’側)にT7プ ロモーターと開始コドンを導入するようにデザインされたプラ イマーを使い、mRNAをRT-PCRにより増幅します。増幅され たDNAは、TNT® T7 Quick反応に直接加えられ、生産物は “短 くなった”タンパク質の発現を見るためにSDSポリアクリルア ミドゲル電気泳動で分析されます(1-3)。 RDA (Representational Difference Analysis) 細胞や組織が環境刺激に対して反応するメカニズムを解明す るひとつの手法として、反応の間に細胞に含まれる遺伝子情報 がどのように異なって発現されるかを同定するテクニックが有 用です。RDAは、試験する細胞集団が持つ固有のシークエンス を特異的に増やすことのできる増幅反応を基礎とするテクノロ ジーです(4)。RNAを実験処理の前(driver)と後(tester)の細胞集 団から単離します。これらの両方のRNAから2本鎖cDNAを合成 し、testerからのcDNAの両端にシークエンスが分っているアダ プターをライゲーションします。2種類のcDNA群を融解し、 testerに対するdriverの比率が高い条件下で両方をハイブリダイ ズさせます。これにより3種類の2本鎖ハイブリッドが合成され ます。(tester:tester)、(driver:driver)、および(tester:driver)です。 testerのアダプター末端と相補的なPCRプライマーを使い、ハ イブリッドミックス中のDNAを増幅します。(tester:tester)のハ イブリッドは、tester集団を象徴する固有のシークエンスと、 指数関数的な増幅を行うためのPCRプライマーとアニーリング するアダプターシークエンスを両方の5’末端に有します。その 他2種類のハイブリッドグループには両方のRNA群に共通のシ ークエンスが含まれますが、両端のアダプターシークエンスに 欠けるため、指数関数的な増幅はしません。 Differential Display ディファレンシャル・ディスプレイは異なって発現された RNA転写産物を同定するために使われる第2の増幅反応に基づく 手法です(5)。ディファレンシャル・ディスプレイとRDAは両者と も応答遺伝子の異なる転写を検出するために増幅反応を利用し ますが、両者で用いられる戦略や技術上の細部は異なります。 ディファレンシャル・ディスプレイの中で重要なポイントは、 mRNA集団についてランダムプライマーとアンカーオリゴ(dT)プ ライマー4種類のうちの1つを組合せて使うことです。各オリゴ ペアーにより特徴付けられるmRNAの部分母集団はPCRにより 増幅され、増幅差産物は変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動 で分離されます。同じプライマーペアーを用いて刺激された細 胞と刺激を加えられていない細胞から得られたPCR産物の相対 的な強度を観察することで、刺激が加えられている間に異なっ て発現された一連のRNAを明らかにします。 Primer Extension プライマーエクステンションは、特定のRNAを定量し、5’末 端の位置を同定するために使われる技術です(6)。この手法では、 目的のRNAに相補的なRI 標識DNAプライマーをターゲットに ハイブリダイズさせ、逆転写酵素を使って伸長します。DNAプ ライマーはRNAターゲットの5’末端付近のシークエンスにアニ ーリングするようデザインされ、RNAの5’側の末端に逆転写酵 素が到達したときに伸長反応は終結します。cDNA産物の長さ は、RI標識されたプライマーの5’末端とRNAの5’末端(転写開始 点)間の距離を正確に表し、cDNAの生成量はターゲットRNAの 量に比例します。 Nuclease Protection Nuclease Protectionアッセイは、ターゲットRNAや関連する RNAを高感度に検出および定量が行える手法です(7)。RI標識さ れたDNAまたはRNAプローブは、溶液中でターゲットRNAにハ イブリダイズします。ハイブリダイゼーション後の反応液は、 残った一本鎖領域/プローブを除くためにリボヌクレアーゼ(プ ローブがRNAの場合:RNase Protection)またはS1ヌクレアーゼ (DNAの場合:S1 Assay)とともにインキュベートします。生 成物はポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析し、保護された プローブの量を数量化します。この手法は非常に高感度で、 RNAを固相担体に移す必要がなく、一度の反応で複数のRNA種 について試験することができます。 