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遺伝子関連検査を支える 核酸自動抽出装置 Maxwell® RSC, FFPE 編

RNA 抽出:FFPE 検体から自動抽出した RNA を用いた融合遺伝子の検出 これまでホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体は、固定の影響か ら分子生物学的解析には不向きな検体と言われてきました。しかし、患 者さんから採取される組織検体のほとんどは FFPE として扱われます。 FFPE は、形態情報だけではなく治療法とその効果や予後など、患者さん 個々の臨床情報を有する貴重な医療資源となるので、FFPE を用いた遺 伝子実験の成功は、標的遺伝子の臨床的意義についての検討に必須で す。さらに、レーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いて標的細 胞や組織だけを回収すれば、組織や細胞の形態と、分子の状態をより 厳密にリンクさせた解析が可能となります。研究レベルでの RNA 解析は、 マイクロアレイや定量 RT-PCR 法による発現定量解析が主体となるかと 思われますが、臨床の場においての RNA 解析は、特に腫瘍の鑑別診断 に重要な融合遺伝子の検出に用いられます。臨床現場での遺伝子解析 は、作業の標準化や精度管理の点からも、機械化、自動化の普及が望 まれます。 今回、四肢に発生する骨軟部腫瘍の中で 3 番目に多く、SYT(SS18) -SSX 融合遺伝子が責任遺伝子として同定されている滑膜肉腫症例の FFPE を対象として、Maxwell® を用いた RNA の自動抽出を行い、同融合 遺伝子の検出を行いました(図 1, 2)。 SYT(SS18)-SSX 融合遺伝子の 迅速な検出は治療法の決定や予後予測のための鑑別診断に有用である ことが示されました。 NGS の普及によって、FFPE からの DNA、RNA 解析は患者さんの個別化 治療の実践や新規治療薬の開発にますます必須となってくると考えられ ます。解析の Key となる Pre-analytic phase とされる検体処理が、解析方 法の進歩に追随していくことが求められます。 日本大学 医学部 腫瘍病理学 中西陽子 先生 図 1. FFPE から回収したサンプルの大きさ 日常的に病理で薄切される切片の厚さは 4 µmです。この切片を脱パラフィンして、図の ように大きさを変えて腫瘍細胞をメスで削り取って回収しました。チューブに入れて、前 処理を行います。腫瘍細胞含有量を増やすためには、切片の状態で脱パラフィンを行っ てから標的部位の組織や細胞を回収すると前処理の手間も減り一石二鳥です。特に RNA の解析では検査対象となる腫瘍組織や腫瘍細胞のみを回収することは重要で、標的の領 域が図の赤枠のように大きければ LMD でなくてもメスで十分に回収可能です。 図 2. FFPE から回収したサンプルの大きさおよび抽出法の違いによる RT-PCR の結果の比較 吸光度で RNA を 定 量 す る と フ ェ ノ ー ル 混 入 の 影 響 か、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法が最も RNA 回収量が多く見られました。しか し、実際に RT-PCR を行ってみると、今回試したビーズ法による自動抽出が、標的融合遺 伝子転写産物を含めて最も良く抽出できていることが示されました。ただし、断片化の 影響も考慮し、PCR 産物が 100-150 bp 程度になるようなプライマー設計も必要です。定 量 RT-PCR でも同様の結果が得られています。 DNA 抽出:FFPE 検体からの DNA 抽出キットの使い分け Maxwell® には、FFPE から DNA を抽出するキットが 2 種類用意されてい ます。右表に示すように、それぞれのキットには主に前処理において大き な違いが有ります。Maxwell® RSC DNA FFPE Kit – PKK, Custom(カタログ 番号 AX2500)では、FFPE をそのまま Proteinase K 反応液に加え、70 ℃ で一晩インキュベーションした後にこの溶解液を Maxwell® 専用カート リッジに加えるだけです(脱パラフィン処理・脱クロスリンキング処理不 要)。前処理が飛躍的に簡略化された本キットは、多くの FFPE からルー チンに DNA 抽出を行い、TaqMan 法やサンガーシークエンスのような PCR による変異解析を目的とする研究者の方々に最適です。一方、 Maxwell® RSC FFPE DNA Kit(カタログ番号 AS1450)は、脱パラフィン処理・ 脱クロスリンキング処理などの前処理を必要とします。これらの前処理 により高品質な DNA を高収量で得ることができます。このキットでは、 FFPE の処理において、キシレンのような有害な有機溶剤は不要なため、 より安全にご使用いただけます。このように抽出された高純度かつ高収 量の DNA は、NGS を始めとするあらゆるアプリケーションに適合します。 遺伝子関連検査を支える 核酸自動抽出装置 Maxwell® RSC, FFPE 編 関連製品 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Maxwell® RSC Instrument 1 式 AS4500 2,800,000 Maxwell® RSC RNA FFPE Kit 48 回分 AS1440 41,000 Maxwell® RSC DNA FFPE Kit – PKK, Custom 48 回分 AX2500 41,000 Maxwell® RSC DNA FFPE Kit 48 回分 AS1450 41,000 2 つの FFPE DNA 抽出キットの特徴比較 製品名 DNA FFPE Kit – PKK, Custom DNA FFPE Kit カタログ番号 AX2500 AS1450 DNA 収量 低い 高い 前処理の工程 極めて簡単 一般的 Proteinase K を加えて、70℃で 一晩のインキュベーション 脱パラフィン、脱クロスリンキング、 Proteinase K 処理、RNase A 処理 推奨の用途 主に PCR や qPCR NGS を含む全てのアプリケー ション 収量(ng) 5 µm × 4 枚あたり 5 µm × 1 枚あたり 肝臓 304 50-500 脾臓 414 1,500-2,250 脳 193 100-200 イントロダクション 一般的に摘出された組織検体は、病理診断のため、ホルマリン固定・パラフィン包埋の処理を経て、FFPE として加工 されます。近年では、病理診断で使用した FFPE を材料とした遺伝子検査が増加しています。FFPE は調達しやすく、 かつ比較的安定的に保存できる検体であることから、病理診断後も長期間保存されていることが多く、新たな検査の たびに組織を採取する必要がなくなるなど、研究目的としても有用なサンプルとして広く利用されるようになりました。 このように、遺伝子検査のためのサンプルとして FFPE の価値が再認識されると同時に、メーカーからも様々な FFPE 専用の核酸抽出キットが発売され、誰でも比較的簡単に核酸を精製することができるようなりました。しかし、 FFPE から核酸を抽出する手順において、脱パラフィン処理、脱クロスリンキング処理など煩雑な前処理プロトコルや、 実験者の技量によるばらつきに悩んでいる方も多く存在します。本稿ではこれらの諸問題を解決する自動核酸抽出 装置 Maxwell® RSC Instrument を用いた RNA の抽出例について日本大学の中西先生にご執筆いただき、FFPE 対応 DNA 抽出キットの特性についてもご紹介いたします。 1 section 3mm × 3mm 10mm × 10mm 2mm × 2mm 5mm × 5mm 1mm × 1mm 自動抽出 カラム抽出 AGPC 法 www.promega.co.jp/rentamax 機器貸出プログラム RentaMAXで自動精製を体験してみませんか? Maxwell® RSC 7Promega KAWARABAN