RNA結合タンパク質の同定・機能解析 タンパク質のRNAへの結合は、転写調節、転写産物の安定性、 RNAの翻訳に関与するシークエンスエレメントやタンパク質の 特定に使われてきました。このタイプの分析にはいくつかの戦 略が使われます。精製したタンパク質を単離したRNAとともに 使うことにより、調節配列を持つRNA転写産物の同定や、RNA エレメントとの相互作用に影響を与えるRNA結合タンパク質中 の突然変異の解析ができます。同様に、in vitroで合成された RNAを使うことで、特定のRNAシークエンスと結合するタンパ ク質の同定や精製、RNAとRNA結合タンパク質との相互作用に 関わるシークエンスエレメントの同定に利用することができま す。このような実験では、RNAと目的のタンパク質の特異的な 相互作用が見られる最適な条件を慎重に決めなければなりませ ん。2番目に注意する点は、RNA・タンパク質の複合体をどの ように単離し、分析するかを決めることです。RNA・タンパク 質複合体を分離する一般的な技術には、フィルターまたはメン ブレン上での保持、ポリアクリルアミドゲル電気泳動中の泳動 速度の遅れ、密度勾配遠心、カラムクロマトグラフィーや磁性 体によるキャプチャー技術を使った単離などがあります(8,9)。 30 RNA Applications Guide 第7章 RNA精製後のアプリケーション RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ30 Chapter 7 RNA精製後のアプリケーション 31 リボザイム 生物学的反応系において、酵素による触媒反応は多くの場合 タンパク質が担っていますが、RNA酵素(リボザイム)がさまざ まな反応を触媒することが示されてきています。リボザイムの 活性部位は、RNA中の二次構造または三次構造の相互作用が触 媒表面となる特別な構造を取るときに形成されると考えられて います。自然に発生するリボザイム分子の研究は、触媒作用に 重要なシークエンスや構造を研究するため、in vitroで合成され たRNAの使用や、変異RNAやランダムなRNA分子を合成するこ とで容易になります。核酸も次第に治療薬として考えられるよ うになってきました。全RNA配列のほんの一部のみが触媒活性 を示すため、可能な限りのシークエンスを効率的にサンプルリ ングするようにin vitroでランダムに合成された大きなRNAプー ルを使うことが、リードターゲットの同定に重要です。治療用 リボザイムの候補を見つければ、in vitro合成RNAを用いること により、合理的にその機能配列を純化していくことも可能です (10-13)。 mRNAの細胞への導入:トランスフェクションとインジ ェクション 遺伝子機能の研究は生物学において主要な研究課題です。現 時点における真核生物の遺伝子調節に関する知識には、外来の 核酸を細胞内へ導入する技術(トランスフェクションや、エレク トロポレーション、ウイルスベクターなど)の開発が大きく貢献 しています。RNAの細胞への導入は、DNAの導入とは異なり、 タンパク質に翻訳されるためにRNAは細胞質に到達するだけで 良く、そのため核へのエントリーに伴う複雑な問題や、転写調 節に関する問題を回避することができるため有用です。残念な ことに、RNA固有の生物学的不安定さが、RNAを細胞にトラン スフェクトする上で大きな障害となっていました。しかし、3′ 末端へのポリアデニレーションシークエンスや5’末端へのメチ ルキャップシークエンスの付加がRNAを安定化し、RNAを直接 トランスフェクションすることが代用法として有効になってい ます。RNAのトランスフェクション技術は、真核細胞の翻訳調 節因子の研究や、in vivoにおける特定のmRNAの安定性試験、 タンパク質の発現や機能の研究に使用され成功しています(14- 16)。mRNAのXenopus(アフリカツメガエル)卵母細胞への注入 も、卵母細胞における遺伝子発現と機能を研究する上で強力な 手段となっています(17-19)。 TKO(Technical Knock Out) アンチセンスRNAが組織培養細胞において遺伝子発現を阻害 することが、TKO技術の基礎にあります。この技術では、組織 培養細胞集団内で、エピソーマルベクターにクローン化された cDNAライブラリーからアンチセンスRNAが発現されます。ア ンチセンスの転写産物は、対応するmRNAに結合することによ りタンパク質の翻訳をブロックするため、ターゲットRNAのノ ックアウトクローンを効果的に作製します。実験的に決められ た選択技術を使ってクローンが同定されると、ベクターシーク エンス中に見られる複製のエピソーマル起点により抑制的な cDNAクローンが同定されます。この技術には、細胞のプロセ スを担う遺伝子の同定や癌抑制遺伝子の探索など多くの用途が あります。この洗練された技術は、HeLa細胞においてインタ ーフェロンγによるアポトーシス誘導のために重要な遺伝子の 同定に使われ成功しました(20-22)。 参考文献 1. Roest, P.A. et al. (1993) Human Mol. Genetics 2, 1719. 2. Cayouette, M. (1997) Promega Notes 60, 8. 3. TNT® T7 Quick Coupled Trascription/Translation Technical Manual #TM045 Promega Corporation. 4. Hubank, M. and Schatz, D. G. (1994) Nucl. Acids Res. 22, 5640. 5. Liang, P. and Pardee, A. (1992) Science 25, 967. 6. Primer Extension Technical Bulletin #TB113 Promega Corporation. 7. Ausubel, F.M. et al. (1996) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, John Wiley & Sons, New York, 4.6-4.7. 8. Ruby, S. W. et al. (1990) Meth. Enzymol. 181, 97. 9. Analysis of proteins binding to RNA. In: “RNA Isolation and Analysis”. Jones, P., Qiu, J. and Richwood, D., eds., Bios Scientific Publishers, Oxford, 146. 10. Wedel, A. B. (1996) Trends Biotechnol. 14, 459. 11. Hager, A. J., Pollard, J. D. and Szostak, J. W. (1996) Chem.Biol. 3, 717. 12. Stull, R. A., Szoka, F. C. Jr (1995) Pharm. Res. 12, 465. 13. Marschall, P., Thomson, J. B., Eckstein, F. (1994) Cell. Mol. Neurobiol. 14, 523. 14. 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RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ31 32 RNA Applications Guide Notes RNAガイド本文 01.1.22 3:46 PM ページ32 MMLV RNase (H-), Point Mutant ・SuperScript® II と同等のパフォーマンス ・優れたDNA合成能を維持する点変異型 ・完全長cDNAの合成が可能 逆転写酵素 点変異型 MMLV(H-) MMLV(H-) プロメガから新発売! 10,000 u 包装 M3682 ¥26,000 50,000 u 包装 M3683 ¥102,000 ※ 詳細については第6章をご覧下さい。 cDNA合成能を較べた結果、 プロメガの酵素(P)は、SuperScript® II (L)と同等のパフォーマンスを示した。 転写産物は7.5kb P L ―7.5kb ※SuperScript® II は LifeTechnologies, Inc. の登録商標です。 RNAガイド表2-3 01.1.22 3:24 PM ページ2 PK0012-01 プロメガ株式会社 本   社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル1F Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982 大阪事務所 〒533-0033 大阪市東淀川区中島1丁目17番5号 ステュディオ新大阪347号 Tel.(06)6379-7697 FAX.(06)6379-7698 ※製品の仕様、価格については平成12年12月現在のものであり予告なしに変更することがあります。 販売店 日本語ホームページ開設 :www.promega.co.jp テクニカルサービス ● Tel. 03-3669-7980/Fax. 03-3669-7982 ● E-Mail : prometec@jp.promega.com Get the message … RNAガイド表1-4 01.1.22 2:53 PM ページ1